2018年2月3日土曜日

AppleはiPhoneよりもロイヤリティを売る


なぜAppleはより多くのiPhoneを売る必要がないのか


Mashable
RAYMOND WONG
2/2/2018

よりたくさん売ることができないなら、その製品は失敗だ、というのはよくある誤解である。

その良い例がこれだ。iPhoneの売上が年々下がっている、それで人々はAppleがついにまた失敗作を作り出したという使い古された物語を語り始める。しかし今度こそは本当だ!電話に1000ドルなんて高すぎるのだ、だからiPhone Xは失敗作だ!と言うのである。

しかしこの物語は真実からはかけ離れたものだ。Appleが利益の記録を更新し続け、すべての市場競争を席巻するために、低価格のiPhoneをたくさん売る必要はないのだ。

iPhoneの売上が微減したことに執着することは全体を見損なっている。Appleは付加的なハードウェアやサービス、つまりApple Watch、AirPods、iCloud、HomePod、Appleミュージックなどを売りたがっている。これらはiPhone上でしか動作しないので人々はそのエコシステムに囲い込まれてしまうのだ。Appleの長期的な戦略は、iPhoneを永久により多く売り続けることではなく、ユーザーを成長する彼らのエコシステムの中に囲い込むことにある。

この前の四半期にAppleがもっと多くのiPhoneを売る方法は数多あったはずだ。1つ挙げるなら、機種を減らすことだった。iPhoneを買う時に良いことの1つだったのは適切なモデルを選ぶのが簡単だったことだ。基本的に1年に一回新しいiPhoneが登場していたので、それを買うか買わないかだけの選択だった。

しかし去年の秋にAppleは今までと違うことをした。3種類の新iPhone(8、8 Plus、X)を発表して以前よりも選択を複雑にした。

iPhone 8とiPhone 8 Plusは素晴らしい製品で、iPhone Xと同様にA11バイオニックチップ、12メガピクセルカメラを搭載している。しかし、Appleは悪びれずに過去を捨てる大きな機会を逃し、iPhone Xとその未来的な機能(全面ディスプレイ、Face ID、アニ文字など)を売り込んで「スーパーサイクル」を開始させようとしたのだった。

AppleがiPhone 8と8 Plusを発売したのには当然の理由があった。低価格帯の購買者向けであり、iPhone X用のOLEDが不足するのを避けるため、そしてiPhone Xが発売される11月までユーザーを待たせてその間に売れ行きが大きく落ちるのを防ぐためだった。しかしGBHインサイツの考察によれば、AppleがiPhone Xだけを提供していたとすれば、およそ3億5000万人の「アップグレードの機会を伺っている」既存のiPhoneユーザーに対して、明確に唯一のiPhoneであることで買い換える必要性をより強く感じさせることができただろう。

また別にAppleがより多くのiPhoneを売るための明確な方法はiPhone Xの値段を下げることだ。私は電話に1000ドルをかけることが言われるほどおかしなことではないと擁護する立場ではあるが、予算に限りのある多くの消費者からすれば、月々に分割して支払ったとしても、限度を超えた値段であった。

私は未来を見通す水晶玉を持っているわけではないので、Appleが今年iPhone Xの値段を下げるか廉価版を発売するかして去年より多くのiPhoneを売ることになるのか、あるいはそんなことはしないのかはわからないが、1つ言えるのはAppleにとって毎四半期により多くのiPhoneを売ることは重要な問題ではないということだ。

スマートフォン市場は徹底的に飽和していてあらゆる値段の範囲に素晴らしい選択肢が存在する。150ドル〜200ドルでも素晴らしいスマートフォンを買うことができる(モトローラのGシリーズはこの価格帯としては素晴らしい)し、あるいは500ドルを出して OnePlus 5Tを選ぶこともできる。

こうした飽和状態は自然と減衰をもたらす。IDCの調査によれば、世界のスマートフォンの出荷数は2017の第4四半期には6.3%減少しているという。電話が必要な人には全てに行き渡ってしまったということだろう。また、電話の製造品質も常に良くなり続けているため、人々は1つの電話を(バッテリーを交換して)より長く持ち続けるようになっている。

しかし、これらの電話にはAppleが提供するような拡張されたエコシステムに近いものは存在しない。これはAppleは補完的な機器やサービスによる利益でiPhoneの売上を埋め合わせることができるという意味で重要な優位点である、

「私たちにとっては数字ではなく、お客様の満足こそが大事なのです」とAppleのCEOティム・クックは2018年第1四半期の収支報告会で語っている。「お客様の満足度はiPhone Xの売上の図表には表されていません」。

これは典型的なハロー効果というものだ。これについて考えてみると、iPhone Xを持って幸せになっている顧客はより「盲信する」ようになって、多少の欠点があっても同様の満足感を期待してiPhone Xと一緒に動作する他のApple製品を買うようになる可能性が高い。

話はここに行き着く。「Appleに対する信頼」これこそがAppleが本当に売っているものなのだ。

満足度によってiPhoneユーザーたちはAirPodsをiPhoneのために買うようになり、Apple Watchを手首に装着することになる。さらにiCloudやAppleミュージックのサブスクリプションサービスも売れるようになる。

私は非常に多くのこの満足した顧客のうちの1人であることを自覚している。最初に見た時は必要ないと感じたApple製品に結局は毎年毎年お金をつぎ込んでいることに我ながら驚かされている。

私はAirPodsを持っていて気に入っている、本当に使うのが楽しい。私の手首ではApple Watchが通知をしてくれる。50数ドルだったかをApple謹製の革製iPhone Xケースのために支払った。そして数週間前についに私はiPhone XのバックアップのためにiCloudに支払いをすることにした。

こうした周辺機器として買うものについて私には他に多くの選択肢があるのだが、結局Appleが作っているものをそれぞれ買ってしまうのはiPhoneの存在に依るところが大きい。iPhoneは私が最もよく使う機械であり最も使うのが好きなものだからだ。そして私はAppleの品質管理を信頼している(時々乱れることがあったとしても)。

iPhone Xだけだと私は1150ドル支払っているのだが、そこから紐付いて前述のアクセサリーやサービスで私はおよそ1750ドルをAppleに支払っている。追加で600ドルの利益を私から作り出していることになる、これは700ドルから買えるiPhone 8の値段に近い額だ。

Appleは誰にでもiPhoneと一緒にすぐにApple WatchやAirPodsを買わせようとするわけではないが、間違いなくアイディアは既に植え付けられていて花と咲くのをただ待っているのである。そしてチャンスは確実にある。

iPhone 8(かもっと前のiPhone)だとロック画面の通知を見つめても何も起こらない、FaceIDを一層愛さずにいられない。

iPhoneをより多く売ることよりもAppleは広い分野を視野に入れていて、顧客それぞれから他の製品を通してより多く搾り取ろうとしている、そしてその戦略は機能しているように見える。収支報告会ではクックがApple Watchシリーズ3は1年前のシリーズ2の倍の売上を記録したと述べた。Appleは正確な数字を明らかにしていないが、それでも驚くべきことだ。

仮に人々がiPhoneを購入したことにあまり満足していないのであれば、Apple Watchが成功するとは想像し難い。結局のところApple Watchを使うにはiPhoneが必要なのである。iPhoneが嫌いな人がどうしてApple Watchを気に入るようなことがあるだろうか?

AirPods、Apple TV、Beatsのヘッドフォン、その他、Apple Watchも含まれるAppleの「その他」のカテゴリーについて全て同様のことが言える。このカテゴリーは前年比で36%成長し、55億ドルを稼ぎ出している。

また同様に、iCloudとApp Storeの売上を含むサービスについては前年比18%増であった。

Appleはこれからも数多くのiPhoneを売り続けるだろう。おそらくこれまで程のiPhoneは売れないかもしれないが、アップグレードする人たちは買うだろうし、アンドロイドから乗り換える人もいるかもしれない。まだiPhoneの売上を成長させる余地は数多く残されている。

しかし単独の製品に未来はない、未来は全Apple製品ファミリーにある。堅実で信頼性の高いエコシステムを作り上げることでAppleの領域内にユーザーを深く留めておくことができれば、言わば贈り物が届けられ続けるような形になる。

サムスンがGalaxyフォン、Gear VR、Gear 360、Gearスマートウォッチ、Gear IconXで似たような戦略を採用しようとしている。そしてGoogleもPixelフォンとPixel Budsで同様の試みをしている。しかし、両社のスマートフォンは今のところもっと他のものも購入したいと思わせるほどの満足度を示せていないのだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿