2018年12月6日木曜日

「ロボット」の語源


この言葉はカレル・チャペックが1920年に発表した戯曲「ロッサム万能ロボット会社」あるいは「P.U.R.」と呼ばれる作品の中で発案したものだ。


Science Friday
Howard Markel
04/22/2011

多くの人にとって、ロボット【robot】という言葉は金属で覆われた機械人間を思い起こさせる。点滅するライトやボタンがついていて、おかしな声で喋る。実際そうしたロボットの特徴はSF小説や映画、テレビドラマなどで確立されてきたものだ。

最近ではロボットやロボット工学【robotics】といった言葉は、人工知能の実験や自動車の製造から繊細な外科手術まで多岐にわたる役割りを持った最も近代的なエンジニアリング技術を表す言葉になっている。

ロボットという単語は英語としては比較的新しい。この言葉はチェコの劇作家、小説家、ジャーナリストだったカレル・チャペック(1880-1938)が1920年に発表して人気になった彼の戯曲「ロッサム万能ロボット会社」あるいは「P.U.R.」と呼ばれる作品の中で発案したものだ。

【robot】は、古代教会スラヴ語の言葉で「隷属」「強制労働」「退屈な仕事」を意味する 【robota】から来ている。 この単語にはドイツ語、ロシア語、ポーランド語、チェコ語に同語源の単語があり、強制労働や奉仕によって賃料が支払われた中央ヨーロッパの農奴制の産物である。

P.U.R.は、メアリー・シェリーのフランケンシュタインやユダヤ教の伝承ゴーレムのような文学上科学的に創造された生命を手がかりとして、ある会社が最新の生物学、化学、生理学を駆使して「魂だけが欠けている」労働者を量産するという話である。ロボットは人間がしたくない仕事を全てすることができ、すぐにこの会社に注文が殺到する。初期の草稿ではこの創造物を労働【labor】に基づいて【labori】と名付けていたが、あまりにも文語的過ぎることを心配していた。結局兄のヨゼフ・チャペックの助言によって【roboti】、英語で【robot】という単語を採用した。

この演劇では最後の場面でロボットたちが人間に対して反乱を起こす。地球上の殆どの人間を殺してしまってから、ロボットは自分たちがロボットを製造する方法を理解できず、最後の人間が死ねばその秘密が不明になってしまうために人間を必要としていることに気づく。最後には2体のロボットが何らかの形で愛と思いやりという人間の特質を獲得し、もう一度世界を新たにやり直すために日没に向かって歩いていくという、デウス・エクス・マキナの瞬間が来る。

この演劇はヨーロッパでもアメリカでも聴衆たちに大いに愛された。この後すぐにロボットはSF小説家のお気に入りの主題となり、その中でも最も有名になったアイザック・アシモフはロボット三原則を作りだし、後のハリウッド映画にも影響を与えることになった。

P.U.R.はチャペックに文学的な不朽の名声を与えたが、皮肉なことにチャペック本人はこの作品を気に入ってはいなかったという。チャペックは1938年にインフルエンザにより48歳で死去した。彼がインフルエンザによって命を絶たれたことは、彼の文章がナチス・ドイツに対して反抗的だとして死刑にしようとしていたヒトラーとゲシュタポを苛立たせることになったのだった。

0 件のコメント:

コメントを投稿