2018年9月8日土曜日

アラスカで大津波の原因になったもの


2015年にアラスカのフィヨルドで起きた津波に関する論文が発表された


Science Alert
CHRIS MOONEY, THE WASHINGTON POST
7 SEP 2018

3年前アラスカのフィヨルドで起こった珍しい大きな津波は1億6300万トンの岩が山から水中に剥がれ落ちて大きな波を起こし、波は海岸線を駆け上がり600フィート(182m)以上の高さまで達した。この津波について木曜日に科学者のチームが調査論文を公開している。

2015年10月、アラスカの南東部ターン・フィオードで起こったこの大変動は、この1世紀で4番目に高い津波として記録されている。この津波の原因になったものは氷河の減少と関係しており、地球温暖化によりこうした出来事は私たちがより頻繁に目にすることになる可能性がある。今回の新しい論文ではまさしくこの出来事を「気候変動による危機」であると述べている。

「こうした斜面崩壊は山岳地の氷河が縮小し続け、高山の永久凍土が融け続けると起きる可能性が高くなる」と地質学者のブレットウッド・ヒグマンが主導し Nature Scientific Reports に掲載された論文には書かれている。

「30年から40年ほど前にはターン・フィオードは存在していませんでした。氷で埋め尽くされていたのです」とワシントン大学タコマ校の地質学者で論文の著者の1人であるダン・シュガーが付け加えて言う。この調査にはアメリカ、カナダ、ドイツの研究施設から32人が参加している。

この地のティンドル・グレイシャーと呼ばれる氷河は1961年から1991年の間に10マイル(16km)後退し、厚さも現在の状態で安定するまでに1,000フィート(300m)以上薄くなった。これは単にフィヨルドが現れたというだけの話ではなく、山の斜面を包み込んで支えていた氷の塊が取り除かれたということになると論文には書かれている。

巨大な斜面崩壊が氷河のすぐ前で起こり、フィヨルドの狭くなった形によって時速60マイル(96.5km/h)という速さで移動する巨大な波を引き起こした。「水の入ったバスタブにボーリングのボールを落としたところを想像してみて下さい」とシュガーは言う。「水はバスタブの全方向に行くことができます。しかし、バスタブの壁にぶつかればそれ以上は行き場がなくなるので、上に駆け上がることになるのです」

シュガーはこの津波は観測史上最大ではないが、史上最大のものと同じジャンルに属するものだと言う。「史上最大の津波として記録されているものはアラスカのリツヤ湾で起こったものです。今回調査したケースと非常によく似ています。斜面崩壊が起こり氷河の境目にぶつかってフィヨルドの海にに落ち込んだのです」「このケースでは、その前に大きな地震がありました」

この1958年に起こったケースでは津波は1,719フィート(523m)にまで達した。もちろん、大昔に地球でどんな恐るべき出来事が起こっていたのか伝えてくれる人はいないが、おそらく更に極端に大きな津波が発生していた可能性が高い。

2015年の津波について調査するために、科学者たちは地震計に地すべりの痕跡を検出してから8ヶ月後と比較的迅速に現場に行き着くことができた。彼らは津波の残骸の調査を進め、植物が削り取られた海岸線、岩石やその破片が山積みになっているところ、まるでショットガンで撃たれたかのように樹木の幹に小さな岩が深く入り込んでいるものまで発見した。

現場には誰もおらず怪我人は出ていないが、シュガーはアラスカのフィヨルドで将来的に起きるこうした出来事にクルーズ船が遭遇する可能性を懸念している。彼はグリーンランドで似たような津波が発生した時に4人が犠牲になっていることも指摘している。

別な言い方をすれば、こうした出来事は今回ここだけの話ではなく、巨大な氷河の減少が周辺の山々に与える影響を考えれば、様々な出来事が起きる可能性がある。

「山の斜面は新しい環境に合わせて形を変えようとするので、1つの岩が落ちる、岩の雪崩が起きる、あるいは斜面全体が崩れ落ちることがあり得るのです」とチューリヒ大学の地理学者マーティン・ルティは語る。彼は最近グリーンランドのフィヨルドで起きた小規模な津波についての論文を書いている。この津波は岩ではなく氷の崩壊によって起きたものだった。彼はアラスカの調査には加わっていない。

「世界中の急速に氷河が溶けている地域で非常に大きな斜面崩壊が何件か発生しており、それが湖やフィヨルドに到達した場合に巨大な津波が発生しています」

「今回の論文でなされている、斜面崩壊が原因で発生する津波の被害を軽減するために、潜在的な危険区域を特定して地図にし監視するという提案は間違いなく正しいものです」とルティは付け加えた。

「氷河の減少がこうした危険を作り出す役割を担っているという解釈はゾッとすると同時に魅力的なものです」とマサチューセッツのウィリアム大学の地球科学者ロナド・コックスが話している。彼は岩石やその他の大きなものを動かす波の力について研究している。「これは歴史に残る研究だと私は思います」

津波や雪崩は氷河の減少だけが原因で起こるものではない。山岳地帯の氷河が融けていることで高い場所に大きな湖が作られることがあり、この湖が突然溢れ出し斜面を滝状に流れ落ちる可能性がある。氷河が深い水辺の上や近くにある場合、大きな氷の塊が崩れ落ちることもフィヨルドに波を起こす原因になる。

今回論文として発表されたターン・フィオードのケースは、気候変動が景観を変化させている規模の大きさと、それに見合った結果の大きさを示している。

「問題は、私たちがこうした急斜面を作り出していることで、私たちが更に多くのこのような出来事を引き起こす可能性があることです」とシュガーは述べている。

0 件のコメント:

コメントを投稿