A Dutch man on ecstasy wasn't the first person to get a live fish caught in his throat, and he almost certainly will not be the last, writes @haleysweiss: https://t.co/7nIJbeaR3C— The Atlantic (@TheAtlantic) January 27, 2019
パーティでの奇妙な伝統から得る過酷な教訓
The Atlantic
HALEY WEISS
JAN 26, 2019
2016年の4月、オランダで4人の仲間が酒を飲み、エクスタシーと呼ばれる薬物も使っていた。彼らは魚の入った水槽に見て、テレビ番組「ジャッカス」でスタントマンのスティーヴォーが生きた金魚を飲み込んだエピソードを思い出した。そこで彼らはグラスで水槽から金魚を1匹ずつすくい上げて順番に飲み込んだ。そして更にビールを流し込んだのだった。
この件についてロッテルダムにあるエラスムス大学医療センターの医師による詳細な症例報告書が先週公開されている。これによれば、彼らは金魚を全て飲みこんでしまうと、そのうちの1人の28歳の男性が自分の番に水槽に残っていた別な魚を使うと言い出した。それは2.5インチ(6.35cm)近くあって細長いブロンズ・キャットフィッシュ(ブロンズ・コリドラス)と呼ばれるナマズで、皆は飲み込むには大きすぎると思って残っていた。この時撮影された映像を見ると「Grote vis! Grote vis!(大きい魚!大きい魚!)」という周囲の掛け声の中で、男性はビールを呷りながらナマズを飲み込もうとしている。
そしてこの男性は喉をつまらせる。彼の友人たちが恐ろしげに見守る中、彼はビールを嘔吐し、指を喉奥に差し込んだ。彼はバケツに血を吐き始め、最終的にナマズを喉から取り除くために病院の助けが必要であることを認めることになった。
スティーヴォーでも生きたナマズを飲み込む前に考え直すだろう。無害な金魚と違ってコリドラスという種類のナマズは硬いウロコで覆われている。そしてこの種のナマズは防御機構も備えていて、胸ビレと背ビレの部分には針のようなトゲが仕込まれている。この魚にストレスがかかると、このトゲをピンと立て、このペット用の熱帯魚は手裏剣のようになる。
彼を診療したエラスムス大学の耳鼻咽喉科の医師リンダ・ベノワによると、この男性が病院に到着した時、彼が医師に伝えることができたのは薬物とアルコールのせいで喉が詰まったということだけで、医師たちが喉奥にヒレを発見するまで彼は具体的に何が起こったのか言い出すことができなかった。
当然ながらこれは生きた魚を飲み込んだ最初の例というわけではないが、救急医療に関わる事態になることは稀である。最近の研究では過去数世紀の間で生きた魚を飲み込んだ症例は75件あり、そのうち自発的に飲み込んだものは4件だけだった。しかし、これらの報告書は生きた魚を飲み込もうとして失敗したとしているだけだ。この行為はここ何十年もの間アメリカでグーフボールやプランクスターと呼ばれるいたずら者たちがよくやる悪ふざけになっている。パンティー狩り、死体ごっこ、洗剤を食べるタイドポッドチャレンジ、こうしたものは一時的に流行って下火になったが、魚を飲み込むのは続いている。使われるのは大抵は金魚の種で、時には小型のコイ科の魚であるミノーのような魚も使われる。
現代の「金魚飲みの父」としてこの行為の始祖となったのは、おそらく驚きではないだろうが18歳の大学生だった。1939年にハーバード大学の新入生ロスロップ・ウィジントン・ジュニアが友人たちに10ドルを賭けてこのチャレンジをやることを持ちかけたのだった。この挑戦は当時あまりにも奇妙なものだと考えられ、それを見るために群衆が集まりその中には新聞記者まで含まれていた。その中でウィジントンは生きた金魚を噛み砕いて飲み込んだのだった。
ハーバード・クリムゾンが伝えたところによると、ウィジントンによる果敢な挑戦は即座に流行することになった。ハーバード大学の2年生はわずか10分間に23匹の金魚を飲み込み、地元からの悪評と複数のサーカスからの求人を獲得した。その後すぐに他の学校の学生たちも含めてこの記録を破るための争いになった。彼らは競技基準を策定して執行するために大学間金魚飲み協会(Intercollegiate Goldfish Gulping Association:IGGA)を設立した。ルールは2つしかなく、第一は使用する魚の長さは3インチ(7.62cm)であること、そして第二は魚を飲み込んだ後、少なくとも12時間は留めておくことだった。幅広く各地の大学に挑戦者が現れ、最後のタイトル保持者として記録されているのはクラーク大学のジョセフ・デリバートで、彼は89匹を飲み込んだのだった。
この熱狂の高揚(とIGGAの存在)は長くは続かなかったが、生きた魚を飲み込むこと自体は本当に消えたことは一度もない。動物愛護団体からの抗議によって殆どの大学で1940年代初めにこの行為は学内で非合法化された。おそらくこのことが、大学から隠れて行う儀式としてのこの行為に火に油を注いた形になった。現在でもこの行為は訴訟に持ち込まれる違反行為や、スポーツチームや男子学生クラブに対する制裁対象の行為として定期的に現れている。テレビ番組ジャッカスでのパフォーマンスに加えて、この行為は過去40年の間に少なくとも3つの映画に登場している。「ワンダとダイヤと優しい奴ら」、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」、最も最近のものが「アクアマン」である。そして、YouTubeはあらゆる年代の人が小魚を飲み込む動画で溢れている。
大学内の規則で禁止されていても、学生たちは両親の世代と同じようにビールを飲みながらウィジントンを起源とする賭けの精神を取り入れた魚飲みゲームを続けている。メイン州のコルビー大学では、起源は曖昧だがドッグヘッドと呼ばれ、年に一度聖パトリックの祝日に行われる恒例行事になっている。オーガスタの街の近くにある米ペットショップ大手のPetcoの従業員によると、コルビー大学の学生たちが毎年3月にドッグヘッド用の金魚を買いに来ることに気づき、売らないようにしているという(Petcoにこの件を話す許可を得ていないため、匿名にして欲しいと言われた)。この地域にあるペットショップでは他の種類の魚だけを置くようにしている。
2014年、動物愛護団体PETAはコルビー大学に対しドッグヘッドの伝統を終わらせるように請願した。同大学はドッグヘッドを認可も支持もしていないし「生きた金魚を飲み込むのは安全ではなく、コルビー大学の組織としての価値観に反するものです」と述べている。
魚を飲み込むのは大学のキャンパスに限ったことではない。私の友人の母親であるケイト・パシャルは80年代半ばに若者のグループのイベントで金魚を飲んだことを覚えている。彼女が住んでいたアイオワ州の福音派教会の若い牧師がこれを提案し、魚を買うのにも同行したという。「参加者は多くはありませんでした」とパシャルは話している。「ですが私はその手のことをやってみたがるタイプの人間でした。滑りやすくてヌルヌルしていたのは感じましたが、味を考えるにはアドレナリンが出すぎていたようです」
金魚飲みで警察沙汰になることもある。1月8日、21歳のマクスウェル・タッフィンはルイジアナ州立大学の寮で友人のペットの魚を飲み込んだとして動物虐待で逮捕された。1年前にはイギリスで魚を飲み込んだ動画をFacebookにアップロードした人が同様の罪に問われている。
金魚を飲み込むことの合法性が疑わしいという事実は奇妙な質問を浮上させる。ペット用の魚と食べ物としての魚の境界線はどこにあるのだろう?金魚を飲み込むことに健康上のリスクは殆ど無いし、金魚は絶滅の危機に瀕しているわけでもない。場所によっては生きた魚介類を食べることは犯罪よりも珍味として扱われる。韓国のサンナクチという料理は生きたタコをぶつ切りにして(まだ蠢いている)ゴマ油と煎りゴマを和えたものである。日本でもタイでも生きたエビを「踊り食い」として食べることがある。しかしこうしたメニューを持つ国も含めて、多くの国々でこうしたメニューについては動物虐待を懸念する声が上がっている。
一方で効果的な防御機構を備えた生き物は明らかに生きたまま飲み込むのには向いていない。ナマズを飲み込んだ男性は現在回復して元気にしているが、彼は自分の名前が公になって動物の権利を主張する活動家に知れることを恐れている。飲み込まれたナマズ自身はあまり幸運ではなかった。殺到してきたビールによってか、いずれにせよ水槽の外に長時間いた時点で死ぬことになった。
それでも、このナマズはロッテルダム自然史博物館で永遠の名声を得ることになった。この博物館では人類と動物界が不運な出会い方をして、珍しい死に方をした動物の展示が人気になっている。今回のナマズは殆ど無傷だったが、一連の試練の間に尾の部分だけが何故か無くなっている。そこだけが飲み込むことができた部分だったのかもしれない。大学間金魚飲み協会(IGGA)はきっと誇りに思ってくれるだろう。
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