2018年2月23日金曜日

アヘド・タミミの父親はパレスチナの活動家として裁判の準備に誇りを語る



イスラエルで兵士を平手打ちして裁判にかけられる17歳の少女。父親は彼女の行動を誇りだと語る


The Conversation
Emma Heywood
February 23, 2018

それが暴力的なものでも平和的なものでも、ヨルダン川西岸でイスラエルに対する抵抗運動が支持されることは占領されたパレスチナ領土では普遍的なことになっている。資金はなく国際的な支援も受けられない中でパレスチナの活動家たちは、検問、許可証、壁、刑務所、といったイスラエルによって様々な形で課された支配、そして自由、敬意、尊厳の欠如と戦うために彼ら自身の命を危険に晒し、平安を犠牲にしている。

17歳のパレスチナ人の少女アヘド・タミミは2017年12月にイスラエルの兵士を平手打ちして逮捕された。母親が撮影したこの出来事の動画は世界中に広まった。母親はこの動画をアップロードした件で逮捕されている。この一件はタミミの14歳の従兄弟ムハンマドがその兵士に顔面を銃撃され重症を負わせられてからちょうど1時間後の出来事だった。

このタミミの事件については、双方が主張に支持を得るために不当に利用していると非難しあっている。彼女の裁判については、一部からは粗暴な環境下で未成年者を逮捕したことに関して非難が出ている。アヘドの外見も注目を集める要因となっている。タミミ一家は彼女のブロンドで青い目の容姿を宣伝目的に利用している、と主張したイスラエルのメディアもあった。一部には「あんな外見」である彼女がパレスチナ人であるのかどうか疑問を持つ人もいた。

そうした中で司法手続きは緩慢に進められている。最近彼女の軍事裁判は3月11日に延期された。この決定は国際ジャーナリスト、人権研究者、調査官らが法定から退場した後に下されたものだった。

この混乱の中で私はタミミの父親、バッセムに面会した。彼は、イスラエルはこの件が国際的な注目をあつめることを恐れていて、非公開でのまま裁判を進めたいのだと主張する。

紛争の表情


ヨルダン川西岸に滞在した間、私は繰り返しこの裁判が話題になっているところに出くわした。パレスチナ人はみんなタミミ一家を深く尊敬し敬意を表しているが、多くの人達はアヘドの裁判が注目を集めていることによって、他に山ほどある進行中の裁判から目を逸らしてしまうことを心配していた。

タミミの件は氷山の一角に過ぎない。囚人人権組織アデミーアによればイスラエルの監獄には450人を超える子供たちが収監されており、この数字は過去3年の間に倍増したという。アヘドの年齢は例外的なものではなく、彼女に対する扱いも珍しいものではない。西側のメディアは、この占領地に於いて、壁や検問、特定の逮捕者などの断片に焦点をあてることで、占領を全体として見る視点を失ってしまわないように注意しなければならない。しかしバッセムはもしアヘドが話題になることで占領についての問題を表面化することになるのであれば、そうなれば良いと言う。

しかしアヘド・タミミ自身の安全はどうなるのだろう、彼女の福祉、彼女の教育については?入植地ハラミシュの拡大によってますます脅威が増している場所にある小さな村、ナビ・サレに住む一族にとって子供たち(アヘドだけでなく)を抵抗運動に支持を集めるための立場に置くことは正しいことなのだろうか?ヨルダン川西岸地区の事実上の首都であるラマッラーで多くのパレスチナ人が追い求める経済的な豊かさは、より安全な選択肢にはならないのだろうか?

バッセムは彼の娘が普通の子供時代を過ごすことができず、子供世代が追うべきでない責任を追わせてしまっていることに苦悩しているという。しかし彼にとってこの占領を放置し紛争を常態化してしまうことは選択肢にはならない。彼は、彼と彼の家族が占領されたパレスチナを代表する重責を背負っていることを強く意識している。彼はジャーナリストたちに頻繁に面会を求めている。特に国際的に紛争の原因を周知させることが実質的に今の彼の仕事であり彼はそれを軽く見てはいない。彼はファタハのメンバーであることを誇り高く語り、その負の面については聞く耳を持たない。

彼が我々に見せる禁欲主義的な態度は西側には、冷酷、無関心、扇動のように伝えられてしまう可能性があるものだ。しかし、イスラエルとパレスチナでは彼が被害者を演じていると受け取られる余裕はない。感情を露わにすることは国際的には受けたとしても、ここでは主張を弱めることにしかならない。

彼がアヘドを誇りにしていることに疑問の余地はない。彼はスマートフォンの写真をスワイプして彼女が10歳の時に可愛らしいパレスチナ伝統衣装のサマードレスを着て、カメラに向かって笑っている写真を見せてくれた。それを見た時に彼は一瞬戸惑ったような様子を見せ感情が彼の顔を通り過ぎた、しかしすぐにビジネスに戻るのだった。

子供時代を損なっている?


占領によって引き起こされる全ての問題についての意識を高めることを目的としたこのタミミ一家のキャンペーンは、ソーシャルメディアや毎週金曜日のデモ、その他の抗議運動にも広がりを見せている。バッセムはパレスチナで最年少ジャーナリストの肩書を得た11歳の姪ジャンナ・タミミについて誇らしげに語る。ジャンナ・ジハードの名前で知られている彼女はFacebookで25万人以上のフォロワーを獲得し、他のタミミ一族と同じようにTwitterやInstagram、YouTubeでも占領地の様子を伝えている。

道徳上の重要な点はアヘドが彼女の見た目のせいで有名になっているのかどうか、ということよりも、彼女の裁判を、現在逮捕されているか将来逮捕される未成年者たちにとって利益になるように利用できるかどうか、ということだ。タミミの一家は審理が延期されたこの裁判の最終的な結果について楽観していない。しかし仮に10年の判決を受けたとしても、アヘドは同様の状況にある人々のために戦うべく法律を学ぶつもりでいるという。

自らを「フリーダムファイターズ」と呼ぶこうした活動家たちはイスラエルの占領下で生活する他の人々が簡単には漏らすことのできない不満を表立たせる地位にいる。彼らはしばしば集団的に苦しんでいる人々と看做される一方で、国外や外部との関係には検閲に直面し、彼らの存在に対する国際的な支援が損なわれるのを目の当たりにしている。「私たちを被害者とは呼ばないで下さい、私たちは被害者ではありません。それが世界に伝えたい重要なことで、これこそが私が娘から学んだ重要な教訓です」

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