2018年7月10日火曜日

ボリス・ジョンソンはなぜ辞任の前に解任されなかったのか?


外務大臣退任の原因が彼自身の外交上の失態でなかったことは驚くべきこと


The Atlantic
YASMEEN SERHAN
July 9 2018

暫くの間ボリス・ジョンソンを退任させることはできそうもないように見えていた。長い間、首相のテリーザ・メイの権威に挑戦し、外交上の失態の繰り返しがあったにも関わらず、この英国の外務大臣は解任を免除されているかのようだった。

それはつまり自分で退任を決意するまでということだったようだ。月曜日、ジョンソンは英国のEU離脱(Brexit)問題についての意見の相違を述べて大臣の地位を降りた。前日にはEU離脱担当相のデイビッド・デイビスが辞任していた。この2人はこの1年弱の間でメイ内閣からの6人目と7人目の離脱者となる。英国が欧州連合から離脱するまで残り9ヶ月を切り、両者の交渉は重要な時を迎えている。

最高レベルのEU離脱担当者2人が続けて退任したことは、メイ内閣の閣僚たちがメイ首相のEU離脱計画に深く不満を持っていることを表している。メイはイギリスがEUを離脱した後も密接に連携した関係を模索している。批評家の評価ではメイの構想ではEU離脱がほとんど無意味なものになるとしている。デイビスは辞表の中で、メイの提案は「好意的に見ても交渉に於いて我々を弱い立場に置くもので、そこから逃れられなくなる可能性がある」と警告している。ジョンソンは辞表で「EUからの離脱は機会と希望のあるものであるべきだ。この夢は不要な自己疑念によって窒息して死にかかっている … 我々はセミ・ブレクジットに向かっているように見える」と書いている。ジョンソンはこのメイの計画を擁護することを「クソを磨くようなものだ」と例えたと報じられている。

こうしたコメントはジョンソンのような政治家の真髄とも言えるものだろう。彼は英国で最も外交向きでない外務大臣だった。ジョンソンは未熟(彼はビルマを訪問中に、その地が英国の植民地だった時代の詩を朗読するのは最良のアイディアではないことを思い出す必要があった)であり、攻撃的(彼はリビアの北の都市シルテについて「死体を消し去る」ことができれば「次のドバイになることができる」と冗談を言った)であり、危険(イラン政府は、投獄された英国とイランの二重国籍の活動家の刑期が延長されたというジョンソンの誤ったコメントに反応した)な人物である。ジョンソンは首相を声高に非難し、首相のEU離脱計画を「クレイジー」だと話した。彼はドナルド・トランプだったらもっと良い仕事をすることができるはずだとまで発言している。先月、ジョンソンはプライベートな会食の席で「トランプの狂気には方法論があるとますます確信するようになった」と話している。「トランプがEU離脱を担当しているところを想像して欲しい。彼は必死になるだろう … あらゆるものを破綻させ、あらゆる意味で混沌に突き落とす。誰もが彼は狂ったと思う。だが実際はどこかしらに行き着いているんだ」

しかし、メイに対する目に余る不誠実さと失態の連続にもかかわらず、ジョンソンは留まり続け解任が不可能であるかのように見えていた。理由の1つはEU離脱である。ジョンソンは2016年のEU離脱キャンペーン中に浮かび上がった人物である。もう一つの理由として、これまでのメイ内閣の人事の入れ替わりの多さがあり、首相はこれ以上閣僚を失う余裕がなかったことが挙げられるだろう。更に、ジョンソンは高圧的で予測不能な存在かもしれないが、首相は政府の外に置くよりは中に置いたほうがコントロールしやすいと考えていたのかもしれない。結局ジョンソンは彼自身がリーダーとなることの野望を隠すことはしておらず、メイ内閣から離れた今後は首相の失脚を模索するかもしれない。

保守党のリーダーシップについては全く問題にならないというわけではない。保守党の15%(48議席)の要求があれば首相の不信任案を提起でき、もし不信任案が通ることになれば、メイは辞任し新たな首相選挙が行われることになる。しかしそうなりそうには見えない。これまでの辞任の連続で首相の周囲は彼女の擁護で一致しており、彼女に反対する勢力も首相の交代ではなく政策の変化を求めているように見える。月曜日、デイビスはロンドンのラジオ局LBCのインタビューに応え、EU離脱に関しての意見の不一致は別として、メイの地位は安泰だろうと話した。「私は立場上政策の擁護者でなければならなかったが、私はその政策を信じ切ることができなかった」とデイビスは話している。そして、「仮に保守党の覇権争いになれば私は驚くが、仮にそうなればメイが勝つと思う」と付け加えた。

多くの意味でジョンソンの離脱は今の政府を総括したものになっている。彼の外務大臣としての2年近くの任期は、予測不能の道化者として定義付けられるだろう。ジョンソンはEU離脱交渉の重要な段階で辞任を選択したということだけでなく、彼の離脱はイギリスにとって狂気の週が約束されたタイミングと重なっている。ソールズベリーでノビチョクが再び現れ1人の女性が死亡し、水曜日にはブリュッセルでNATOのサミットが開催され、その翌日が待ち望んだトランプの英国訪問となる。この一週間を英国は外相無しで迎えようとしている。

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