2018年3月19日月曜日

ケンブリッジ・アナリティカのFacebookデータの利用は「極めて非倫理的な試み」


5千万件を超えるユーザーの個人情報が不正利用されていた。


Andrew Liptak
Mar 18, 2018

金曜日にFacebookはストラテジック・コミュニケーション・ラボラトリー社(SCL)とそのデータ分析会社であるケンブリッジ・アナリティカ社のアカウントを停止すると発表した。5千万人のユーザーから同意を得ること無く個人情報を収集し共有したことを理由としている。この件は広告をユーザー個人向けに最適化して配信するというFacebookのビジネスモデルが不当に利用され得ることを明確にした。同時にこうしたデータが2016年の大統領選挙に影響を与えるためにどのように使われたのかという不快な疑問も浮上してくる。

ケンブリッジ・アナリティカはヘッジファンドの億万長者リチャード・マーサーが所有しており、2015年には上院議員テッド・クルーズの選挙運動を支援し、2016年にはトランプの選挙運動を支援した。同社は個人プロフィールを形成している膨大な量のデータを利用して有権者の「無意識な心理的傾向」を標的にすることで、徹底的に特化した広告を作り出す事ができるとしている。ウェブメディアVoxが伝えるところによると、2016年6月にトランプ陣営はトランプの義理の息子であるジャレッド・クシュナーが率いていたデジタル部門を支援するためにケンブリッジ・アナリティカを引き入れたという。この後にケンブリッジ・アナリティカの元役員であったスティーブ・バノンが同陣営の選挙対策本部長に就任することになる。最近オブザーバーに情報を提供したケンブリッジ・アナリティカの社員であるクリストファー・ワイリーは同社の業務を「極めて非倫理的な試み」と表現した。彼は同社がFacebookの成果である何百万もの人々の個人情報を不当に利用して「彼らの内なる悪魔を標的にした広告モデルを作り上げる」と話している。

ケンブリッジ・アナリティカが2016年の選挙で5千万ものユーザーの個人情報をどのように取得して、どのように政治広告の標的となる有権者データとして利用したのかを、ニューヨーク・タイムズとオブザーバーが揃って記事として発表しようとしていた前日にFacebookの2社に対する処分が実施された。Facebookはこのデータがケンブリッジ大学の心理学教授アレクサンダー・コーガン博士から取得されたものであることを認めている。コーガンは2015年に27万回ダウンロードされた「thisisyourdigitalife」というアプリを作成している。このアプリはコーガンにユーザーのアカウントへのアクセスを可能にするもので、更にユーザーの友人の情報 にも同様にアクセス可能にするものだった。

Facebookは「コーガンは合法的に情報にアクセスしており、Facebookの開発者が管理する適切な経路を通じてのものだった」と話しているが、その後、情報はSCLとケンブリッジ・アナリティカに渡った。ケンブリッジ・アナリティカの元社員はタイムズに同社は5千万人以上のユーザーのデータを同意なしに収集し「2016年のトランプ大統領の選挙運動を進める」ための基盤として利用したのだと話している。

情報が不当に利用されていることを発見するとFacebookはアプリを削除した。2016年コーガンが情報をSCLとケンブリッジ・アナリティカに渡したことが判明すると情報を破棄するように要請し、2社は指示に従ったと述べている。しかしオブザーバーによれば「Facebookは当初要請に対して数週間返答が無かったことについて追求をしなかった。ケンブリッジ・アナリティカではワイリーが旅行に出ており同社は彼のコンピューターもストレージもチェックしていなかった」という。Facebookはケンブリッジ・アナリティカにデータを利用されたことをユーザーに対して通知をしなかったばかりか、この件について記事にすることは「不当」であるとして争う姿勢を見せた。

さらにケンブリッジ・アナリティカは問題の情報を破棄したと述べているが、ニューヨーク・タイムズはは「まだほとんど全てを所蔵している」と伝えている。昨日ケンブリッジ・アナリティカは、全てのデータを破棄しFacebookとともに問題解決に努力しているという声明を発表した。

ケンブリッジ・アナリティカはアメリカ大統領選挙における役割を巡り、政府の関係者や監察官の監視下に置かれている。同様に2015年の英国のEU離脱を目指したブレクジット運動についても関与を取り沙汰されている。2017年12月ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えたところによると、ロバート・ミュラー特別検察官は同社に対し、2016年のアメリカ大統領選挙にロシアが関与したことについての調査の一部として、トランプの選挙運動に関した現存する文書を引き渡すように求め、下院諜報活動常任特別委員会はケンブリッジ・アナリティカの最高経営責任者アレクサンダー・ニックスから事情聴取を行った。Facebookが2社のアカウントを停止した後、マサチューセッツ州の法務長官モーラ・ヒーリーはTwitterで調査を開始することを発表し、議員たちはFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグに議会の委員会で証言して欲しいと述べている。

この一連の新事実はFacebookにとっては不安定な1年の後に続くものになる。同社は昨年ロシア政府の支援を受けている企業からの政治広告が1000万人以上の人々に見られたことを認めている。Facebookは今回の件に関し、コーガンによって取得された情報は「合法的な方法で、Facebookの開発者が管理する適切な経路を通じて」アクセスされたものであるとし、同社は過去5年間に「アプリ開発者による違反行為を発見し防止するための能力を大幅に改善してきた」と述べ、開発者に対し収集したデータの正当な利用を求めている。しかし、今回の件は個人に対して特定の広告を配信するために個人情報を利用するというFacebookの鍵となる特徴が強調されることになり、アメリカの有権者の決定的な弱点が明らかにされることになった。こうした情報は選挙を操作するのに使われてしまうということだけでなく、確認されることなく比較的簡単に手に入れることができるということだ。

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