Despite their aggressive image, male gorillas get an evolutionary advantage from acting as caring babysitters, @edyong209 reports: https://t.co/IxF9ByoKiD— The Atlantic (@TheAtlantic) October 15, 2018
よく子供の面倒を見るオスのゴリラはより多くの子孫を残す
The Atlantic
ED YONG
Oct 15 2018
イサブクルという名前のゴリラがルワンダに住んでいた。オスのゴリラは年と共に背中の毛が白くなるためシルバーバックと呼ばれる。シルバーバックのイブサクルは昨年亡くなるまで、群れの中の子供たちに特に愛情を注いでいることで知られていた。「ムーシャという名前の子供が彼のお気に入りでした」とノースウエスタン大学の文化人類学者ステイシー・ローゼンバウムが話している。「(イサブクルは)日常的にムーシャを捕まえて毛づくろいしていました。ムーシャが明らかに他のこと、例えば他の子供たちと遊びたがっていても、気にせず可愛がっていました」
子供たちに対するイブサクルの愛情は特に際立ったものだったが、こうした行動は、かつてダイアン・フォッシーも研究対象にしたルワンダのヴォルカン国立公園のマウンテンゴリラの間では普通に見られるものだ。オスのゴリラは、シルバーバックでもより若いオスでも、子供を可愛がり、一緒に遊び、巣に迎え入れて一緒に過ごす。「私はこの行動をベビーシッティングと表現しています」とローゼンバウムは言う。
「彼らは信じられないくらい寛容なのです」と彼女は言う。胸板が厚い攻撃的な動物、という一般的なオスのゴリラのイメージとは対象的に「彼らは極めて優しく、愛情すら示すのです。無関心なオスでも子供たちが背中に登ってきても嫌がりませんし、食事中膝に座らせたりもします。成体に近い個体には許さないようなことでも、子供たちにはさせておくのです。これは一般的に考えられているオスのゴリラの典型的なイメージとは異なったものでしょう」
殆どのマウンテンゴリラの群れには成体のオスが複数属している。多いグループでは9頭にもなる。殆どの子供の父親はリーダーに当たるシルバーバックだが、それ以外のオスの子供もいる。なので、ローゼンバウムは最初にオスのベビーシッティングに気づいた時、彼らは自分の子供の面倒を見ているに違いないと考えていた。彼女は間違っていたのだった。「彼らは自身の子供を特に優先しているような様子は全くありません」
これは驚くべきことだ。生まれたばかりの子供の世話をするのは時間も労力もかかり、進化論ではオスは自身の遺伝子を持っている子供にだけそうするのだろうと論考されている。そのため、一夫一婦制の動物の間では子供が父親自身の子供であることを確認することができるため、父親が子供の世話をすることはより一般的になるはずである。同時に、ゴリラのように男親が保証されない一夫多妻制の動物に於いては比較的稀なことになるはずである。ゴリラのケースは明らかにこの通説に当て嵌まらない。なぜオスのゴリラは自身以外の子供の世話もするのだろう?
これを知るために、ローゼンバウムと彼女の同僚たちはダイアン・フォッシー・ゴリラ基金のスタッフが2000年代初めに収集した数百時間に渡る行動観察記録を精査した。このデータに基づいてチームは、多くの時間を子供に接しているオスは、子供に興味を持たないオスに比べて5.5倍の数の子供を残すことを示した。
これは大きな違いだ。「通常、生殖戦略について話す時は、成功率をほんの僅かに高めるような小さな差が議論の対象になるものです」とセントアンドリュース大学の霊長類学者カット・ホーベイターが話している。「5倍の差というのは信じられないものです」
この大きな差は、オスのゴリラの年齢や群れの中での立場を考慮に入れても変わらないものだった。シルバーバックを除いて群れの中で地位の低いオスだけを見ても同じ傾向が見られた。「この結果は私たちの予想とは全く違うものでした」とローゼンバウムは話している。
ダイアン・フォッシーは1970年代にオスのゴリラと子供のゴリラの関係について簡単に記している。その後に彼女の学生だったケリー・スチュワートもそのことについて書いている。しかし、それ以外にこの知的活動に興味を持った人は殆どいなかった。「多くの人はこの関係を見て可愛いと思っただけで、進化の結果だと考えることはなく、研究する価値があるとは考えなかったのだと思います」とローゼンバウムは言う。それよりも研究者たちはオスのゴリラが仲間のために争う方法に焦点を当ててきた。激しく争うことはオスがメスよりも体格的に大きいことの説明になる。しかし、大きさと強さが全てなのではなかった。ベビーシッティングの技術は生殖活動の成功に結びついていることをローゼンバウムが示している。
既に多くの子供を持っているオスは子供に注意を向ける傾向が強いと言うことは可能だが、ローゼンバウムはこれでは全てを説明することはできないと考えている。今回研究の対象となったオスには極めて若い個体もいて、彼らは自身の子供を持ったことがなかった。そして、彼らの子供に対する思いやりは将来的な生殖活動の成功を予測させるものになっている。
より可能性の高い説明は、メスのゴリラは子供の面倒を見るオスと優先的に交際するということだ。なんらかの偶然で、彼女たちはベビーシッティングをするという特性に惹かれるのかもしれない。あるいは、もっと興味深い可能性として、ベビーシッティングそれ自体が魅力的なのかもしれない。子供たちに気が利くオスと交配することによって、メスのゴリラは自身の子孫を生き残らせる可能性を高めようとしている。
進化生物学では長い間メスの動物の行動を軽視してきた歴史がある。家父長制の中でメスの働きを過小評価し、進化において重要な役割を担う可能性を無視してきたのかもしれない。ローゼンバウムが実施したような調査は、その結果として科学者が見逃してきたものを示している。
「これは素晴らしい研究です」とモンペリエ大学で霊長類の社会生活を研究するエリス・ハチャードは言う。「この研究は哺乳類の父親が子供の面倒を見ることの進化を理解して、そこから魅惑的な疑問を導き出す画期的なものです」。例えば、メスはベビーシッティングの技術を持つオスと具体的に交配することによって、次の群れのリーダーの選定に影響を与えることができるのか?こうした疑問は私たちにも関係がある。人類も当初ゴリラのように一夫多妻制の社会を形成しており、現在でもそうした地域もある。伝統的な進化論の考えに従えば、私たちはまさに父親が子供の世話をしないタイプの霊長類ということになる。しかし実際はその反対が正しく、文化を超えて父親は子供の世話をしている。ローゼンバウムがゴリラに見たパターンは私達自身の進化の過程を理解するのに役立つかもしれない。
「ゴリラで見たシナリオは、人間が最終的により複雑な形で父親が子供の世話をするように進化したことの最初の足がかりとして重要なものかもしれません」とローゼンバウムは言う。「ここからスタートできる道が拓けたというところです」
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