2017年12月1日金曜日

MSGは実際のところ本当に体に悪いのか?


グルタミン酸ナトリウム(monosodium glutamate : MSG)はアレルギーを引き起こす、と謂れなき非難を受けてきたが、それは正しいのだろうか


SCIENCE FRIDAY
Chau Tu
October 2, 2014

昨今ではどこのテイクアウトの中華料理店でもメニューに「MSG不使用」の文字が誇らしげに踊っているのが見えるだろう。このラベルはスーパーマーケットのスナック食品や調味料などにも見ることができる。

このラベルは消費者の不安を和らげるために貼ってある、なぜなら味付けのために使われるMSGがここ数十年の間、頭痛、アレルギー反応を始めとする様々な健康被害と結び付けられてきたからだ。幼児肥満の一因とさえされることもある。

「私はMSGによってアレルギー反応が起きると固く信じている人にたくさん会ってきました、これが原因だ、あれが原因だ、って言ってますよ」と語るのは、スクリプス研究所のアレルギーの専門家で免疫学者であるキャサリン・ウースナー博士で、彼女はMSGの影響について研究を指揮している人物である。その彼女は「私は大きな誤解があると思っています」と語る。

実際のところ、今日では科学者の殆どはMSGが人間に害を与えるというのが事実無根であるという意見に賛同している。

「奇妙なことです」とオハイオ州立大学のケン・リー教授は語る。「バカげているし、おかしなことです。MSGが何かしらの有毒性を持っていることもアレルギー源となることも真実ではないのです」

リー教授は続けて説明する「MSGはグルタミン酸ナトリウムでできています。ナトリウムは、誰もがよく知っている、食卓塩の成分です」(アメリカ食品医薬品局【FDA】によれば、食品に含まれる自然塩は日常の全塩分摂取量の10%にあたるそうである。)では、MSGの基本要素であるグルタミン酸とは、「自然に存在するアミノ酸です。タンパク質を構成する一要素です」とリー教授は言う。水溶液にするとMSGはナトリウムとグルタミン酸に分解する。

地球上の殆どの生物はグルタミン酸を持っていて、同様に多くの食品にも含まれているのだとリー教授は言う、例えばトマト、クルミ、ピーカンナッツ、パルメザンチーズ、梨の実、キノコ、醤油にも含まれる。FDAによれば、平均的な成人は1日に約13グラムのグルタミン酸をタンパク質から摂取する、MSGから摂取されるグルタミン酸は0.55グラムである。

グルタミン酸ナトリウムは100年以上昔に、日本の化学者池田菊苗によって発見された。池田は昆布からグルタミン酸ナトリウムを取り出し、旨味を増進する特性を発見したのだった。FDAによれば、昔はデンプン、てんさい糖、サトウキビの糖蜜を発酵させてMSGを作っていた。

悪評が与えられた起源は1960年代に遡る、ニューイングランドの医学雑誌にメリーランド州の医師ロバート・ホー・マン・クォックから寄せられた記事が掲載された時からである。クォックは彼自身が中華料理店で食事をする度にアレルギー反応と似たような症状を経験しているとし、そしてこれは、飲んだワインか、食品に使われた調味料か、あるいはMSGが原因か?と疑問を呈したのである。リー教授によると、「チャイニーズレストランシンドローム(CRS)」として症状をまとめたクォックの寄稿文がきっかけとなり、この医学雑誌に中華料理を食べた後に痺れる感じがした、頭痛がしたという経験を人々が投稿するようになったのだという。

クォックの寄稿文に続いて、ジョン・オルニーという神経科学者はMSGの科学的研究を発表した。彼は実験でマウスにMSGを直接注射し、そのマウスが脳病変や発育異常など様々な神経科学的な問題を起こしたことを確かめたのだった。クォックの文章とオルニーの研究によってMSGはCRSの原因ではないかと示唆されたのだった。

しかしオルニーの実験を人間に当てはめるのはいくつか問題がある。彼はMSGをマウスに皮下注射する方法を選択したが、人間はMSGを摂取する時は食べる以外のことはしない、と語るのは、ピッツバーグ医科大学で精神医学、薬理学、生物化学を専門とするジョン・ファーンストロム教授である。教授はグルタミン酸は内臓の中で大部分が代謝してしまうものだと言う。「MSGが誘発する脳障害が存在するという【研究】については極めて慎重に行間まで読まないといけません。それはいつも注射によるものです」

その上、オルニーがマウスに注射したMSGの量は、実際のところマウスよりもウマに見合ったような量で、どんな人間が摂取する量よりも多かった。「なんだって取りすぎれば体に良くないのです」とリー教授は語る「あらゆるものの過剰摂取は有害です、MSGだってそうなのです。ですが、MSGの大量摂取で死んだという人の話を聞いたことはありません。それは物凄く難しいことなのではないでしょうか」

その後のいくつかの実験が【MSGは体に悪い説】が下火になる助けになった。例えば1993年に行われたある研究では、71人の被験者についてMSG摂取時の反応がCRSに関係があるかどうかを調査し、「MSGがCRSを引き起こす、厳密かつ現実的な科学的証明は見つけられなかった」と結論づけている。

1999年にはキャサリン・ウースナー博士のチームが単盲検法、プラセボ対照法(偽物のMSGを用意し、どの被験者に効果のない偽物を用いるか実験者側だけが知っている)を用いて100人の喘息患者に対してMSGの影響をテストした(それ以前の研究でアスピリンに対し敏感な喘息患者はMSGに対しても敏感であることを示唆する論文が存在した)。被験者のうち30人がCRSを経験したことがあると自己申告していたが、MSGに晒されて呼吸器の機能低下を示したのは1名のみであった。その1名の被験者は、二重盲検法(被験者も実験者もMSGが本物か偽物かわかっていない)で再テストを行った際は何の反応も見られなかった。

2000年には、二重盲検法、プラセボ対照法を用いてMSGに対して敏感であると自称する130人の被験者を対象に調査が行われれた。この調査ではMSGはごく一部の人々に短期的に些細な反応を起こしたことが認められたが、この反応を再テストで安定して再現させることはできなかった。

FDAはMSGについて「概ね安全と確認されているもの」と位置付けている(この格付法は同局が1959年に作ったもの)。FDAのウェブサイトによれば「多くの人がMSGに敏感であると自覚しているが、そのような人たちに対しMSGか偽物のMSGかを用いた実験で、科学者達は安定した反応を起こすことができなかった」となっている。

では中華料理についてはどうなのだろう?「仮に中華料理を食べた時にで何らかの反応が起こると思っているなら、それはそうなのでしょうが、MSGが原因ではないということです」とファーンストロム教授は語る。教授はMSG研究に出資する国際グルタミン酸技術会議のアドバイザーも務めている。「中華料理には植物を原料にした様々な調味料が使われています、そうした植物にアレルギー反応を起こす人もいるということです」

ウースナー博士は加えて「人間として、私たちは物事に説明をつけようとします、そして私たちは毎日食べなければなりません」それ故に、何か体の調子が悪いと思った時に最後に食べたものに遡って原因を考えるのは普通のことだと彼女は言う。しかし重要なことは「食事をしました、何らかの症状が出ました、そういうことがあったとしても、必ずしもそれが原因と結果ではないということです」。

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