2018年8月7日火曜日

地球は後戻りできない「温室状態」に突入している危険性を専門家が警告


「2018年の夏の様子から考えると、オオカミの鳴き声が聞こえてきた、という状態ではなく、既にオオカミが視界に入っている感じです」


Independent
Josh Gabbatiss
Aug 7 2018

I世界中で熱波、山火事、旱魃が記録されているこの夏、ある科学者たちは「地球の温室化」と呼ぶ筋書きの下で、状況はかなり悪いものになっている可能性があることを警告している。

例え温室効果ガスの排出が削減されたとしても、これまでの人間による温暖化が制御不能な地球温暖化に繋がる他のプロセスを開始させる可能性があるのだと、ストックホルム・リジリエンス・センター研究所の研究チームが指摘している。

アマゾンの熱帯雨林が破壊され、北極圏の永久凍土は解け、南極海の氷は溶解している、これらのように地球上の炭素の保存を助けている自然のメカニズムに対して影響を与えることで、逆に自然が炭素を排出するようになることを同研究所の科学者たちは警告している。

このシナリオにどの程度可能性があるかは不明だが、この転換点を超えたときに人類を脅かす脅威となる温暖化の暴走が起きることで専門家は一致している。

「この転換点になる要素はドミノ式に倒れてくる可能性があります」とストックホルム・リジリエンス・センター研究所の所長ヨハン・ロックストロム教授は語る。「一度1つが押されると、それが地球全体を別な方向に向かわせるのです。おそらく、このドミノの列全体が倒れるのを止めるのは相当難しい、若しくは不可能なことです」。ロックストロム教授と彼の研究チームは専門誌PNASに掲載された論文でこの状況の見込みについて説明している。

「私たちが地球レベルで定める転換点になる要素とは、一度特定のストレスレベルを超えると、根本から、迅速に、そしておそらく不可逆的に1つずつ変化していくものです」とポツダム気候影響研究所のハンス・ヨアキム・シェルンフバー教授は説明する。「この連続した出来事によって、地球のシステム全体が新しい運用形態に入ることになるのかもしれません」

地球の平均気温は現在、産業革命前から1℃上昇しており、パリ協定で世界各国の政府は温暖化を産業革命前からトータルで2℃未満に留めることで合意している。

この論文の最悪のシナリオでは、地球の気候は平均気温が4-5℃上昇して安定することを執筆者たちは予測している。これは、過去120万年の間で最も高い気温であり、60メートルの海面上昇を伴う。「『地球の温室化』が現実になったら、地球は人間が住めなくなります」とロックストロム教授は言う。

他の科学者たちは今回PANASに掲載された新しい論文を確実なものとは見ていない。推測に傾いており、既存の気候変動予想の殆どから外れている。しかしそれでも、彼らはこの話にはもっともらしいこところがあることは認めている。

「2018年の夏の様子から考えると、オオカミの鳴き声が聞こえてきた、という状態ではなく、既にオオカミが視界に入っている感じです」とイースト・アングリア大学の気象調査官フィル・ウィリアムソン博士は語る。彼はこのPANASの論文には関わっていない。

ウィリアムソン教授は、地質学的見地から地球の気候システムは「本質的に神経質」なものであることを指摘した上で、人間の活動が組み合わされて悪化させる可能性があると話す。

この研究に参加した研究者たちは、大惨事を避けるために、私たちは地球に対する態度を「搾取から管理」に移行する必要があると記す。温室効果ガスの排出量を減らすだけではなく、森林を保護し、生物の多様性を確保し、大気中の二酸化炭素を除去する方法を作り出して、新たに炭素を貯蔵する方法を生み出す必要があるという。

しかし、彼らは温暖化が制御不能になる閾値はパリ協定の目標の範囲内にある可能性が高いという。つまり、平均気温2℃の上昇は「地球の温室化」の危険性を高めることになるかもしれないと指摘する。

この目標を下回って「安定した地球」を維持することが可能なのかどうか、この研究には関わっていない気象科学者でロンドン大学のクリス・ラプリー教授は、この件についてあまり希望は持っていない。

彼は、世界の政治が「右翼ポピュリズム」と気候変動否定に直面している状況下で、言われているような方法でこの問題に対して徹底的に取り組むことになることはありそうもないと話す。

「将来この星に住めるかどうかは運次第のように見えます」と彼は言う。「温室効果ガスの排出や、その他の人間が起こす混乱に対して、地球の気候システムは幸運にも我々が考えているよりも影響を受けにくいものだったとか、あるいは、地球の温暖化が暴走する閾値が破られる前に、他の社会的な惨事によって人間の温室効果ガスの排出が劇的に減少するというようなことです。後者はあまり慰めにはなりませんが」

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