2018年11月23日金曜日

差別主義者を追跡するデータサイエンティスト


エミリー・ゴーセンスキーはデータサイエンティストとしての経験を活かし、アメリカの白人民族主義者に対する裁判を追い続けている。


Motherboard
Matthew Gault
Nov 15 2018

昨年の夏に白人至上主義者たちがシャーロッツビルに終結した時、エミリー・ゴーセンスキーはそれに抗議する決意を固めた。シャーロッツビルは彼女のホームタウンであり、その街の通りをファシストたちが行進することを彼女は望まなかった。しかし、抗議行動の中でゴーセンスキーは行進の参加者からペッパースプレーによる攻撃を受けた。彼女を攻撃した人物クリストファー・キャントウェルはその時ゴーセンスキー以外の数人に対してもペッパースプレーを使って攻撃していて、その後の裁判で有罪となり3ヶ月半を刑務所で過ごしている。

データサイエンティストであるゴーセンスキーはこの件に更に関わることになった。彼女は自分の技術が警察と活動家コミュニティとの両方のコミュニケーションに役立つことを認識していた。「一般的に、声を上げている活動家の人たちは警察のことを信頼していないのです」と彼女はスカイプを通して取材に応えてくれた。「私は敢えて警察と話ができる立場になろうと思いました。私たちにはそうした役割りの人が必要だったからです」

他の活動家の手も借りてゴーセンスキーは白人民族主義者たちが関係する裁判を監視する「First Vigil」を立ち上げた。First Vigil は告訴、被告人、裁判書類へのリンクを追跡し、そして重要な次の公判の場所と日時を提示している。彼女は法廷で実際に起こっていることは裁判記録に書かれることと同じくらい重要であり、これによってジャーナリストや研究者がこうした実際の裁判を追跡しやすくなるようにしたいと考えている。

「私の興味の1つは白人至上主義者の人たちの裁判を通して追跡することです。裁判で公開されることには他では得ることのできない有用な情報がたくさんあるからです」とゴーセンスキーは言う。

裁判記録は情報の宝庫になっている。アメリカの白人民族主義運動が巨大で複雑なネットワークになっているように見えていても、白人民族主義者リチャード・スペンサーを中心にした集会にいくつも参加し積極的に暴力に加担したりするのは実際は小さく親密な集団である。ゴーセンスキーによれば、裁判記録を読んで公判で証言を聞けば空白を埋めることができ、運動の全体像を捉えることに役立つという。

「こうした組織は極めて流動的なのです」とゴーセンスキーは言う。「彼らが何をしているか効果的に追跡するためには、彼らが何故それをするのか、彼らは何処に集まっているのか、誰と会っているのか、何が動機になっているのかといった彼らの活動方法の内部の動勢を理解しなければならないのです。私たちが得られた情報から組み上げようとしているのは単なるデータベースではなく、全ての関係性まで含んだものです」

ゴーセンスキーは最近のニューヨーク・タイムズ・マガジンの記事で、スペンサーがフロリダ州のゲインズビルで開催した集会について伝えているものを紹介してくれた。4人の人物がそこで起きた発砲事件に関わっているが、警察は3人しか逮捕していない。「この出来事を伝えている記事ははどれも逮捕された3人について述べています。ですが、車には4人乗っていたのです」とゴーセンスキーは言う。「では、4人目は誰だったのでしょう?」

ゴーセンスキーは最初の逮捕報告書を探し出して4人目の人物の名前を発見した。この4人目の人物は逮捕されている間に偽の住所を騙っていて、そこからヒューストンに住む有名なナチズム信奉者である5人目の人物との関係が浮かび上がった。この5人目の人物は車には乗っていなかったが発砲事件の時ゲインズビルには来ていた。ゴーセンスキーはまた1つ彼らのネットワークの繋がりを明らかにしたのだった。

「私たちはこの仕事を通じて実際に彼らのコネクションを明らかにしています」と彼女は言う。「今回の発砲事件だけのことではありません。もっと多くのことに関係してくるのです」

2018年10月には白人民族主義者による暴力行為が急増した。プラウド・ボーイズ(Proud Boys)がニューヨークで市民を襲撃した。ケンタッキーでは食料雑貨店で2人が銃で殺害されている。この時の目撃者は「白人は白人を撃たない」という声を聞いている。また、ジャーナリストやジョージ・ソロスにパイプ爆弾を郵便で送りつける事件があり、ピッツバーグのシナゴーグでは11人が撃ち殺された。

南部貧困法律センター(SPLC)のような組織や、イーロン大学のメガン・スクワイヤー教授のような人々もヘイト組織を追跡しデータベースを作っている。しかし、SPLCのものは大きな視点にフォーカスしたもので、スクワイヤー教授のものは一般に開放されてはいない。First Vigilは一般に公開されていて、SPLCのデータから更に詳細を掘り下げることができる。

ゴーセンスキーはクラウド化されたより大規模なデータベースの最初の部分になるのは裁判所の判例だと考えている。「データサイエンスのプロジェクトはクラウドアプリケーションのためのインフラを構築することと重なることが多いのです」と彼女は言う。「私が学んできたことは大規模なデータを扱うための堅牢なインフラを構築する方法です」

ゴーセンスキーの長期的な目標はFirst Vigilをファシストの集会に行った人が撮った参加者の写真をアップロードすることができる場所にすることだ。彼女は白人民族主義者をオンライン上の記録として永遠に保存することを考えている。

「差別主義者たちはこれを嫌がるでしょう」とゴーセンスキーは言う。「人々が話しを聞きに行き、記録を取って写真を私に送る。その全てが最終的にデータベースの一部として残されるわけです」

Doxing(晒し行為)や公共へのShaming(羞をかかせる)は現在政治的な右派左派両方で採用され人気になっている戦術だが、晒されるのが誰になるにせよ危険を伴うものである。インターネット上で熱狂している話題で誰かの身元を明らかにすることは、その人が恐ろしい罪で告訴されている人であったとしても、大衆がそれを見てどう反応するかは制御することができない。

だが、ゴーセンスキーはFirst Vigilは公共の裁判記録を用いているので公平な戦いができると信じている。「First Vigilは裁判所のシステムから直結した完全に公共のデータに基づいたものです」と彼女は言う。「ですから、晒し行為の道具として使うことはできません。これは単に既に公開されている記録をまとめているだけなのですから。氏名や住所、連絡先、家族構成の他、目撃者や犠牲者の情報になり得るもの、あるいはそれに類するものは提供されません。First Vigilは有罪判決が出るまで全ての人は無実であることを前提にしています。RACER(裁判所の記録にアクセスできるシステム)よりも虐待の原因になる可能性は低いものです」

First Vigilを開いた時に最初に表示されるのは追跡中の裁判の一覧で、その後に内容の案内と免責事項が続く。「この情報が人命を救うことに使われることを強く希望しています」とFirst Vigilには書かれている。「これは警察や国家による暴力や介入を是認するものではありません。単純に公式記録、新聞、公判から収集した最も正確な情報が収納されている場所です」

「ここに掲載されている人々は法廷で有罪判決が下されるまで無罪が推定されます。逮捕、告訴、起訴は不法行為の証拠ではありません。ここに掲載された被告は適性な扱いを受ける権利を有しています。同様に市民にはこれらの裁判の経過を知る権利もあるのです」

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