2018年2月11日日曜日

重要な年を迎えるテスラだがイーロン・マスクは未来に夢中


テスラの2018年最初の収支報告会で、CEOはこの先の展望に焦点を当てた。


The Verge
Sean O'Kane
Feb 8, 2018

水曜日に行われたテスラの2017年の財務状況報告のための電話会議の間、イーロン・マスクは終始楽観的な様子だった。上下動の激しかった1年で、この会社は20億ドルの赤字を計上したが、モデル3を立ち上げセミトラックと新ロードスターを発表した。マスクは明らかにこの会議の24時間前に行われたファルコン・ヘビー・ロケットの打ち上げの成功で元気付いていた。億万長者のCEOはこの会議に参加した財務アナリストからもお祝いの言葉を受けていて、ブースターロケットのシンクロナイズド・ランディングは人生で見た中で「最も凄いもの」だと出席者から声をかけられていた。

会議の開始から雰囲気は活気の無かった11月の収支報告会とは対照的だった。マスクはこの会議を現在の製品のアキレス腱になっているモデル3の生産拠点であるギガファクトリーから開催した。アナリストに対し「あなたの将来の想定とそれが妥当かおそらく悲観的かを検討するように」話した時、彼のトーンは挑戦的であった。また彼はテスラの工場内で起こっていると伝えられている、人種差別、反労働組合、ずさんな安全管理、セクシャルハラスメント、について報告したジャーナリストに対しても攻撃的な態度をとった。

しかしテスラは常に浮き沈みが激しい。2018年最初の会議で彼は上機嫌で大胆な展望を述べた。テスラは4年以内に完全電動のセミトラックを年間10万台生産できるようにし、このセミは既に公表されている技術仕様を超えるものになるかもしれないこと。テスラは2020年までに年間100万台の自動車を生産できるようにすること。テスラは近々登場させるモデルYという名前のクロスオーバーSUVをモデル3の半分のコストで生産できる可能性があること。

マスクが用意してきた今年の見通しのうちいくつかは大胆さに欠けるもので、モデル3の遅延が明らかになった後、2017年末に設定した目標を謙虚に補填するものだった。彼はモデル3を3月までに週に2500台、第2四半期までに週に5000台生産できるようにする意向を改めて語った。2017年7月のマスクの主張によれば、テスラはこの数字を同年の12月までに達成しているはずであった。しかし7月のモデル3を発表した時にマスクが警戒していた「製造地獄」は予想よりも悪いものになっていた。

「私たちは予想していたよりも深いレベルの地獄に嵌っています。私たちが望んでいたよりも数レベル深いのです。しかし(私たちは)迅速に脱出します。」とマスクはこの会議で話した。「ロードスターを小惑星帯に送り込むことができるのですから、モデル3の製造についても解決することができるでしょう」と彼は少し後に冗談めかした。(一晩後、マスクがファルコン・ヘビーで宇宙に送り込んだテスラ・ロードスターは実際には小惑星帯には向かっていないことが明らかになっている)

同社がこの地獄から抜け出そうとしていることを信じて、マスクはテスラの社員たちに「成し遂げた仕事に自身を持って欲しい」と述べて、感謝を表した。彼はまたテスラのサプライヤーにも感謝を述べていた。サプライヤーたちはモデル3の「増産のために共に極めて難しい努力を重ねてくれた。彼らは本当に深夜までオイルを燃やし、週末も使って、私たちと一緒に増産する挑戦について多くのリスクを負ってくれた」とマスクは述べた。

またマスクはモデル3の予約待ちの顧客の忍耐にも感謝していた。「あなた方はきっとこの車を好きになってくれるはずです。私たちはできる限り早く皆さんに車を届けるために働いています」と述べている。

予約待ちの顧客のうち、特に一番安価な「標準」バッテリーパック付きの基本仕様モデル3のための1000ドルのチケットを持っている人は更に忍耐が求められることになりそうだ。この会議の後で明らかになったところによると、3500ドルのバージョンのモデル3を最初に予約が可能になった日(2016年3月31日)に予約をした顧客は車が届けられるのを「2018年末」まで待たなければならないことになっている。3月31日より後に予約をした人は「2019年初頭」となっている。

この遅延について今回の電話会議では触れられなかったことがテスラがどうにか祝賀の雰囲気で重要な問題を覆い隠そうとしたことを象徴している。マスクは2018年のテスラの展望について話をする時、今だに大まかなことを話していた。例えば、同社がついに西海岸から東海岸までの自動運転を今後3ヶ月から6ヶ月以内に試みるとし、顧客がそれと同じことをできるようにするとして、オートパイロット機能のアップデートを発表する予定である、というのは1年前と同じ約束である。

マスクは昨年夏に何度か話していた同社が数十のギガファクトリーを開設したいという希望について今回言及しなかった。また、世界最大の自動車市場であり、テスラが積極的に開拓しようとしている市場であるとしていた中国について一度も言及しなかった。さらに、株主への手紙では言及されていたテスラ・ソーラールーフや家庭用バッテリーなどのエネルギー製品についても放置された。マスクはその代わりに展望に焦点を絞り、2018年はテスラが現在の自動車事業から財務的に良い結果が期待できることをアナリストに納得させようとしていた。今年は「私たちにとって大きな年になるだろう」と彼は話した。

彼はモデル3についての動向が転換点であると信じるところを新たにし、競争相手に対する批判にも時間を使った。LIDAR技術を使って自動運転車を作ろうと試みている会社は自ら窮地に入り込んでいるとし、そうした技術を「松葉杖」と呼んでいると述べた。さらに彼は自動車業界は「極めて優れた製造業」ではあるが自動車会社は彼らがもっとどれだけ良いものになることができるのかを理解していないと語った。

「最も速い自動車工場は確か25秒に1台の車を製造すると聞いています」と即興の数学を披露する前にマスクは述べた。「間も含めて5メートルの長さの車を作るとして、つまり4.5メートルの車を作る時に、作っている車と車の間に0.5メートルの空間か何かがあるとして、25秒に1台の製造だとすると1秒間に0.2メートルの速さになります。現在最も速い生産ラインの速さはおばあちゃんの手を引いて歩いている人が追い越せる速さで、それほど速いわけではありません。歩く速さは1秒に1メートルなので最も速い生産ラインよりも5倍速いことになります。最低でもジョギングくらいの速さにできないのはなぜなのでしょうか?」

かつてマスクはテスラの工場の生産が速すぎて空気摩擦の克服が課題になることを望んでいると話したことがあり、水曜日の会議ではこれを繰り返したのだ。しかし、テスラがその課題に対処するまでには、彼が批判する競争相手のペースにもついていけていない現状では、まだかなり遠い道のりだ。彼が言うには、ギガファクトリーのバッテリーモジュール生産ラインをさらに自動化しようと試みているが、それまでの間は反自動化(ロボットと人間の共同)ラインになっているという。

空気との摩擦が問題になるほどの速さの製造工程を作り上げる、という大胆な目標は、テスラの工場は同社がこの先も生き残っていくための最大の要素になるというマスクの持論と合致したものである。「長い目で見てテスラの競争力は車そのものではなく工場にあるということになるでしょう」と彼は述べている。「私たちは工場を製造しようとしているのです」

この戦略はかつてのヘンリー・フォードのものだと今週の会議でマスクは語った。彼は1900年代のフォード・モーター・カンパニーの支配はモデルTによるものではなく同社のリバールージュの製造施設によるものだったと主張した。「誰でも(モデルTを)作ることはできたはずです。しかし誰もリバールージュを作ることはできなかった。それに倣って工場をテスラの長期的なアドバンテージにしたいのです。」

マスクは言及しなかったが、フォードの他の有名な工場と同様にリバールージュも初期の頃には工場を動かすために労働者たちはしばしば丸め込まれ、酷使され、虐待されていたことを背景にしていた。

テスラはアメリカの自動車会社として唯一アメリカで工場を労働組合なしに運営している。マスクが昨年末メディアをさんざんやり込めたことに関わらず、2018年には同社は元従業員の酷使についての証言や申し立てへの対応に時間を費やさなければならなくなるだろう。意欲的な目標を達成するために自動車組み立て工場とギガファクトリーの両方で生産量を増やしながらこの問題への対応の方法を見つけ出さなければならない。マスクの大胆な展望に価値があることは明らかだが、2018年にはこの2つのことのバランスをとるのが難しくなるだろう。そしてその必要不可欠なバランスこそがこの会社を待っている壮大なアイディアの扉を開ける鍵となるものだ。おそらくそれが昨日の会議の大半でマスクが1年先を見据えた話をしていた理由である。

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