2018年10月13日土曜日

Alexa はあなたの今の気分を知りたがっている


Amazon はデバイスが人間の感情と体調を読み取り、それを基に広告を販売する特許を取得した。私たちの気分も広告のターゲットにされる時代が近づいているのだろうか。


The Atlantic
SIDNEY FUSSELL
OCT 12, 2018

Amazon は同社の AI アシスタント Alexa がユーザーによるコマンドの声の速さや大きさを分析して感情を観察し、ユーザーの「気分」に合わせた対応をすることを可能にする新しい技術の特許を取得した。特許の詳細によれば、Alexa は「幸せ、喜び、怒り、失望、悲しみ、恐れ、嫌悪、退屈、緊張」を認識した上で、「高精度にターゲット設定された音楽の広告やプロモーション等の音楽コンテンツ」を使ってコマンドに反応することができるようになるという。

もちろん特許取得と製品化は別な話だ。しかし、特許にはその企業が新しい技術をどう捉えているかが示されている。今回の場合、この特許は常時接続の製品を利用した動的なターゲット広告の新しい可能性を示唆している。この特許には例が挙げられている。あなたが Alexa に空腹であることを伝えると、彼女はあなたが鼻声であることから風邪気味だと判断する。そこで、彼女はあなたにチキンスープのレシピが必要かを訪ねたり、「特定の広告主に連絡する」ことを提案することができる。おそらく、レストランチェーンのパネラがスープについて教えてくれることになる。

ターゲット広告というのは伝統的に人口動勢に頼り、お化粧は女性を、バーベキューは男性を、ニキビ治療は若者を、心臓の薬は年寄をターゲットにしてきた。アルゴリズムによるプロファイリングの技術が進み、広告主はターゲットを、シングルマザー、25歳以下の世帯主、40代の西海岸に済む民主党支持者というように具体化できるようになっている。

こうした分類の大半は静的なものである。しかし、もし Amazon が私たちを継続して観察して動作毎に反応する製品群を揃えるようになれば、私たちとより流動的な関係を持つデバイス、つまり、私たちの属性だけでなくその瞬間の状態に基づいた反応をするデバイスへの道が開かれることになる。これは広告主にとって恩恵のあるものだ。私は普段の生活の中でエンヤのアルバムを買おうと思うことはないが、もし、恋人と感情的なメッセージをやり取りした直後に尋ねられたら欲しいと思うかもしれない。私は普段滅多にパネラに食事をしに行くことはないが、お腹が減っていて調子の良くないときにそのアイディアを提案されたら行きたくなるかもしれない。

こうした感情を入り口にしたテクノロジーの活用を追求している企業は Amazon だけではない。Google もデバイスが負の感情を検出して自動的にアドバイスを提案するという似たような特許を取得している。IBM は検索エンジンが「現在の感情の状態」に合わせた検索結果を表示することを可能にする特許を持っている。これは、例えば「良いポッドキャスト」「フットボール」「この近所のイベント」といったものを検索すると、ウェブカメラによる顔認識、心拍数、「ユーザーの脳波」(これに関しては「特許は製品ではない」ということが特に強調されなければならない)から判断したユーザーの気分を基に異なる検索結果を表示するというものである。

一方で Spotify は既に独自の動的な感情ターゲット広告を実践している。2014年から、プレイリストを様々な気分やイベントに関連付け、その関連性に基づいて広告スペースを販売している。アデルが中心になっているプレイリストは間違いなく感情がかき乱されるものになるため、悲しい気持ちに関連した製品(アイスクリーム、ティッシュ)が勧められることになる。ヒップホップに偏ったプレイリストが地域の「ブロックパーティー」に関連付けられていれば、このプレイリストにバーベキューソースの広告を出すように Spotify が広告主に提案することになる。

こうしたプロファイリングの目的は製品を販売することである。私たちひとりひとりが何十もの市場分類で構成されている。その中で動的な感情ターゲティングは有望な投資となっている。今や、私たちは安定したもの(性別、年齢、居住地)と流動的なもの(精神や感情の状態)、両方の分類の集合体であり、私たちのデバイスはそれについて全てを聞こうと耳を欹てている。

0 件のコメント:

コメントを投稿