2018年10月20日土曜日

イメージ戦略で英国企業に大金を支払うサウジアラビア


Freud Communications、the independent、Vice、Tony Blair Institute for Global Change、これらがこの関係に含まれている。


The Guardian
Jim Waterson
Fri 19 Oct 2018

ロンドンはサウジアラビアが世界に向けて行う PR 及びメディア感化キャンペーンの中枢になっている。いくつかの英国企業は最近数年間サウジアラビアとその周辺地域のイメージを改善する努力と引き換えに数百万ポンドを受け取っていることがガーディアンの調査で明らかにされた。

人権問題やイエメン内戦への参戦でサウジアラビアの評判は常に論議の対象になってきたが、ワシントン・ポストのジャーナリスト、ジャマル・カシャギを殺害したことが明らかにされた後、更に厳しく評価されるようになっている。

ここ数年ロンドンがどのようにサウジアラビアのイメージを良くするためのロビー活動の中心になってきたかについて、調査で明らかにされたのは以下のようなことだ。


  • 大手広告代理店 Freud's はサウジアラビアと共に仕事をしてきたが、現在は同国から距離を置いている。
  • サウジ政府に近い同国の出版社と提携したインデペンデント紙の決断には新たな懸念が存在する。
  • オンラインメディアの Vice はサウジアラビアのプロモーションビデオシリーズの制作を続けてきた。
  • 西側のメディア企業と提携しているサウジアラビアの出版社は元首相のトニー・ブレアが主催する Tony Blair Institute for Global Change に対しブレアの助言と引き換えに寄付を行っている。
  • 破綻した広告代理店 Bell Pottinger の元社員が大半を占める会社がサウジアラビアにコミュニケーション戦略のアドバイスを行っている。


メディア企業の中には同国と長期に渡って関係を持っているものもあるが、広告及び宣伝に関わる企業の殆どは、2017年6月に皇太子になったムハンマド・ビン・サルマーンが権力を掌握してから同国に関わったものである。この皇太子によるサウジアラビアの海外向けイメージ改善の試みは今回カショギの失踪で傷つけられることになった。

この中の1つ、ロンドンの広告会社 Consulum はスタッフの多くがサウジアラビア政府とコミュニケーション戦略について仕事をしてきた Bell Pottinger の元社員である。同社のパートナーにはライアン・コエッツィーが含まれている。コエッツィーはキャメロン内閣の閣僚だったニック・クレッグの元アドバイザーで国民投票の時は EU 残留の主任戦略担当者だった。同社の広報は現在の業務の内容についてコメントすることはできないとしている。

マシュー・フロイトによって設立された Freud's は、2016年にビン・サルマーンによるサウジアラビア王国の Vision 2030 プロジェクトのプロモーション支援を行っていた。今週同社の広報は現在はサウジアラビア政府のための仕事はしていないと話している。

情報によると、保守系の選挙戦略家リントン・クロスビーが設立した CT Group がカタールの野党の党首ハリド・アル=ハイルによる記事を英国の出版業界にプロモートしていたという。

サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプトは、テロ支援とサウジアラビアとライバル関係にあるイランとの関係が近すぎるとして、2017年6月にカタールとの外交関係を断っている。

CT Group に対してアル=ハイルのために仕事をしているのかどうか、サウジアラビアとその周辺国と何らかの契約関係があるのかどうかを何度も尋ねたが、返答は得られなかった。

それ以外のロンドンの広告会社でサウジアラビアと仕事をしていたことが確認された中では、Pagefield Global Counsel は既に同国との仕事はしていないと述べている。チャールズ皇太子の元コミュニケーション担当者と元「新しい労働党」の補佐官だった人物が経営する Milltown Partners は現在サウジアラビアと周辺地域との契約関係はないとしているが、過去2年間の間にサウジアラビアの国家プロジェクトに関わったかどうかは確認できなかった。フランスの広告会社 Publicis の一部門でロンドンにオフィスを構える Kekst CNC は今年の初めからサウジとは仕事をしていないと述べている。

広告企業 WPP は、現在の同地域の状況について懸念があるかどうか、あるいはサウジアラビアとの間に契約関係が継続しているのかどうかといった質問に対してはコメントを拒否した。

Vice についての情報によると、同社はサウジアラビアの出版グループ SRMG と連携して同国をプロモーションするための仕事をしていた。SRMG はサウジアラビア政府と密接な繋がりを持つとされる。ビン・サルマーンは今年の初めアメリカツアーの時に Vice の創業者であるシェーン・スミスと会談している。

Vice によって制作された映像の1つはサウジアラビアのラクダフェスティバルへの観光プロモーションで、この動画は Vice の YouTube チャンネルに投稿され数百万回の再生回数を得ている。15分の動画の最後には「SRMG とのパートナーシップによって制作された」と表示される。Vice はこの動画について完全な編集権を確保していたものだと述べているが、取引については現在調査中だと述べている。

今年3月ガーディアンを含む英国の新聞の多くがビン・サルマーンの改革政策についての広告を掲載した。

SRMG の前チェアマンは現在サウジアラビア政府の文化情報相に就任しており、サウジアラビアの近代化プログラム促進の責任者になっている。SRMG はサウジアラビアのソフト・パワーを英国で強調するための手段として理解されている。更に、SRMG は元首相のトニー・ブレアが主催する研究所に寄付をしており、ブレアがサウジアラビアの近代化に協力することをサポートしている。同研究所はコメントを拒否している。

SRMG は既に英紙インデペンデントと契約を締結しており、今年の終わりまで中東でインデペンデントブランドを使って外国語のウェブサイトを立ち上げようとしている。このすべてのスタッフは SRMG によって雇われている。このサイトがインデペンデントの基準を満たしていることを確認するために参加した担当者は、SRMG から干渉を受ける可能性に懸念を表明している。

また別な英国の主要紙であるテレグラフは今年の初めにサウジアラビアからの買収提案があったという憶測についてコメントを拒否し、広報担当者は同新聞社は売り物ではないと強調している。

イギリスのシンクタンク王立国際問題研究所(チャタムハウス)の中東及び北アフリカ政策担当主任であるリナ・ハティブは、サウジアラビアは新しい皇太子が実権を握ってからのこの2年間「英国と米国にフォーカスした大規模な広告キャンペーン」に着手しているのだと言う。

彼女は同国が英国国内の聴衆をターゲットにして英語コンテンツのメディアを選んで投資しているのだという。テリーザ・メイの政府は「サウジアラビアに関係上優位を取らせているような感覚を与え」ながらこの活動を支援し、一方でイエメン内戦に関わるサウジアラビアに武器を輸出し続けている。

ハティブは、サウジアラビアは海外でのイメージを改善することに躍起になっているのだという(この努力は最近の出来事で台無しになってしまった)。アメリカで設立した Arabia Foundation のような組織と同様に、サウジアラビア寄りのシンクタンクをロンドンに設立することまで議論されていた。

「ブレクジットが迫ってきて英国が欧州の単一市場から代替案を求め始めたので、サウジアラビアは英国との取引投資の関係を増加させる良い機会だと見たのです」とハティブは言う。

サウジアラビアの取り組みは英国議会にも届いている。数十人の労働党及び保守党の議員が過去3年間に200,000ポンド以上に相当するサウジアラビアへの旅行を無料で提供されている。これは典型的な全経費負担の旅行で1人あたり8,000ポンド以上の価値がある。また、同国は有効的な大臣や議員に対して多くの贈り物を提供することでも知られている。

保守党の議員レーマン・チシュティは2年間に渡り「キング・ファイザル調査とイスラム研究センター」へアドバイスを提供し、今年1月までに46,000ポンドを受け取っていた。

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