2018年7月18日水曜日

欧州の極右とイスラエル


イスラエルは反ユダヤ主義を無視して欧州全土の極右団体とと関係を深めている


Al Jazeera
Ramzy Baroud   & Romana Rubeo
17 Jul 2018

2017年11月、アメリカシオニスト機構(ZOA)はドナルド・トランプ大統領の元戦略顧問スティーブ・バノンに敬意を表してニューヨークで晩餐会を開催した。バノンと彼のメディア出力であるブライトバート・ニュースは昔も今も多くの人たちから反ユダヤ主義と見做されているが、この晩餐会に出席したアメリカとイスラエルのシオニスト指導者たちは問題としていないようだった。

しかし、ユダヤ人コミュニティの一部からはZOAがバノンを招待したことについて批判の声も上がっていた。そのうちの1人である元エルサレム・ポストの主任編集者だったブレット・スティーブンスはこの件についてニューヨーク・タイムズにコラムを寄稿している。

「反シオニストのユダヤ人がいるのと同じように、反ユダヤ主義のシオニストも存在する」とスティーブンスは書いている。更に彼はバノンが間接的にネオナチであるリチャード・スペンサーと関係していることを非難している。スティーブンスによれば、スペンサーは「イスラエルはスペンサー自身が理想と考える民族主義国家である、という誤った説」を信奉しているという。

スティーブンスが晩餐会について憤慨するのは正しいが、彼のイスラエルが民族主義国家ではないという認識は間違っている。ごく最近イスラエルは、多くの人種差別的な条項を含みユダヤ人のみの街を設立することを求める国民国家法案を支持している。この法案はこれだけで、イスラエルはユダヤ人国家であり、かつ民主主義国家であるのかどうか、というバカげた議論に決着をつけるのに十分なものである。

しかし、イスラエルとそのロビー団体と人種差別主義、ネオナチ、ファシスト団体との関係はスティーブ・バノンを迎えた一回の晩餐会よりもずっと深いものになっている。実施、欧州ではイスラエルは国家政策として各国の極右団体、極右政党との協力関係を模索している。


イタリアからウクライナまで極右を取り込む


「イスラエル外務省、ルーベン・リブリン大統領、その前任者のシモン・ペレス前大統領、そしてクネセトの前議長、彼らは全て欧州の極右政党のメンバーとの会合を拒否しており、イスラエルの全政党に対してこうした会合を慎むように呼びかけていた」とユダヤ系アメリカ人向けの新聞 Forward が今年3月に伝えていた。

しかしリクード党のメンバーたちはこの指示に従っていない。2000年代初頭、アリエル・シャロン政権の時代にはイタリアのポスト・ファシスト、ジャンフランコ・フィーニがイスラエルを訪れている。

その時フィーニは政治結社イタリア社会運動のリーダーであり、反ユダヤ主義のファシスト党のイデオロギーを引き継いでいたが、彼の運動のイメージを変えることを目論んだのであった。彼は政党名を「国民同盟」に改め、新しい印象を定着させるためにイタリアのユダヤ人コミュニティの代表だったアモス・ルッツァットを伴ってイスラエルに向かったのだった。

今日、国民同盟は自身の腐敗と複数のスキャンダルによって圧力を受けて解体し、既に無くなっている。しかし、国民同盟を支持した有権者たちは今年のイタリアの選挙で全力で動き、イタリアの現内相マッテオ・サルヴィーニが率いる極右政党「同盟」を支持したのだった。サルヴィーニがイスラエルに対してフィーニーがしたのと同じように接したことは驚くようなことではない。彼は2016年3月にテル・アヴィヴを訪れている。

「イスラエルは法と秩序を守り、異なる現実についての完璧なバランスを体現している。安全保障と反テロ政策を考える上で確実な手本になるものだ」とサルヴィーニはイスラエル訪問の際に話している。イスラエルとガザが交錯するカリム・アブ・サレムでは、サルヴィーニは「同盟」がイタリアで政権の一部になる準備ができていることを発表すると同時に、パレスチナの抵抗運動とハマスを非難した。

イタリアの北、ドイツの地でも極右政党ドイツのための選択肢(AfD)が選挙で目覚ましい成功を収めている。そして彼らも、人種差別的な見解を持っているにも関わらず、イスラエルと強固な関係を作ろうとしている。

「ナチスの反ユダヤ主義、排外主義を思わせる政策を掲げて非難されている同党も、イスラエルを忠実に支持している」とイスラエルのタイムズが伝えている。「彼らも、イスラエルのテロに対する厳しい姿勢とイスラム過激派に対する積極的な防護策をとろうとする立場を理想とする欧州の右翼ポピュリズム政党の1つである」

今年4月、反イスラム主義、反ユダヤ主義であるAfDがエルサレムをイスラエルの首都と認めることを後押しするキャンペーンを熱狂的に開始した。同国のアンジェラ・メルケル首相は反対する立場にある。

更に、イスラエルはハンガリーの首相、オルバーン・ヴィクトルにも接触している。オルバーンはここ数年、ハンガリー系ユダヤ人でアメリカに住む資本家ジョージ・ソロスを相手にして激しい政治キャンペーンを張ってきた人物である。オルバーンと彼の政党は反ユダヤ主義で非難されているが、イスラエルの首相、ベンジャミン・ネタニヤフはこのことに躊躇うことなく昨年7月にブダペストを訪問している。

しかし、おそらくイスラエルが西欧諸国の極右勢力を支持していることを最も顕著に表しているのは、ウクライナのネオナチ非合法軍事組織であるアゾフ大隊を軍事支援することを決断したことである。

イスラエルの人権活動家たちは、イスラエル政府がこうした団体に武器を売り渡すことを止めるようにイスラエル国防省に求めたが、何の反応もなかったために、最近、イスラエルの高等裁判所に訴えている。


何故イスラエルは極右と手を組むのか?


実際のところ、イスラエルが極右勢力を取り込む動きは現在ではイスラエルの欧州政治に対する典型的な態度になっている。もちろん、このイスラエルの戦略は彼らなりの論理が有る。ネタニヤフが2017年7月にブダペストを訪問した時、彼は「ヴィシェグラード・グループ」と呼ばれる、ハンガリー、ポーランド、チェコ、スロバキアの指導者たちと会談している。

ネタニヤフは他のEU各国に対してプレッシャーを与えるために使うことができるあらたな協力関係を望んでいた。ロイター通信が録音した音声では、ネタニヤフは不法な入植政策と軍事占領、人権侵害でイスラエルを非難する各国を「オールド・ヨーロッパ」と嘲っている。「私は、ヨーロッパは生き延びて成長したいのか、収縮して消滅したいのか決断しなければならないと思う」と彼は述べている。

欧州ではイスラエルのパレスチナに対する所業への憤りが草の根運動を徐々に勢いづけ、パレスチナに対する支持が少しずつだが着実に主要政策に入り込んできているため、ネタニヤフは欧州各国にプレッシャーをかける新しい方法を必要としている。

イスラエルがシオニズムを理由に欧州から排除されることを恐れていることは最近のイスラエル政府の反応から見て取ることができる。

7月12日、アイルランド上院が、パレスチナ人居住区を違法に占領したイスラエルの入植地で生産された製品をボイコットする法案を可決したことを受けて、イスラエルの防衛相、アヴィグドール・リーベルマンは「即座に」ダブリンの大使館の閉鎖することを求めた。

ほぼ同じ時期にテル・アヴィヴのEU大使、エマニュエル・ジョーフレはイスラエルの国民国家法案を批判し、「この法律は人種差別臭がするもので、様々な団体、特にアラブ系の団体に対して差別的な扱いをしている」と述べている。イスラエル政府はイスラエルの「内政」に対する干渉だとEUを非難している。

イスラエル政府は最近まで政界の端にいたグループに投資して政治的な妥当性を提供することで、ヨーロッパを弱体化させようとしているように見える。ヨーロッパが分断されることでコントロールしやすくなり、イスラエル支持に丸め込みやすくなることを期待している。

イスラエルが極右、ネオナチ、ファシストを抱き込むことにイスラエル政府が望むような見返りがあるのか、あるいは、真の民主主義と平等に関心のない民族主義国家のためにこうした活動をすることは最終的に裏目に出てしまうのか。結論はまだはっきりしていない。

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