2018年12月1日土曜日

なぜみんな冬が嫌いなのか


科学者は寒さに耐性のある人には2種類のタイプの人がいると言う。残念ながら私はどっちでもない。


The Atlantic
OLGA KHAZAN
NOV 28, 2018

私は「冬を愛する人々」が存在するのかどうかはわからない。とりあえず知っているのは、私は絶対にそうではないということだ。

私はこの冷たい風、凍った道、不細工な防寒着の季節を北アメリカでは避けることの出来ない自然の一部というよりは、私に対する個人攻撃だと思っている。はっきりさせておくなら、私が暗い季節に起因する季節性情動障害(SAD)を抱えているというわけではなく、どちらかというと華氏80度(約摂氏27度)ないと気が狂いそう(MAD)になるという話である。私は冬にヒュッゲを感じたことは一度もない。1月中旬になると私は天気予報を見て何度も華氏38度(摂氏3度)で雨の日が来ることに不平を言い続け、したままではタッチスクリーンが使えない手袋を何度も落として無くし続けることに苛立っている。そしてそれが1ヶ月以上続くのである。

冬にこうなることは自分でもショッキングなことである。というのも私はロシア生まれで3歳までサンクト・ペテルブルグに住んでいた。これはつまり私は冬に対応できていないというだけでなく、自分の生まれ故郷の人間にもなり損なっているということだ。

私は自分が寒さに耐性がないのは育った場所である西テキサスの気候のせいではないかと以前から考えている。私のホームタウンでは外に出るには寒すぎるということが問題になることはなく、外に出るには暑すぎることの方が問題になる。着るものにしても自分の汗で蒸し焼きにならないように肌を覆うという事が大事で、出かけるなら薄手のTシャツを着て隣家のスプリンクラーの水を浴びながら走り抜けて、脱水症状を起こす前に友人の家に辿り着くのを願うという生活だった。

大学に入学してワシントンDCに来て私は初めて冬用のコートを買った。そして、その時には転校して地元に戻ることを真剣に考えていた。私が寒さを嫌うのは晴天ばかりが続くテキサスの気候以外にも理由がある。研究では寒さに強い耐性がある人には2種類の人がいることが示されている。1つは北極圏に住んだ人々を祖とするグループで、もう1つは男性である。そして人々は寒さに晒される程にそれによく順応するのだという。

何世紀にも渡って北極近くの気候で暮らしてきた人々は、ややガッチリした体型で手足が短く進化してきた。この体型は体重に対して表面積を小さくして熱を失わないようになっている。(私自身はシカみたいな体型なので、私のロシア人の祖先は進化するほど北の方に住んではいなかったようだ)。また、極北に住む人々は熱を発生させる「褐色脂肪」がを多く持っているという研究もある。

数年間に渡ってアメリカの文化人類学者たちがロシアの科学者たちと協力して、シベリアのサハ共和国に住むヤクート人の人たちの基礎代謝率(BMR)を測定してきた。サハ共和国の首都であるヤクーツクでは冬の気温は華氏-30度(約摂氏-34度)にもなる。基礎代謝率というのは生命を維持するだけのために体がどの程度エネルギーを燃やしているかの基準で、高いほど熱を発生していることになる。科学者たちはシベリアに暮らす人々は低緯度の地域に住む人々よりも基礎代謝率が高いことを発見した。これはつまり、寒い中で生活する場合は温かさを確保して生命を維持するためによりカロリーが必要だということである。シベリアの人々の基礎代謝率は気温が下がるに連れて更に上昇する。この研究を指揮したノースウェスタン大学の文化人類学教授ウィリアム・レナードによれば、この傾向は他の寒冷地に住む人々にも共通したものだという。

シベリア由来でないロシア人であることはこの件ではあまり助けにならない。レナードと彼の同僚たちがシベリア土着の人々とその地に住んでいる祖先がシベリア由来ではないロシア人たちとを比較したところ、後者のロシア人たちは平均よりも高い基礎代謝率を持っていたもののシベリア土着の人々の方が更に高かった。「長い期間繰り返し寒さに晒されることであらゆる人間は寒さに順応して許容範囲を広げることになります」とレナードは言う。「ですが、歴史の中で深い進化を遂げてきた人々は遺伝子レベルで適応しているようです」

シベリアの人々は、頚部前面にある甲状腺から発せられる化学物質である甲状腺ホルモンの吸収を高めることで高い代謝率を作り出している。しかしこうした適応が出来ない人々が同様の効果を狙って、人工的な甲状腺ホルモンを摂取するようなことはするべきではないとレナードは言う。こうした行為は甲状腺を混乱させ、普通に機能しなくなってしまう可能性がある。実際、レナードが言うにはヤクート人の高齢者には甲状腺に問題を抱えた人が多く存在する。このことは自然の寒い気候に適応することでも副作用がないわけではないということを示唆している。

高い基礎代謝率を持つことの良さそうな面として、ヤクート人たちは簡単に体重が増えないということがある。南国ボリビアの人々とヤクート人たちを比較したレナードの研究によると、ヤクート人の方が心臓血管系が健康であるという。ヤクート人の方がボリビア人よりもずんぐりした体型で、両方の人々とも食習慣が近年変化しているにも関わらずのことだ。

同様にこの基礎代謝率の話は男性が(国籍を問わず)女性よりも寒さに強いのかの説明にもなっている。女性が職場で寒がることが多いのは、オフィスビルの温度が男性の高い代謝率に合わせたものであることが理由であるという2015年に発表された「female thermal demand(女性の温度要求)」という研究がある。このことを知って私は自宅の温度調節を巡ってボーイフレンドと争いを始めている。この研究は、男性は女性よりも華氏5度(約摂氏2.8度)程度低い気温を心地よく感じる可能性を明らかにしている。

ヤクート人の温かくなれる遺伝子を持っていない人でも、寒さを好きになるか少なくとも耐えるようになることはできる。いかなる場合も「行動適応」というものが存在する。温かい服を着るとか、ウォーキングに行くというようなことだ。シドニー大学の温度調整性生理学(thermoregulatory physiology)の教授であるオリー・ジェイは世界で最も寒冷地にある首都であるカナダのオタワに居住した経験がある。「オタワでの最初の年、私は冬の寒さで惨めな思いをしました」と彼は話してくれた。「最も役立ったのは7.5ドルを出して鼻と頬と耳を覆うフリースを買ったことです。これが私の寒さに対する不快感をだいぶ和らげてくれました」

ジェイは10日程度外気に晒される機会があれば人間は心理的に気温に適応するものなのだと言う。これが、3月にその冬最後の華氏40度(摂氏約4.5度)なった時の方が11月にその冬最初の40度になった時よりも暖かく感じられる理由である。彼は他の研究者たちと寒さに晒され慣れている人は震えることが少なく寒さを感じることもないということを発見している。このことはこうした人々の体が内部から温度を効率よく保てていることを示唆している。

「寒さに順応するに連れて体はより効率的に四肢に温かい血液を送り込むようになり、体の芯の体温が上がって寒さに耐えることができるようになります」とレナードは話している。

つまり結局冬嫌いを治すための唯一の方法は、残念ながら冬をもっと体験することのようだ。

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