2018年9月29日土曜日

Amazon は Alexa を実生活の OS にしたい


アマゾンはアレクサをいたるところに行き渡らせようとしていて、電子レンジやサブウーファーのメーカーとの競合も辞さない。


The Verge
Nick Statt
Sep 27, 2018

アマゾンによる年1回のアレクサを中心にしたハードウェアイベントから1週間が経ったが、このテクノロジーと直販の会社は今回矢継ぎ早に行った発表につてこれから数ヶ月の間で処理することになるだろう。アマゾンは2時間弱のイベントで、家庭用オーディオ、エンタメ製品から、台所用品、カー用品まで、あらゆるものを対象に12を超える新製品を発表した。アマゾンがあまりにも突然に予兆無く製品を発表したために、何故アマゾンがアレクサ搭載の電子レンジや100Wサブウーファーを作り始めたのか前後関係を理解するのが難しくなっている。

このアマゾンによる電撃戦的な市場戦略はともかく、明らかなことは同社がアレクサとエコーの製品ライン、そして他の個々のデバイスをデジタルアシスタントに統合してスマートホーム市場を支配する武器にしたいという意欲を持っていることだ。アップル、グーグル、マイクロソフトが我々のデジタルライフを OS で管理しているのと同じように、アマゾンはアレクサを我々の物理的な実生活を管理する OS にすることを望んでいる。アマゾンは完全な失敗になる可能性のある独自製品を開発するだけでなく、殆ど成功の可能性のない確立された市場に参入する意志も見せている。おそらくアマゾンはアレクサの行き渡る範囲を競合するソフトウェアよりも1インチでも遠くまで広げようとしている。

「今の所散発的に製品が発表されているように見えますが、実際はもっと長期的な戦略が計算されています」とフォレスターのアナリストで、消費者動向を研究するジェニファー・ワイズは説明している。「こうした製品群は消費者の生活に入り込んでくるもので、アマゾンがデジタルアシスタントによる統合を図る上で、こうした製品によって他の競合製品ではなくアマゾンのデジタルアシスタントを使う理由になるのです」

アマゾンがスマートホーム市場に狙いを定めている理由はこの時点で既に理解されている。アマゾンは AI を搭載したボイスアシスタントとそれが機能する全てのデバイスを消費者の購入行動に繋がる入り口として見ていて、アマゾンに利益をもたらす方向に消費者を誘導する機会として利用することを考えている。そして、プライムメンバーシップのように生活習慣の中に食い込むことができれば、消費者がそこから離れることは難しくなる。

「様々な分野の製品はアマゾンが人々の家庭の中に入り込んで毎日の生活の一部になることに貢献します。これによって、アマゾンのデジタルアシスタントが競合製品より有利になるわけです」とワイズは言う。同時にこのことは将来のために種を蒔いていることにもなる。アレクサの利用が増えることでアマゾンはより多くのデータを収集できるようになる。「多くのデータが収集できればアルゴリズムの改善に役立ちます。消費者体験を向上させて、デジタルアシスタント市場をリードしようとしているのです」とワイズが付け加える。

そうだとしても、文字通り数百の実績ある家電メーカーやオーディオブランドが存在して、洗練された製品を手に入れることができる状況の中で、アマゾンが電子レンジやハイエンドオーディオを用意した狙いを理解するのは難しいかもしれない。ここでアマゾンは必ずしも多数の製品を売ることを目標とはしていない。むしろアマゾンは他のデジタルアシスタント製品を持つ会社が同様のカテゴリーに製品を投入して何らかの市場を得ることを難しくすることを目的にしている。つまり、アップルとグーグルを新しい製品カテゴリーで抑えつつ、価格を不自然なほど安くして、何が効果的なのか常に実験を続けることを実行しようとしている。

「様々な価格帯に様々な製品を発表していますが、中には消費者が思わず手を出したくなるようなものも存在しており、人々に選択肢を与えることになっています」とワイズは話す。「このことはアマゾンがハードウェア戦略を洗練させることに役立つでしょう。同時に重要なのはアマゾンプライムに契約する機会を提供し、アレクサを利用して幅広くアマゾンに関わってもらうことなのです」

アマゾンは既存の市場への早急な参入に驚くほどの意欲を見せているが、新しく蓄積のないスマートデバイスの市場についてはより節度を持って長期的な戦略を示している。この分野ではアマゾンは買収によって良いポジションを得る努力も継続している。昨年末、アマゾンはスマートセキュリティカメラのメーカー Blink を買収し、今年の初めにはスマートビデオドアベルを開発する Ring を買収している。こうしたアマゾンの企業発掘は、スマートホーム業界に目を光らせ、有望な新製品を調査して今回のようにすくい上げるために1億ドルでアマゾンが設立した投資部門であるアレクサファンドを通して行われたものだ。

アマゾンはアレクサファンドを通して数多くの会社に投資して、その後買収するということを実践している。その中にはスマートプール監視システムの Sutro やスマートガレージドアシステムの Garageio のような会社が含まれている。また、小規模な電化製品ベンチャーがサプライチェーン構築を助け、ハードウェアの試作、製造、物流の煩雑さを解消する、ハードウェアスタートアップ企業のためのコンサルティング会社である Dragon Innovation にも投資している。

したがって、小さなスタートアップ企業が作る市場でも、台所用品のような既存の非テクノロジー系業界の市場でも、アマゾンはどちらの市場にも目を光らせている。アマゾンはその市場の中で企業買収で既存のポジションを獲得するべきか、自身で製品開発を行って参入するべきかを見定めていることになる。最終的にアレクサは現実世界のソフトウェア階層、つまりリビングルーム、ベッドルーム、キッチンのような場所の重要なソフトウェアになろうとしている。遠からず、アレクサはスマートフォンのアプリを通して、ガレージのドアを開けて自宅のプールを管理することになる。

「スマートフォンや様々なパートナーシップによって既に人々の生活に組み込まれているグーグルとは異なり、アマゾンが作り出すデバイスというのは、アマゾンが巨大な消費者データの市場へ参入することを意味しています」とワイズは話す。これは重要なポイントになる。それはアップルとグーグルが絶対に負けることが許されない市場、つまりスマートフォン市場へのアマゾン参入の可能性を示唆することになるからだ。かつて iOS とアンドロイドの二者独占市場へ挑戦を試みたアマゾンの不運な Fire Phone は惨めな失敗に終わった。そして今、アップルとグーグルがスマートフォンアプリのエコシステムとモバイル OS をあらゆる場所に行き渡らせたことで、スマートホームやデジタルアシスタントに関わる会社にとって重要な存在になっている。安価なホームスピーカーと優れた検索能力によって、グーグルの方がアップルよりもスマートホーム関連企業の中で突出したものになっている。

しかし、iPhone や Pixel を所有しているだけでは、人々が新しい電子レンジやスマートスピーカー、照明器具、ガレージのドアを開けるシステムを購入する要素にはならない。しかし、これらのデバイスがすべてアレクサを実行し、お互いにコミュニケーションを取るなら話は違う。そしてこれがアマゾンのマスタープランであるように見える。つまり、アレクサをグーグルアシスタントや Siri よりも速くあらゆる場所に行き渡らせて消費者をアマゾンのエコシステムから離れるには手遅れの状態にすることだ。

「現在でも多くの消費者がアレクサのようなボイスアシスタントを使って、音量の上げ下げやタイマーの設定、ドアの解錠のような基本的なコマンドを実行しています」とワイズは言う。しかし、アマゾンは「あらゆるデバイスやハードウェアを『スマートに接続された』ものの一部にすることを未来の体験として注目しているのです」これは、現在あなたの家にある電気やバッテリーで動作するものは全て関係するということを意味する。アマゾンの現在の目標はあらゆるものをアレクサで稼働させることであり、アマゾンはその目標を達成するためにできる限り速く動こうとしていることをが先週の発表で明らかにされたことになる。

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