2017年12月22日金曜日

EUはパレスチナを国家として認めなければならない


アメリカのドナルド・トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都だと認めたことをうけて、ハビエル・ソラナはEUはパレスチナを国家として認めるべきだという


Euronews
Javier Solana
20/12/2017

またしても、アメリカ大統領ドナルド・トランプは、エルサレムをイスラエルの首都として認めることによって一方的な外交政策を仕掛けている。そして更にまたしても、トランプは中東の現実を見誤っている。この動きで70年間続いた国際的な合意が吹き飛び、この地域の情勢は否応なく早急に悪化するため欧州連合が踏み出すことが必要である。

このトランプ政権の中東政策はアメリカとサウジアラビアの間の同盟関係が再び活気づいていることの上に成り立っている。ジョン・F・ケネディ以降、歴代アメリカ大統領の最初の外遊はメキシコ、カナダ、ヨーロッパのどれかであったが、トランプは違った。彼は一直線にリヤドに向かい、リヤドで54のイスラム教徒が多数派である国のサミットに参加し、イランを中傷する扇動的なスピーチを行った。イランは国際社会から忌避されるべきだと力説したのである。

サウジアラビアの後、トランプはイスラエルへ向かった。そこで再度反イランのレトリックを炸裂させたのである。サウジアラビアとイスラエルは外交上の関係を維持していない、しかし両国ともアメリカの同盟国であり、イランに強い敵対意識を持っている国でもある。11月にイスラエル防衛軍の長であるガディ・アイゼンコット参謀総長は、イランに対抗するためならサウジアラビアと情報を共有する用意があるとまで話している。「トランプ大統領によって、この地域に新しい国際的な連携関係が作られる機会がもたらされた」とアイゼンコットはサウジの出版物 Elaph に語っている。

サウジとイスラエルの再接近はサウジアラビアの新しい皇太子ムハンマド・ビン・サルマーン(MBS)の貢献によるものだ。この皇太子は内政と外交両方に関して現代化プログラムを進めている。今月MBSはイスラエルとパレスチナの間に極めてイスラエルに有利な和平案を提案するのではないかという噂が流れたが、アメリカとサウジの両政府はこの話を否定している。

いずれにせよトランプは外交上のクーデターを起こすためにこの状況を利用しているのが明らかだ。しかしエルサレムに関する彼の決断はサウジにジレンマを突きつけている。パレスチナの理想を守ることを優先するのか、イランを封じ込める手段としてイスラエルとの関係を正常化するのかということだ。

サウジには後者の優先を希望する人もいるようである、エルサレムとパレスチナの現状についてのやっかいな問題はとりあえず脇に置いてということだ。それはトランプも同じで、エルサレムでイスラエルの支配権が及ぶ地理的な範囲については立場を明確にしない、そしてアメリカ大使館はテルアビブから今すぐに移されるわけではないと主張したことで、彼の宣言の中に微妙な含みを持たせようと試みていた。

しかし、前のアメリカのイスラエル-パレスチナ和平協議特使であるマルティン・インダイクによれば、アメリカ人は「受ける損害を望む程度に抑えることができるものだが、エルサレムはあまりにも敏感な問題で、それは難しいかもしれない」という。この現実はトランプのアナウンスのすぐ後から中東各地の道路で抗議運動が始まり、心配されていたような大きな暴力は起きていないものの抗議の人々が溢れていることに反映されている。

更にイスラム協力機構の臨時首脳会議がイスタンブールで開催され、ここでは参加者によって、東エルサレムはパレスチナの首都であると確認しトランプの行動を強く非難することで、再度「パレスチナの理想の中心地であり、そしてムスリムの聖地としてのアルクドス・アルシャリフ(エルサレム)」が強く宣言された、

エルサレムがイスラムで3番目に神聖な場所であるアルアクサ・モスクの家であることをイスラム教徒は誰も忘れるつもりはないようである。サウジアラビアの王サルマーンは、トランプに今回のエルサレムについての決断が如何に危険なものかを警告しようとした時にこのモスクについて言及している。そして結局トランプが決断を発表した時には、王国はそれを「不当」で「無責任」として軽蔑したのである。

サウジアラビアがパレスチナの理想から距離を置くことができず、トルコやイラクのような他国にこのことを託すことが許せないというのは単純な事実である。これは数ヶ月前にカタールと断行したのと同種の戦術的な失敗であると言えるかもしれない。サウジにとっては2002年に公表されその年にアラブ連盟に承認された「サウジ・イニシアティブ」として知られるアラブ和平イニシアティブと根本的に異なる計画を支持することは不可能ではないものの、極めて難しいことである。

トランプにとっての夢のシナリオは、サウジアラビアがイスラエルと共にパレスチナに圧力をかけて和平を迫ることであるが、これは実現しそうもない。第一に、サウジアラビアはアラブのエルサレムについての発言を撤回するような立場にいない。第二に、パレスチナ人に彼らの運命とエルサレムの運命について何も言わないという戦略が成功することはあり得ない。第三に、トランプ政権には彼の義理の息子でトランプがアラブとイスラエルの間の和平プロセスにおけるアメリカの役割を託しているジャレッド・クシュナーも含まれているが、クシュナー自身の指摘によると、この政権はビジネス界の人間で構成されており政治家がいないという。エルサレムについて、そしてイスラエルとパレスチナの軋轢についての幅は広く、ビジネス上の取引のように扱うには危険をはらみ過ぎている。

トランプは国連によって承認された二国家共存構想の解決策を否定してはいないが、この策を棺桶に押し込める最後の釘を打ち込むかもしれない。この解決策を守る唯一の方法、またはイスラエルとパレスチナが交渉の席に戻る唯一の方法は、より公平な方法に向けて動くことだ。つまりEUは、既に国連加盟国の70%の国がしているように、パレスチナを国家として今すぐに認めることによって、主導権を握り必要に応じて強力なメッセージを送らなければならない。

二国家共存構想への道はアラブ和平イニシアティブに沿って進められるべきである、それは1967年以前の境界線までイスラエルが撤退した場合には、アラブ連盟はイスラエルの存在を認めるということを規定したものだが、しかしより段階的な方法を考えることができるだろう。二国家共存構想はイスラエルをユダヤ教の民主的な存在として維持することを認めるもので、パレスチナ国家の存在を保証するものであるが、アラブとイスラエルの難局を終わりにするには、今だに最も信頼できる方法が表現されたものだ。しかしもし私たちがイツハク・ラビンが1990年代に描いた「尊重による分断」を成し遂げようとするならば無駄にする時間はない、日に日に取り返しのつかなくなる時が迫っているのである。


ハビエル・ソラナは欧州連合外務・安全保障政策上級代表、NATO事務総長、スペイン外務大臣を歴任。彼は現在ESADEセンター代表、ブルッキングス研究所名誉フェロー、世界経済フォーラムのメンバーである。

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