2017年12月15日金曜日

ナイキのヒジャブはムスリムの女性にとって1つの到達点なのか挫折なのか


ナイキ・プロ・ヒジャブが今月初めメイシーズで登場した。これは権利の象徴か、抑圧の象徴か、あるいは両方か、見解は分かれている


John Florioand & Ouisie Shapiro
Dec 14 2017

12月1日、ナイキ・プロ・ヒジャブがメイシーズのスポーツコーナーにお目見えした。現在ではナイキのウェブサイトや他の販売店でも見ることができる。ナイキがヒジャブを発売すること、つまり、世界的なブランドが初めてスポーツ用のヒジャブを発売することはムスリムの女性たちによって起こされた草の根運動の一時的な到達点と見ることができる。

3年前、FIFA国際サッカー連盟は女性の権利団体からの激しい抗議と国連からの圧力を受け、頭を覆うことの禁止を取り下げた。翌年の5月、FIBA国際バスケットボール連盟もインディラ・カルジョが立ち上げて130,000人以上の署名を集めたソーシャルメディア上のキャペーンをきっかけに、後を追って従うことになった。昨年、オリンピックのアメリカ代表選手が初めてヒジャブを着用して大会に臨み、イブティハージ・ムハンマドがフェンシング、サーブルの団体戦で銅メダルを獲得した。

「このニュースを気にかけている人はアメリカチームにムスリムの女性がいることの重要性を知っているはずです」と彼女はタイム紙に述べている。「これは人々のムスリムの女性への誤解に対する挑戦です」

ナイキはムスリムの女子スポーツ選手をモデルにした流行りの白黒写真の広告で、軽くて伸縮性があって通気性が良いヘッドスカーフを高らかに発表した。同時に世界的に成功を収めている5人のムスリムの女子アスリートを紹介する映像を公開した。この映像は「What Will They Say About You?(あなたについて彼らは何を言うだろう?)」とタイトルがつけられている。

これは理に適った質問で、明確な答えは存在しない。

ソーシャルメディアではナイキのヒジャブについての反応は様々だ。論点はクオリティやスタイルではなく文化的な重要性にある。これは人の見方によって権利の象徴にも抑圧の象徴にもなる、あるいはその両方にもなる。

正しいか否か、世界中でイスラム教徒の服装は男性も女性も議論の的になっている。イランやサウジアラビアのようなイスラム教の国では女性は公共の場では頭と体を覆わなければならない。しかしフランスのような世俗主義の国では顔を覆うことは禁止されている、そうした国の政府ではヒジャブや他の頭を覆うものについて議論になっている。9月にニューヨークシティで6人のインドネシア人のデザイナーたちが自分たちのコレクションの一部としてヘッドスカーフと全身を覆うアバヤを展示した。そのうちの1人、ヴィヴィ・ズベディはアメリカ大統領に向けてメッセージを送っている。

彼女は、トランプがムスリム国家からの移民を制限しようとしていることに応えて「大統領、私たちはみんな同じです、これは人間性の問題です」と語った。

フィギュアスケートの有力選手でUAE出身のラリ・ザーラはナイキのヒジャブは統合への一歩だと見ている。ナイキ製品のテスターであり広告の主力にもなっている彼女は世界大会で戦ったUAEで最初のフィギュアスケート選手であり、大会の舞台で初めてヒジャブを着用した選手でもある。しかし、ラリにとって自由な表現への道のりは順調なものではなかった。2012年、イタリアのカナツェーイで開催された欧州大会で、彼女はヘッドスカーフが服装規定に沿っていないとされたために減点となった。彼女は後で国際スケート連盟の職員に面会しヘッドスカーフを許可するように説得したのだった。そして今ラリはナイキのヒジャブを着用して氷上に出ている。

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「【ナイキ】は世界的なスポーツブランドですし、それがムスリムの女子選手を支持してくれるのは素晴らしいことです」と彼女はメールを通じて述べている。「私は誰かの意見について言うことはありません、私が言えることは世界中には宗教に関わりなく様々な形で抑圧された女性たちがいるということです。ナイキ・プロ・ヒジャブはスポーツとアスリートのためのもので、この開発に関わることができて嬉しく思います」

ラリは8歳の時にヒジャブを身につけることを選択したことを記しておく必要がある。イランやサウジアラビアでは、そうしない女性には投獄や私刑の危険があることはナイキのヒジャブを評価する上で知っておくべきことである。

ペンシルベニア大学の客員教授シェニラ・コージャ=ムールジは、ナイキと、同様の製品を販売している他の会社は「ムスリムの女の子が生活の中であまり経験しない包括的な感覚」を売っているのだとアルジャジーラの紙面に書いている。彼女はこうした「象徴的な包括性」のようなものはイスラム教徒を社会を改革するための真剣な議論から逸し、単に市場のターゲットにしてしまう可能性を警告している。

イランのジャーナリストで人権活動家であるマシー・アリニャドはイラン生まれで現在はアメリカで生活している。彼女はイランの女性たちに敢えてヒジャブを外した写真をアップロードしてもらう #MyStealthyFreedom と #WhiteWednesday キャンペーンの創設者である。アリニャドはアメリカの少数派であるムスリムを助けてくれるものとしてはラリとナイキを賞賛しているが、こうしたものがイランのような政府による抑圧的な行動を認めてしまうものであると信じている。

「イスラム教徒への憎悪を消し去りたいと思うなら、イスラムの名に於いて成されるあらゆる抑圧を非難しなければなりません」と彼女は語る。「【イラン・イスラム共和国は】イランの女性にだけヒジャブの着用を強制するわけではありません、イランで開催される大会では全ての国の選手たちも同様に強制されるのです。ですからこれは世界的な問題です。それ故に人々が着用を強制される側の立場に立って考えなければならないと思うのです。イラン政府は、見ろ、アメリカ人も着用している、と言うでしょう。【ナイキ】はヒジャブを普通のものにしました、次は【マテル】がヒジャブ着用のバービーを発売しようとしています。こうした企業は政府がこの服装規定で女性を抑圧していることをわかっていないのでしょうか?」

服装についてはイランのイスラム刑法に綴られている。638条は「公共の場所や道路で【罪深い行いを】犯した者は何人も、その行為のための刑罰に加え禁錮2ヶ月か74回の打擲の刑に処す…。イスラムのヒジャブを着用せずに公共の場所や道路に出た女性については10日間から2ヶ月間の禁錮の刑に処す…。ヒジャブなしの女性を輸送したあらゆる乗り物は…押収され法定の駐車場に留める」

アリニャドはヒジャブの着用を選択するスポーツ選手は、選択が可能なことは特権であることを認識するべきだと信じているという。「【私はそれを着用すると言って】ヒジャブの着用を選択する事ができる人がいる一方で、イスラム国家では何百万もの仲間たちが着用を強制されていることを知っているはずです」と彼女は言う。「イランの女性はヒジャブを拒否すると言えば、顔面を殴られ、監獄に入れられ、鞭で打たれます。スポーツ選手たちは選択の自由に寄り添って、こうした事実を明らかにするべきです」

パキスタン系アメリカ人のウエイトリフティング選手でアメリカ育ちのクルスーム・アブドゥラはヘッドスカーフの着用を選択するのは「個人的な精神上の理由」からだと言う。ラリと同様に彼女は受け入れてもらうことに苦労してきた。2010年には彼女はイスラム教徒の服装が理由で大会から参加を拒否された。彼女がソーシャルメディアで立ち上げたキャンペーンは世界的な注目を集め、イスラム関係評議会の支持も受けて全米ウエイトリフティング協会は選手の服装について方針を変更したのだった。2011年にアブドゥラはパキスタンの世界ウエイトリフティング選手権に出場し、ヒジャブを着用して戦った最初の選手となった。彼女はヘッドスカーフ、長袖のシャツと長いパンツを着用して大会に参加し続けている。

「【アリニャド】の言うことに賛同しないわけではありません。しかし私はナイキがヘッドスカーフを普通のものにしたとは思いません、他にもあるものですから」とアブドゥラは話した。ナイキのヒジャブが使えるようになる前から、アスリートたちはアシヤ、フリニッギ、キャプステルのようなムスリムが経営する小さな会社からヘッドスカーフを買うことができた。

「権威のある地位にいる他の女性が着用していますし、それはすでにそこにあるものです」しかしアブドゥラはすぐに彼女はアリニャドや他のイスラム国家の女性たちがしている経験を自分は経ていないのだと指摘した。「私はここ【アメリカ】で育ちました。私はムスリムとして育ちましたが、ヘッドスカーフを強制されたことはありません」

「女性がこれを着用させられるのは公平ではありません」と彼女は付け加えた。しかしスポーツ用のヒジャブを市場に出したことでナイキがヘッドスカーフの強制を許しているのだとは信じていない。

結局のところ、ナイキは自身のすべきことはすべて満たしている。それは利益を得ることだ。この製品の文化的重要性をどう判断するかは私たち次第である。

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