2018年2月4日日曜日

iPhone Xは過小評価された傑作である


Appleが根本的に再設計をすることで示した真の勇気は、いまのところユーザーに気に入られている。


The Verge
Vlad Savov
Feb 1, 2018

10年間、大体において似たように豪華で良いものを世界に売り続けることで歴史的な成功を収めた後、AppleはついにiPhoneの再発明を決断した。完全に新しいデザイン、誰も見たことがなかったFace IDシステム、そして1000ドルを超える値段。AppleはiPhone 8の2機種を発売しただけでも新たな1000億ドルの利益を見込めただろうが、それ以上のものを選んだのだった。iPhone XはAppleにとって大きな賭けであった。iPhoneは今でもAppleにとって最も重要な製品であり、それだけでなく一般消費者向けの電化製品の歴史の中で最も影響力のある製品だ。そして私が最も魅力的だと思うのは私たちがiPhoneの成功を如何に気軽に受け入れることができたかということである。Appleファンも批判者もiPhone Xについてそれ以前のものと同じくらい良いもので、同様の程度に受け入れられると考えていたようだ。

そして今日になってAppleはiPhone Xを発売してから最初の四半期収支報告会を開催したが、既にAppleのとてつもなく高い売上見込と比較して残念な結果になっていることについて不満が現れていた。しかし、より高価なスマートフォンの売上は少なくなるのが常で、iPhone Xにおいても避けられないことであった。発売の効果はAppleにとってより重要なところに現れている。調査機関カンター・ワールドパネルの携帯OSについての最新データはiPhone Xが世界中の主要な市場でアンドロイドに対してAppleのシェアを増大させることに貢献したことを示している。欧州全体、アメリカ、日本、中国都市部、オーストラリアでiPhone Xは12月に最も売れた電話のトップ3に入っている。アメリカ国外では更に値段が高く、1400ドル以上からのところもあり、必要なアクセサリーを全て合わせれば2000ドル近くになることも計算に入れて考える必要がある。

皮肉な見方をしてそもそもAppleのビジネスというのはエコシステムに囲われた騙されやすい人々に対して法外な利ざやをとるものだと言うなら、AppleがiPhone Xでアンドロイドからなぜ、どのように市場シェアを奪っているのかを説明できないといけない。なぜなら、大きなベゼルがついていて、ヘッドフォンジャックも既に付いていないiPhone 8へのアップデートは既にアンドロイドユーザーにとってそれ以前のモデルよりも魅力的なものではなくなっているからだ。そうではない、今回のことはiPhone Xの根本的に新しい見た目、性能、そして細かな部分ではなく高価で唯一無二の品質が魅力的だったのだ。

いずれにせよiPhone Xの購買者がどこから来たかに関わらず、彼らがみんな購入したことに揃って満足している。これは一般消費者向けの電化製品の競合他社とAppleとで異なっている点である。Appleの製品は一貫して奇妙なほどに消費者から高得点を付けられていて、最近ではAir Podsが新たに高い評価を受けている。iPhone Xについてのデータはまだ明らかになっていないが、所有者から私が見聞きした限りでは全てにおいて賞賛に満ちていて肯定的な評価である。テクノロジージャーナリストのレジェンドであるウォルト・モスバーグにiPhone Xについての消費者の反応を代表してもらおう。


フラド・サヴォフ(@vladsavov):iPhone Xは高いし、ノッチが目立っているし、背面のガラスは壊れやすいし、ヘッドフォンジャックがないにも関わらず、所有者は総じてみんな買ったことを喜んでいる。この顧客の満足度があるのでAppleを批判するのは難しいんだ。
ウォルト・モスバーグ(@waltmossberg):私がこれまで使ったりテストしてきた中で最高のスマートフォンです。速くて流れるようで、私にとっては完璧な大きさと画面構成。私は買い換える前の6sよりもずっと頻繁に使っていて、素晴らしいバッテリーライフも発揮しています。ホームボタンが無いことに慣れるのにも時間はかかりませんでした。

いつも通りウォルトの評価と経験はみんなに共通したものだろう。iPhone Xを買った人で私が尋ねた人はすべて購入を決断したことに幸せを表現していた。値段に怒ってはいる人は誰もおらず、些細な質的な不満はあったものの、それ以外に私が聞いたのは、操作するための流れるようで直感的な動作、豪華なディスプレイ、改善されたバッテリーライフ、未来的で便利なFace ID、そしてそれ以外にも使っている人を幸せにするものがたくさん詰め込まれているということだ。この基本的な事実を否定することはできない、iPhone Xはそれを使っている人々の判断によれば素晴らしい製品だということだ。

批判的に見るとiPhone Xは、とんでもなく高価で、突き出したノッチによって奇妙な外見になっていて、実用的でないガラスの背面の強度で、ヘッドフォンジャックや拡張可能なストレージが欠落している、ということになる。長年上手く機能していたToch ID指紋認証システムをAppleが削除したことも多くの人にとって問題になるかもしれない。私はこうした批判がどれも価値のない難癖だとは思わない、例えばサムスンのGalaxy S8のような競合製品と一対一でスペック比較をしてみればいくらかの理があることがわかる。しかしiPhone Xの明らかな欠点と言えるものはこの電話を長く使い続けるうちに溶けてなくなってしまうようなものなのだ。私はiPhone Xを広範囲にテストしたのでよくわかっている。例えばGoogleのPixel 2 XLの優れたカメラの方が私は気に入っているが、iPhone Xを使っていると一緒に幸せに生活するために私自身が必要な適応をしてしまっていることに気付かされる。Face IDの弱点を避けることに慣れてしまうことになり、ワイヤレスのヘッドフォンを買い、高価な革製のケースを手に入れることになるのである。

Appleは自身の顧客のことをよく知っている。この会社は顧客がデザイン的な判断について信頼してくれていることと、製品に合わせるために多少距離があってもついてきてくれることに自信を持っているのだ。今回のiPhoneの再設計は、私たちが機能や仕様を実証的な方法で評価することができるような全くの白紙の上になされたわけではない。他のすべてのものと同じではないので、この新しいiPhoneと「すべて同じように」比較をする方法は存在しないのである。

iPhone Xが広く過小評価されていて使っていない人から疑問を持たれている理由は、彼らがiPhone Xを他の機種と同じように扱っているからである。しかしiPhoneを買う人は、実際に他の電話を買うことがなくなり、iPhoneを使う経験を買うのである。彼らは全ての友人や家族とのiMessageでの繋がりを買うことになるのだ。購入者はAppleと親しい信頼関係を築き、定期的なソフトウエアアップデートと問題が起きた場合の寛大な修理交換プログラムを受けることができる。Appleがスマートフォンを販売するための全体的な方法論は既存のユーザーたちからの深い忠誠心が基礎になっていて、このことはアンドロイド搭載機種を使う私たちからすると羨望の対象となるものだ。

同社のマーケティング責任者がヘッドフォンジャックの削除について悪名高い「勇気」という言葉を口にしてから1年後に、Appleは大規模な再設計を行ったiPhone Xを発表して真の勇気を見せたのだと思う。象徴的だったホームボタンも取り除いたが、それよりも優れたジェスチャーインターフェイスに置き換えた。金属をガラスに置き換え、ワイヤレス充電を追加し、指紋認証を取り去った、画面上にはケーキの上のサクランボのような大きなノッチがついている。彼らのこうした変更はすべてどの製品においても確信に満ちた物であるのだが、特にiPhoneに関しては詳細に精査され、かつ大胆である。

iPhone Xについて怒りや不満の声が上がらないことは、特に現代のように攻撃的な言葉がよく聞こえる時代に於いてはAppleにとって大きな成果である。iPhone Xは完璧なスマートフォンではないのかもしれないが、完璧に幸せなユーザーをたくさん作り出しているようだ。

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