2018年10月11日木曜日

テクノロジーに驚かされていた頃が恋しい


最近ではテクノロジー企業の新製品発表会を見ていても、やることはチェックボックスにチェックを入れることだけ


Engadget
Daniel Cooper
Oct 10 2018

2018年のグーグルのイベントは、それまでの多くのものと同じように新しいスマートフォンを発表するための企業劇場だった。私は多くの製品発表の場に参加して見てきたが、今回のイベントは最も魅力を感じないものだった。それは製品そのもののせいではないしプレゼンターの責任でもない。「驚き」という重要な要素が欠けているからだ。

発表前にサプライチェーンから製品がリークされたりコードネームが見つかった未発表の製品についての記事を私自身が書いてきたという皮肉には気づいている。しかし、だからといって私が個人的にかつて普通に感じていた驚きと喜びの瞬間がなくなったことを悲しんでいないわけではない。これは何か1つの原因があるのではなく、どちらかというと多くのことが積み重なった結果によるものだ。

まず、以前に比べて誰もがテクノロジーの恩恵をより多く受けるようになり、テクノロジー自体が世間の主流全体を飲み込んでしまったことがある。部品供給メーカーや生産を担当する中国の会社の動向は現在では当然のように大きく取り上げられるようになり、新しいデバイスを目立たない場所に隠しておくのが難しくなっている。タクシーの後部座席に置き忘れられた Pixel 3 XL は、未発表のスマートフォンを発見した運転手によって写真を撮られている。運転手には顧客に対して道徳上も契約上も義務があるはずだが、そのことは忘れてとにかく写真が撮られている。

人為的な判断ミスも問題の一因になっている。今回は実機が早期に小売店に届けられたこともグーグルの供給体制に於ける失敗になっていた。このおかげでエンガジェットは発表前に Pixel 3 XL を実際に手にとって詳細を見ることができた。iPhone 4 のプロトタイプがバーに置き忘れられて以来、誰もが新しいデバイスがどこかにあることを期待している。

ニュースのサイクルを自分で管理することに集中して情報漏洩はあまり問題にしていない企業もある。名前は挙げないが、一部には新デバイスの宣伝の一環として、時間をかけて周到にリークを実施する企業も存在する。こうした意図的な情報漏洩のメリットが何であれ、残念なことに製品発表の壇上は虚しいものになる。

Pixel 3 の情報漏洩の背後にグーグルの意図があったかどうかは私にはわからないが(疑ってはいるが)、そのせいで Pixel 3 の発表が空虚なものなったのは確かだった。このイベントは、これまで情報がどの程度漏洩していたのかを確認するような形で始まった。一方で、このことでグーグルはイベントで Home Hub や Pixel Slate といった他の製品を強調することができるようになった面もあった。Pixel 3 の発表を最後まで残したことで、聴衆を最後まで見させるだけでなく、登壇者が Pixel 3 の重要な機能であるカメラとグーグルアシスタントを集中して紹介することができた。しかし、漏洩していた情報がこのイベントから活力を奪ったのは確かで、販売促進活動というよりはチェックボックスを確認してチェックをいれていくだけのものになっていた。

ハードウェアのイノベーションも終焉を迎えていて、アンドロイド搭載のスマートフォンはどれも似通ったものになっている。Piexl 3 は内部のプロセッサに Snapdragon 845 を採用しているが、これは Galaxy S9、Note 9、OnePlus 6、G7 Thinq、Xperia XZ2 全てと同じだ。そして、多くのスマートフォンが同じ組み合わせでソニーのカメラセンサーを搭載していて個性が更に薄くなっている。FaceID のためのセンサーは必要ないにも関わらず、ノッチを装備しているものがいくつもあるのは言うに及ばない。

現在はスマートフォンを選ぶ上ではブランドの好みとカスタムソフトウェアによるメリットが何よりも優先されるようになっている。これは特に各メーカーが時流に乗ることに拘り過ぎているために、本当に嬉しい驚きが薄くなっていることを意味している。グーグルとフェイスブックが同じ日にアマゾンの Echo Show と似たようなものを発表していることにも象徴されている。

実務的な話をすれば、驚きがないイベントというのは提供する企業にとっても見る側にとっても楽なものである。一方で感情的には、何ヶ月も前から何が起こるのかわかっていれば未来に興奮するのは難しい。来年かあるいはその1年先にはグーグルが Moto X や Nexus 7 を公開した時と同じくらい息を呑むような瞬間を作り上げてくれることを望みたい。

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