2018年10月30日火曜日

Twitterはリツイート機能を止めるべき


この機能が会話の健全性を狂わせユーザーの悪意を引き出している


The Atlantic
TAYLOR LORENZ
OCT 29, 2018

今週の月曜日 Twitter 上では Twitter の CEO ジャック・ドーシーがテレグラフのインタビューで Twitter からハート型の「いいね」ボタンを無くす可能性を示唆したことが話題になっていた。その後同社はこの件について「会話の健全性を追求」することの一部であり「いいね」ボタンを含む「全ての機能を再考しています」とツイートしている。

ドーシーが「いいね」ボタンに対する不満を明らかにしたのは今回が初めてのことではない。彼は数週間前に WIRED25 の会議で「大きなハート型のボタンが人々を競わせることになっている」と話している。「これは正しいことなのでしょうか?公衆の会話の健全性に寄与するものでしょうか?健全な会話を奨励するために私たちはどうすれば良いのでしょうか?」

Twitter はこの数年間悪意のある利用を鎮めて、ユーザーにとってよりよい体験を構築することに取り組んできた。7月の同社のブログの記事では「総合的な健全性、開放性、礼儀正しさを高める」ことに取り組むことを誓っている。今年の初めには、ブックマークツールを導入して、「いいね」せずにツイートを保存しておくことができるようにしたりもしている。

しかし、Twitter 社が本当に健全な会話を奨励したいのなら「いいね」ボタンを標的にするのは混乱があるように見える。私の同僚ジェイムズ・ハンブリンは「このサービスに憎悪、怒り、偽り、嫌がらせが大量に存在することを考えれば、人々がお互いに支持と感謝の意を示すために使われるハート型のボタンを削除することは賢明とは思えない」とツイートしている。

一方で「いいね」ではなく「リツイート」についてはどうか。「リツイート」は Twitter でも最も強力に賛意を示す方法である。

リツイートをしてもらうために、ユーザーはわけのわからないコメント、過激な見解、フェイクニュース、その他もっと悪いものをツイートしようとする。多くのユーザーがリツイートされて話題にされるために、故意に事実に反する虚偽の情報や見解をツイートしている。Twitter のアカウント全体がこの戦略で構築されている。もし Twitter 社が制御不能になった賛意を示すための機能に制御を取り戻したいと本当に思うのであれば、リツイートボタンをその最初の対象として考えるべきだ。

リツイートはユーザーから最悪の本能を引き出している。他人の意見を無限に増幅することによって思慮深い会話に貢献していると Twitter のユーザーを錯覚させている。議論の途中に「みんながそう言ってるんだ」と叫びだすのと同じようなものだ。また、Twitter は投稿後の編集ができないので、誤った情報や誇張された情報がリツイートによって拡散されやすい。ジャーナル・サイエンスに発表された MIT による調査によれば、Twitter のユーザーはフェイクニュースを本当のニュースの倍の頻度でリツイートする。承認欲求を満たすために、自身のツイートを無限にリツイートし続けるユーザーも存在する。

皮肉にもリツイートは Twitter をより良いものにするために導入されたものだ。当時、同社の共同設立社の1人であるビズ・ストーンは「興味深く価値の有る情報やあるいはただ面白いだけの情報でも、それらがネットワークを通して素早く広がり、知りたい、知る必要のある人に効果的に行き届く方法になることを願っています」と述べている。リツイートは興味深く魅力的なコンテンツがフィード上に現れてユーザーを楽しませ続けるための手段になるはずだった。

しかし、2年以上前から Twitter は最も興味深く魅力的なコンテンツが何であるかを正確に判断するアルゴリズムに基づいてそのツイートをユーザーに紹介するようになっている(このアルゴリズムではリツイートのようなユーザーの行動も加味されている)。また、ユーザーの興味に基づいてフォローするアカウントを推奨したり、ニュースイベントについて価値の有る情報を表示するために「モーメント」機能を実装したりしている。リツイートは危険なだけでなく、既に不要なものになっている。

Twitter のユーザーたちがリツイート無しの Twitter を希望していたとしても驚くようなことではなく、リツイートを不可視にするブラウザの機能拡張は2013年から普及している。今年の4月には、私の同僚のアレクシス・マドリガルがタイムラインからリツイートを取り除くスクリプトを用いて Twitter の利用をより良いものにする方法を記事にしている。「リツイートは全ツイートの4分の1を占めている。これらが消えた時、私のタイムラインから怒りの感情を刺激するようなものが格段に少なくなった」と彼は書いている。「確実に間違ったことを言っている人が現れることが少なくなり、大きなニュースが繰り返し現れることも、既に100回も見たようなネタツイートが現れることも少なくなる。不快な気分になることも減った。そして、私がフォローしている人が実際に考えていること、読んでいるもの、していることについてのツイートが見えるようになり、完璧だと言うことはできないが、より良いものになったのは確かなことだ」

21歳の大学生ジョーダン・ゴーネンは「人は社会からの刺激に基づいて判断を下すものだと思いますが、元の情報だけに焦点を当てれるようにすれば Twitter は全く違う経験になります」と話している。彼は18歳の1年生ダールシル・パテルとマース・ララーニの2人と共に、リツイート回数、「いいね」の数、フォロワー数をタイムライン上の全てのツイートから隠すためのブラウザの機能拡張を提供している

アーティストでイリノイ大学の教授でもあるベン・グロッサーはこれと似ているが更に強力なものを「demetricator」という名前で提供している。「誤った情報が広がる時に起こることの1つは、人々が誰かが言ったことを繰り返して世界に拡散されていくことです。その意味でリツイートは『いいね』を遥かに上回る効果があります」と彼は述べている。グロッサーはまた「いいね」ボタンを削除すればリツイートがより強力なものになることを指摘している。「『いいね』ボタンを削除すれば、他に指標となるものが有る以上はそちらを利用することをユーザーに強いるだけのことです」とグロッサーは話している。

もちろん、リツイート機能を削除したとしても、ユーザーが他の人のツイートを引用することを止めることにはならない。冒頭に「RT」とつけて文章をコピーペーストする手作業の時代に戻るだけのことだ。しかし、リツイート機能を削除することは正しい方向への一歩になることは確かである。

ドーシーがこのアイディアを採用するかもしれないという兆候はないこともない。彼はこの1年 Twitter を改善する方法を心の底から探し求めている。Twitter 社としても、より良いと信じるものにするためには象徴的な特徴を犠牲にすることを恐れない態度を示している。2015年には人気だった「お気に入り」を「いいね」に差し替え、今年の5月には返信の仕方を見直して「@」を隠すようにした。

9月にカニエ・ウェストがフォロワー数の表示を削除することについてツイートした時、ドーシーは「フォロワー数や『いいね』の数などの見る人に影響を与えるものについて深く考えているところです。私たちは変わりたいと思っています。12年前には理に適っていたものが今も理に適っているとは考えていません」とテキストメッセージで述べている。

3億2600万人のアクティブユーザー数を抱える Twitter が今すぐに変化することは現実的ではないかもしれない。「ジャック・ドーシーが変化させる可能性を示唆しているのは興味深いことですが、私はなぜ試してみないのか問いたいですね」とグロッサーは話している。「何かが変わるかもしれないという示唆だけでなく、行動を望みたいと思います」

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