2018年7月21日土曜日

学生たちがソーラーカーを一般道に近づける


商用のソーラーカーまではまだ遠いが、それは学生たちによって実現されるかもしれない。


Motherboard
Presented by Toyota
Kate Fane
Jul 19 2018

ソーラーカーによるレース、ワールド・ソーラー・チャレンジは1987年から2年に一回開催されています。工学系の学生達にとってこの競技会は、春休みをデイトナビーチで過ごすことやボナルーへの旅行と同じように、学生時代を謳歌できるものになっています。

このオーストラリアの辺境で開催されるマッドマックススタイルの過酷なマラソンレースで勝利するためには、各チームはソーラー技術を新たな高みに押し上げる革新的な車を作り上げなければなりません。大会の審査員たちは、速さの記録だけでなく、実用性や市場性のある車を求めるようになってきています。2017年大会ではオランダの大学によるチーム・アイントホーフェンが優勝しましたが、彼らの車には、駐車場で日当たりの良い場所を探して推奨してくれるアプリケーション、5人が乗れる豪華な内装、向かい合って設置できるチャイルドシートまで装備されていました。


チーム・アイントホーフェンが成し遂げた仕事は、1980年代からソーラー技術を着実に進化させてきた学生たちによるソーラーカー制作の壮大な伝統に基づいたものです。今月アメリカで開催されたソーラー・チャレンジを見ても、参加者たちは人々が買いたくなるような車を作るようになってきています。こうした実践的なソーラー・プロジェクトは、国際大会にまで参加しなかったとしても技術的な才能を磨く場としての役割も果たしています。Googleの共同設立者ラリー・ペイジは学生時代にソーラーカー競技会に参加していました。10歳前後の子供たちがピザの箱とアルミフォイルで作った車もあり、インドからは女性だけのチームの参加もあります。パレスチナから参加した2人は困難な状況下で車を作り上げるために利かせた機転で話題を集めました

太陽光発電による車が世界の教育現場ではここまで一般的になっているのに、私たちが町中で見かけることがないのは何故なのでしょう?

学生たちがレースコースで成功を収めているにも関わらず、多くの専門家、自動車の製造者、大手自動車企業はソーラー技術は一般向けの乗り物としては実用的なものではないと捉えているのです。おそらく、製造にコストがかかる、余剰電力を蓄えておくために重たいバッテリーが必要になる、あるいは、単純に他の再生可能エネルギーほど効率的でないというのが理由でしょう。

太陽光を必要とするという問題もあります。オーストラリアの辺境では軽快に走ることができる車も、日差しの少ない地域では静かに止まってしまうでしょう。日が出ていたとしても高層ビルに遮られることもあるし、私たちは基本的に日陰に駐車するものなので、こうしたこともソーラーカーの効率を限定的にしてしまいます。

エンジニアのトム・ロンバルドは彼の人気記事「Your Next Car Will NOT Be Solar Powerd(あなたの次の車はソーラーカーではない)」の中で、従来型のソーラーカーが完璧な環境下で100%のモーター効率を発揮したとしても6.4馬力を発生することにしかならない、という計算をしています。「比較のために言うと、私の芝刈り機は18馬力のエンジンを搭載している」とロンバルドは書いています。「正確に計測したことはないが、この最高速度は時速10マイル程度だろう」

ソーラーカーについての欠点は、自動車企業にバイオ燃料や電力などの他の持続可能な資源の利用に努力を集中させることに繋がりました。トヨタのプリウス・プライム(プリウスPHV)は太陽光を利用する数少ない一般向けの車の1つですが、日本でしか買うことができないのと、完全なソーラーカーではなく、屋根の上の太陽光パネルはバッテリーの補助的な役割を意図したものです。

より実践的なアプローチとしては、電気自動車用の定置充電所に太陽エネルギーを利用するというものがあります。300ワットのソーラーパネルを6-8枚、車庫の屋根に設置しておけば、1ヶ月で1500km以上走行するのに十分な電力を得ることができます。また、Clean Technica の2017年のレポートによれば、電気自動車のオーナーの28-40%は既に自宅にソーラーパネルを設置していると言います。今年6月、中国では太陽光発電が可能な高速道路のテストが開始されました。この道路は発電した電力で、道路を温めて雪を溶かし、道路標識を点灯させ、近所のビルにも電気を供給するというものです。中国の最終的な目標は、電気自動車がこの道路を走行しながら充電できるようにすることだと言います。

ソーラーカーの夢は全て失われたわけではありません。学生が牽引する技術的進歩はソーラーパネルの設計の革新にも繋がっています。2018年4月、ミシガン大学の学生シャオジャオ・チェイはソーラーパネルの新しい設計手法を見つけ出し、この発見によってパネルの効率は11-12%から15%まで上昇しました。チェイの発見は完全なソーラーカーに道を開くことになるものです。しかしこの道程は、ソーラーカーレースと同じように、ゆっくりと着実にゴールに向かって進んでいくものになるでしょう。

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