2017年11月14日火曜日

チェコで数少ないイスラム教徒が嫌われている


有名なウェンセラス・スクエアからプラハの牧歌的な通りを数ブロック歩くと、38歳のパレスチナ生まれのライド・シャイクさんは立ち止まってハラルの食料品店と街にいくつか見られるイスラム教徒が住む住宅を指し示した。

彼は小さなモスクの影にある右側の中東料理のレストランにむかって歩いていった。

「ここがプラハで最もイスラム教徒が集まっている場所です」IT企業でプロジェクトマネージャーを務める彼はにこやかにそう言った。

正確な数字はわからないが、チェコのイスラム教徒のコミュニティは小さい、おそらく5000人から20000人の間で、人口の0.02%以下である。プラハのほんの小さな一部であるに過ぎない。

しかしイスラムはチェコの政治において話題の中心になっている、「イスラムにNoを、テロリズムにNoを」しか主張のない政治家が議会の議決権を持つ可能性がある状態に至ったからだ。

日系チェコ人の起業家、トミオ・オカムラと彼の「自由と直接民主主義党(SPD)」は10月の国政選挙で国会の第三党となった、この政党はチェコからイスラム教徒を完全に追い出す以外の明確な政策は何もない。

彼らの運動のスローガンはSPDにとって初めての国政選挙で重要な地位をを獲得するのに十分な訴求力があった。

フランス国民戦線のマリーヌ・ル・ペンのような欧州の他の極右運動と連携しながら、オカムラは、物議を醸す億万長者であり次期首相にの有力候補であるアンドレイ・バビシュと連立について協議をしている。

バビシュの政党「ANO」が10月の選挙で第一党として勝利したが単独過半数を確保したわけではない。選挙中に選挙違反で調査をうけたポピュリストととは喜んで連立を組む意欲は見せていない国会の他の政党との連立を模索しなければならない状態だ。

イスラム嫌悪の高まりの中で、国を追われるイスラム教徒達


プラハの一部のイスラム教徒は、この状況がバビシュとオカムラとの連携につながることを恐れ、前例のない政治情勢 - ANOとSPDが常に述べているイスラム教徒難民に対する嫌悪について不安になっている。

「我々は祖先がここに作り上げたもののために戦わないといけない。もしブリュッセルにベルギー人よりもイスラム教徒が多くなったとしてもそれは彼らの問題だ。私はここをそうしたくない。ここに誰が住んでいるべきか指図される謂われはない」バビシュは7月に取材に対しこう話している。

このように移民に対して敵意を持った言葉遣いがイスラム嫌悪を大きく増長させてきた。プラハの小さなイスラム教徒コミュニティにとって、不安な兆候である。

「私達の友人の多くは既にここを離れています、(イスラム嫌悪が)その第一の理由ではなかったとしても第二の理由ではあるでしょう」とパレスチナ生まれのシャイクさんは言う。

現在、イスラム教はチェコで宗教として認められている、しかし信者たちはいくつかの基本的な権利、学校を設立する権利、法的に認められた結婚式の開催、公共施設での宗教行事の開催など、が制限されている。

「イスラム教徒の多くは医者やエンジニアやIT分野の専門家のような人たちです、それなのにいくつかの政党は私達の権利を剥奪しようとしイスラムを追い出そうとしています」と語るのは58歳のチェコ人のイスラム教徒であるウラディミール・サンカさんで、彼はプラハのイスラム教徒のコミュニティの役員を務めている。

何人も信教の自由を侵すことはできない


2つの政党間の交渉は続いており、オカムラは既に地元のメディアに対しANOはイスラム教徒の移民保護についての再考とイスラム法の施行を制限することを公約するとしたが、SPDはバビシュを支持しておらず連立の合意には至っていないと語っている。

ブルノにあるマサリク大学の政治研究家リュボミール・コペチェクによるとANOとSPDの連携については不透明な状況であるが、可能性がないわけではないという。

「もしANOとオカムラの政府が来週か来月かに実現したら、多くの変化が起きるだろう」特に信教の自由に関わる部分で、と彼は言う。

仮にこの二政党が連立を組んだとしても、このような権利の停止措置は簡単にはできないと憲法裁判所のパヴェル・リチェツキ所長は地元のメディアに語っている「何人も信教信条の自由を侵すことはできない」。

そうは言ってもこの地域で前例のないことではない。

スロバキアは昨年、イスラム教が宗教として公式の地位を獲得することを事実上禁止する法律を可決した。

事態が悪化し反イスラム感情が大きくなった場所ではその結果としてヘイトスピーチの蔓延や物理的な暴力すらもイスラム教徒にたいして行われている。移民問題が起きるずっと前から住んでいるイスラム教徒に対してもである。

地元メディアによると7月にはプラハのアクアパークでイスラム教徒の女性2人が子どもたちの面倒を見ているところを、別な女性が罵り暴力で攻撃したという。

そのうちの被害者の1人がシャイクさんの妻であった。

「残念ながら状況はどんどん厳しくなっている」と彼は語る。

2015年に二度チェコのテレビ放送でオカムラと議論したこともあるシャイクさんは、近年プラハではラマダンの最後の祝典であるイド・アル=フィトルに集まる場所を自分のコミュニティが見つけることは困難になったと語った。

大きなホールはイスラム教徒に対し貸してくれない。

「これまで23年間は何の問題もありませんでしたが、2年前から難しいことになりました」とシャイクさんは言う。

チェコは「欧州で最高レベルの人種偏見」を体現している


他の東欧諸国、ポーランドとハンガリーと同じようにチェコでも西欧でのテロ攻撃がエスカレートし難民危機が広がり続けた2015年から移民に対する対応が悪くなった。

イスラム教徒の数は極めて少なく、何の攻撃の被害者も出ていないにもかかわらず、予見される攻撃と、例えばローマ帝国の長年の迫害のような経験からくる先住民保護主義の伝統とが組み合わさって、チェコはポピュリズムと極右思想を支える国になっている。

2017年の前期に発表されたハーバード大学による欧州の数十万の人々を対象にした研究によれば、チェコ人がすべての欧州の国の人々の中で最も高いレベルの人種偏見意識を持っているという。

プラハではミロス・ゼーマン大統領をはじめとする政治家達はイスラム教徒に対して厳しい立場をとることで支持を得ようとしている。そうした中で欧州委員会が割り当てた約2700人の難民のうちわずか12人だけを受け入れ、EU難民割当てに激しく反対を表明した。

このチェコ政府の姿勢は、ゼーマン大統領のチェコ社会においてイスラム教徒に対する差別の撤廃は「実質的に不可能」だとする不穏な発言に繋がった。

このような発言は Block Against Islam のようなアンチイスラム組織の常套句で、こうした組織は伝統的なイスラム教徒の格好をし聖地メッカに見立てた簡易トイレの周りを練り歩くバカげた集会を開催していることで知られている。

また別な集会では偽ISISとなって模造の斬首したクビを掲げて旧市街を行進したりした。

「彼らは小さなグループだが挑発を繰り返しています。私達を反応させて、私達のことを危険だと言っただろう、と言うことができるようになることを狙っているのです」とサンカさんは言う。

自体が悪化していることにより、チェコは不安定な偽情報キャンペーン(クレムリンの仕業だと広く信じられている)の犠牲に陥っている、チェコを西欧の民主政治に反抗させ利己的な政治家たちの好むように仕向けたいのだ。

それに続いて近年設立された10以上の偽ニュース組織はイスラム教徒に対する偽の物語を作り上げ民衆をポピュリストの元に向かわせることを目的としている。

政府が運営する反差別運動組織の1つである HateFree は過去数年の間にチェコ国内で約100に上るイスラム教徒に対する嘘の話があることを明らかにしている。

「私達はここで多くのことをする能力がありません、立場は非常に厳しいままです」彼の小さなコミュニティについてシャイクさんは語る。

「すべてのテレビすべての新聞のすべてのコーナーに彼らの反イスラム的な立ち位置と恐怖を見ることができます、人々が恐れるのは無理もないことです」

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