2018年9月22日土曜日

AI がドローンを鳥のように上昇気流に乗せる


飛行機が着陸する必要がなくなる時代が来る…?


The Conversation
Nicholas Martin
September 20, 2018

人間は昔から飛ぶ方法を考える時には鳥から着想を得てきた。私たちは長い距離を渡って行く鳥たちが、羽ばたく力を使わずに上昇気流を利用していることを知っている。そして、同じようにグライダーのパイロットたちもより長い時間空中に留まるために同様に上昇気流をを利用している。

私たちが様々な器具を使って上昇気流を利用したグライダーの技術を探求しても、鳥たちが急上昇する正確なメカニズムは未だにわかっていない。現在、カリフォルニアとイタリアの研究者のチームが人工知能(AI)を用いてこの疑問に答えようと歩を進めている。そして、この技術は航空機用の新しいナビゲーションシステムを作り出すことができるかもしれない。更に、極めて長い時間空中に留まっていることができるドローンが作り出されるかもしれない。

ネイチャー誌に掲載されたこの研究の目的は、翼の長さが2m程度の小型グライダーを上昇気流に載せて本物の鳥のように自動的に飛行させることだった。このグライダーは AI の一種である機械学習がプログラムされ、空中に留まるために気流を利用する方法を学習することができるようになっている。

機械学習はコンピューターに複雑な処理をさせるためのこれまでとは異なるアプローチである。コンピューターに(この場合では自動飛行のグライダーに)何かをする方法について指示を与えるというよりは、コンピューターが正しいことをした時に、設計者がどう反応しどう報いるかを教えておくものである。

時間と共にコンピューターは何が報いられるのかを学習し、行動に反映されるようになって行く。この技術は Google の AlphaGo が囲碁のルールを学び、最終的にプロ棋士を破るという従来型のプログラミング技術では不可能だった功績を挙げた手法だ。

このタイプの機械学習は強化学習と呼ばれるもので、コンピューターに提供される膨大な入力データによって、報酬を与えられる行動を学習する。今回、研究者たちが自動飛行のグライダーにプログラミングする上で用いた入力データは、上向き(垂直方向)の風の強さを読み取ることができる機器から得られるものだった。この機器は、グライダーの長さ(縦方向)と一方の翼の先からもう一方の翼の先(横方向)までとに沿って風の変化を判断することができる。このセンサーは10秒毎に測定を行う。

このデータを利用して、グライダーのバンク角と呼ばれる姿勢に反映し飛行を調整する。翼が水平にバランスが取れた状態では飛行機のバンク角は0であり、まっすぐに飛ぶ。翼を傾けてバンク角を増やせば飛行機は旋回する。今回この研究では、グライダーは飛行経路に沿って上向きの風が増加に変化した場合、つまり、グライダーが上昇気流に乗っていた場合に報酬を得ると設定された。

上昇気流はグライダーが空中に留まっている時間を増やすためには鍵になるものだ。エンジンが搭載された飛行機とは異なり、グライダーは上昇気流を見つけることができなければただ地上に降りてくるだけになる。グライダーが降りてくるのか上昇するのかは周りの風がどの程度上向きに吹いているか次第になる。上昇気流の中では、垂直方向の空気の動きが増加するため、グライダーは下降を止めることができる。上向きの風が十分に強ければ機体を上昇させることも可能になる。

一連の飛行実験を経て(全体で16時間の飛行を行った)、この研究のグライダーは入力情報(バンク角と垂直方向の風の強さの縦と横への変化)の適切な組み合わせによって、次にどうバンク角を変えればよいのかを決定し、自分で訓練して飛び方を学習した。その結果、最終的にこの飛行機は上昇気流への入り方を自分で学び、より長い時間の飛行が可能になった。

更に、研究者たちは数値モデルを用いて、より大きなグライダーの方がこの手法の利益が大きくなることを示している。これは大きな翼の幅を持っている方が、片方の羽の先からもう片方の先までの間で上昇気流の変化を正確に測定することができるからである。


航空機をスマートにする


この結果によって、将来的な自動飛行のグライダーの可能性についてと、そしてそれはどう使われるのかという疑問が湧く。

MIT の技術者たちは最近波に乗るアホウドリから自動飛行グライダー設計の着想を得ている




エアバスは従来の監視システムや通信衛星に代わるものとして、太陽光発電を使って非常に長い時間空中に留まっていることができるグライダーを開発している。例えば、これを使って遠隔地へインターネット通信を提供することができる。マイクロソフトは最先端の AI ナビゲーションシステムを備えた自動操縦の飛行機を研究していると報じられている。

しかし、おそらく今回の研究で開発された技術は、従来型の航空機のための、新世代「スマート」ナビゲーション自動操縦システムに繋がる可能性が高い。何千時間にも及ぶ飛行時間からデータを収集し、最も効率的に飛行する方法を決定するのに利用することができる。これには正確なセンサーと、更に開発を進めて飛行機が上昇気流を識別し、上昇気流から上昇気流へ乗り換えていくことを可能にする必要がある。現在この手法は1つの上昇気流でだけ可能になっている。

今回研究者たちによって開発されたこの手法とプログラミング技術によって、数週間、数ヶ月間という長期間の飛行が可能な自動操縦の旅客機という目標には間違いなく近づくことになっただろう。そして、強化学習を利用することはグライダーの制御から囲碁で人間を負かすことまで、如何にこのアルゴリズムが幅広く複雑なタスクに適応できるかが示されたと言える。

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