2018年8月26日日曜日

何故みんな「アジアン・スクワット」ができないのか?


かかとを付けたまましゃがむことができますか?


The Atlantic
SARAH ZHANG
MAR 16, 2018

外国旅行をする人たちに対する実用的なアドバイスの1つにトイレの使用方法がある。それで、私は最近中国に行ってきた身として言っておきたいことがある。その1つは自分自身のトイレットペーパーを携帯しておくこと、もう一つはスクワットの練習をしておくことだ。

私はジムでよく見かける椅子のない所に座ろうとするような運動のことを言いたいわけではない。お尻を鍛え上げても助けにはならない。私が言いたいのは深くしゃがむこと、お尻を出来る限り下に落として、かかとでバランスをとってそのままの姿勢でいることだ。アメリカ人の多くがこの姿勢を取ろうとすると自然につま先立ちになってしまう。このかかとを付けてしゃがんだ姿勢で中国の人々は何分も、もしかすると何時間も安定していられる。食事中も、たばこを吸う時も、店番している時も、芸術を鑑賞している時でも。

そしてトイレについて言えば、中国の各家庭の家では洋式トイレが普通になっているが、公共トイレではしゃがむタイプがまだ主流になっている。これは、多くの中国人が洋式トイレと違ってお尻が便器に触れることがないため衛生的だと考えているためだ。かかとを付けてしゃがむ姿勢がここでは極めて重要なものになる。濡れた便器の上で安定を保つという意味だけでなく、解剖学的な考察を抜きにしても、適切な角度と姿勢を保つという意味で重要である。特に女性にとって重要で、つま先立ちになっているままでは、靴を濡らしてしまうかもしれない。

(専門家の助言:かかとがやや高い靴を履くと助けになるでしょう)

しゃがんで利用するタイプのトイレも、深くしゃがんだ姿勢そのものもアジアでは珍しいものではない。特にこの姿勢についてはアジアではいつでもどこでも見ることができ、欧米では見かけないものであることから「アジアン・スクワット」と呼ばれる。インターネットでは多くのアメリカ人が適切にしゃがむことができないという話が広まっている。私自身も白人のアメリカ人のボーイフレンドをからかった経験がある。

しかし、これは本当だろうか?私が嘲笑していたのは事実に基づいたものだったのだろうか?どの程度が生まれつきでどの程度が生活習慣によるのだろう?私はまず最初に深くしゃがむことについて生理学的な理解が必要であると考えた。

幸いにもインターネット上には私以外に少なくとも1人はしゃがむことについて気にしている人がいて、彼は生理学についても通じている人だった。彼の名前はブライアン・オーシンヘイラー、カリフォルニアのフィジカルセラピストで深くしゃがむことについてブログに連載を書いている。「このしゃがむ姿勢は複数部分の可動パターンの重要なモデルと言うことができます」とオーシンヘイラーは電話で話し始めた。うん?これはどういう意味なのだろう?「この深くしゃがむ姿勢は三重の屈伸運動になっています。お尻を曲げるところから始まって、膝、そして足首と下半身のすべての部分を折り曲げる必要があるのです」

しかし鍵となる重要な要素は足首の柔軟性だ。弊誌の編集者ロス・アンダーセンの言葉を借りれば「しゃがむとアキレス腱が切れそうになる」。2009年に発表された日本のある研究では深くしゃがむことができない男性は、特別に柔軟性の無い足首をしていたとされる。オーシンヘイラーが言うには、このことは同様に子どもたちは問題なくしゃがむことができる理由になっているのだそうだ。オーシンヘイラーは「私は自分の娘が生後1日の時に足首の柔軟性を計測してみました」そして「彼女は70度もの足首の柔軟性を持っていました!普通の西洋人は30度程度です」と言う。つまり、人間は生まれながらにしゃがむことができる。そうしようとしなくなったためにその能力を失う人がいるということだ。

オーシンヘイラーが言うには、実際のところ深くしゃがむことができる人が全員、足を閉じてつま先を前方に向けて「上手に」しゃがむことができるわけではないのだという。私はアメリカ育ちでしゃがむ機会が多くなかったせいか、この最上級の格付けからは脱落している。(私は中国のトイレでしゃがむ時に濡れた床に滑り落ちないようにするためには、便器の外にあった溝よりも足を広げなければならなかったことでこの事実を痛いほど気付かされた)。この姿勢を取ることができると言っても、私にとっては特別に心地よいものではない。仲間の編集者がこの記事を書く間しゃがんでいてみたらと言ってきたが、もしそうしたら物凄く短い記事になるか労働災害が起きるかどちらかになることにすぐに気づいた。

体型も影響しているようだ。短い手足、大きい頭、そして長い胴体だとバランスが取れるようだ(これが子供が楽にしゃがめる理由だろう)。「私には3人の兄弟がいるのですが、毎年全員の深くしゃがむ能力をテストしてきました」とオーシンヘイラーは言う。「そこで私が発見したのは、私たち4人の中で私が最も上手にしゃがめるのですが、技術的な差も感じられるということです。私より足が短い兄弟の1人は私ほど上手くしゃがむことができないのですが、彼にとっては非常に楽な姿勢だそうです。兄弟の中で一番足が長い1人はしゃがむことも一番苦手ですし、辛そうに見えます」

信じ難いことに深くしゃがむ先天的な能力について、実際に民族間を比較した研究というのは誰も表していない。「中国で子供たちを生まれたばかりから研究対象にして、比較群を作るために一部にはしゃがませないように生活させなければならないので、おそらく今後も難しいでしょう」とデラウェア大学の生理学者マット・ハドソンは親切にもユーモアを交じえて私の質問に答えてくれた。そして究極的には先天的な能力はあまり問題にはならないのかもしれない。練習と訓練で大きく変わるからだ。(私は私のボーイフレンドにしゃがむ姿勢が改善できることを説明したが、彼はその実現を私には理解できない理由によって拒否した)

そして、オーシンヘイラーはクロスフィットのおかげで、より多くの人々が深くしゃがむことに興味を持っているようだという。ウェイトリフティングの選手はかかとに力を込めて持ち上げる前に深くしゃがんだ姿勢を取る。そして、ハドソンの指摘によればウェイトリフティング用のシューズはその動きを助けるためにややかかとが高くなっているという。クロスフィットによって多くの人がウェイトリフティングに挑戦しているが、彼らに足首の硬さを意識させることになっている。

アメリカ人の腸の問題が便座のせいである(肛門直腸の角度について議論がある)と考えて、深くしゃがむ姿勢を大事にしようとしている人たちのグループも存在する。もちろん、しゃがむ姿勢は私たちの先祖が何千年もの間、便をしてきた姿勢である。しかし、洞窟に住んでいた人々や赤ちゃんには自然に身についているこの能力は多くの洋式トイレの利用者には失われてしまっている。これを取り戻すのは簡単なことではないだろう。

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