2017年12月31日日曜日

読書:戦後史の正体



孫崎享


2012年8月10日が初版だが基本的に歴史の本なので問題はなかった。「高校生でも読めるように」という前提で書いたそうだが、確かに文章がわかりやすくかつ冗長じゃなく読みやすかった。日本人必読の書だと思います。

出版当時それなりに話題になっていたことは記憶にあって、日本の戦後史はそこまでアメリカ次第だったのかという感想を持った人が多かったようだった。個人的にも今回読んでそう思ったが、必ずしも凄く驚いたというほどでもなかった。この本の出版から既に5年が経って、この本の影響がそれなりに社会に浸透して常識化している面もあるように感じた。

それは日本の政界や財界、マスコミがアメリカに媚びていることを隠さなくなったという面と、アメリカの態度がこの間にも更になりふり構わなくなってきた面もあるのかもしれない。例えばTPPのようなどう考えても日本の利益にならないものをアメリカが押し付けてくることも、日本の政治家が受け入れることも、いち市民として見てあまり違和感を感じなくなってきた。

”米国からの圧力とそれへの抵抗を軸に戦後史を見ると、大きな歴史の流れが見えてきます”

筆者はそもそも元外務省の方なので基本的に外交を中心に戦後史を見ていく。その中心は当然アメリカであり、それを振り返るだけで日本の戦後史を根本的に振り返ることができるという内容。個人的には不勉強とあまり興味がなかったために今までの印象と変わったということもなかったのだが、理論的にまとめられていて読みやすかった。

日本の歴代の首相をアメリカの支配から逃れようとして頑張った「自主派」とアメリカに従属する「対米追随派」とに分けていて筆者には「自主派」へのシンパシーがある。対米追随派の代表格が吉田茂であり、その吉田茂への筆者の評価は極めて厳しいものになっている。

自主派というと結局はアメリカの影響力を少なくしたい、つまりは米軍基地を減らしたい、負担を軽くしたいという動きになるのは当然で、そこから安全保障の話、また日本の軍備の話、憲法改正の話へと繋がる。つまりは所謂今の日本国憲法そのものが日本に米軍が駐留する必要性の根拠にされていた時代がついこの前まであったということかもしれない。

今現在、米軍を日本から撤退させるために憲法改正を唱える人はいるのだろうか。アメリカに都合良く自衛隊か日本軍かを使わせることができるように、むしろ更にアメリカに媚びるために憲法改正を求めているようにしか見えない。この本で言う「対米追随派」とされている首相たちでもそれが日本の国益に叶うと信じていたことは伺えるのだが、現在はむしろ手段だったはずの対米追随の方が本来の目的だった日本の国益よりも優先されているようにすら見える。

なかなかこの状況で未来に希望を持つのは難しいけれど、良くも悪くも例えば一回の選挙結果でガラッと変わるようなものではなく、時間をかけて考える必要があるのだと思う。歴史は繰り返すし歴史から学ぶことは多々あるけれど、未来は常に新しいし予測できないものでもあるはずで、良い方にも希望を持って考えたいと思う。

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