2018年11月6日火曜日

チリがイギリスの博物館から遺物の返還を求める


イギリス人によって持ち去られた歴史的に重要な遺物の返還を要求する国々にチリが新たに加わった。


Al Jazeera
Nov 5 2018

チリはロンドンの自然史博物館に対し、約1万年前にパタゴニアに生息ていた絶滅動物の遺骸の返還を要求しようとしている。チリの当局によれば、対象となっているのはミロドンと呼ばれる地上性の哺乳類の標本で、1897年に調査のためにイギリスに持ち去られたが、それ以来チリに戻されていない。

チリの国有財産相フェリペ・ワードは今月ロンドンに出向いて、現在ではチリとアルゼンチンに跨る地域を遠い昔に歩き回っていたこの動物の標本について話をするつもりだ。「私たちは博物館の管理当局と話をしたいと考えています。そしてミロドンの標本の返却に漕ぎ着けたいと思います。ミロドンの骨と皮革が収蔵されています、展示もされていないのです」とワードは日曜日に取材に対して話している。

ミロドンはナマケモノの祖先とされ、体長2.5m、体重は1トンにも及んだとされる。1896年、チリ南部のマガジャネスにあり現在ではミロドン・ケーブとして知られる洞窟の中でドイツ人入植者がこの動物の遺骸を発見したのだった。

このワードのロンドンへの出向には、チリ領であるイースター島から1868年にビクトリア女王への贈り物として持ち去られ、大英博物館に所蔵されている彫像の返還を求める代表団も加わることになっている。彼らは現在大英博物館で人気の展示物になっているモアイ像として知られる胸像に、代わりの彫像を提供することを考えている。

チリ当局はさらに、ノルウェーのコンティキ博物館に対してもイースター島の歴史的なコレクションの返還を求める予定である。


略奪された財宝


チリはロンドンにある博物館に収蔵されている重要な品物の返還を模索している唯一の国ではない。

ギリシャとイギリスは、1800年代にアテネのパルテノン神殿から引き剥がされて持ち去られ、現在大英博物館の主要展示物になっているエルギン・マーブル、またはパルテノン・マーブルと呼ばれる彫刻群について長期に渡って膠着した話し合いを続けている。

この彫刻を引き剥がして持ち去った外交官であるエルギン卿は、当時ギリシャを支配していたオスマン帝国の当局から許可を得ていたと主張していた。しかし、この主張には異論があり、ギリシャ人は当時の支配権力が出した国有財産を持ち去る許可に合法性があるとは考えていない。

今年の8月ギリシャ政府はこの彫刻の返還の試みを改めて開始し、イギリス当局の担当者を彫刻の返還交渉のために招待している。イギリス政府は現在の所、ギリシャ側からのいくつかの要求を断固として拒否している。当初の言い分はギリシャにはこの彫刻群を展示する適切な場所がないというものだ。もちろんイギリス政府と同国の博物館はこのような返還の前例を作ってしまうことで、多くの人気の展示物の返還に繋がり観光産業に影響を与えることも懸念している可能性が高い。

しかし近年ではイギリスの博物館が品物を元の国へ返還するケースもある。今年の8月には大英博物館は2003年にアメリカがイラクに侵攻した直後に遺跡から略奪された5千年前の遺物を返還している。2013年には、ガーンジーにある博物館が、ニュージーランド国立博物館が主導する返還プログラムに協力して、タトゥーが入ったマオリ族戦士の頭部のミイラをニュージーランドに返還している。

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