2018年8月5日日曜日

カリフォルニアの未来はさらなる火事と洪水に向かっている


我々に見えてくるのは悪くなることばかり


The Verge
Shoshana Wodinsky
Aug 2, 2018

カリフォルニアの最近の気温は過去数十年の記録を圧倒している。チノでは華氏120°(摂氏49°)に達し、ロサンゼルスでは先月に一度華氏111°(摂氏44°)にまで達している。

こうした気温は住民たちを愕然とさせているが、それほど驚いていない人達もいる。気象学者に言わせれば、焼け付くような暑さや猛烈な山火事から電力不足による停電まで、全ては予想できていたことのようだ。ここ数年、彼らは、これまでカリフォルニアで何が起きるのか兆を見てきたのだと言う。そして、1000戸もの家屋を破壊して損傷させた最近のカー・ファイヤーと呼ばれる山火事のように、自然災害の悪化が徐々に顕著になってきている。

「今我々が目にしているもの、つまり私たちが予想してきたものは、30年前から言われてきたものです」とスタンフォード大学の地球科学者ノア・ディフェンバウは語る。専門家の予測が示唆するところによれば、ここ5〜6年のカリフォルニアの極端な気候は「将来に起こることを暗示している」のだと彼は言う。

この数年間、カリフォルニアは範囲の広さも被害の大きさも前代未聞の火事に見舞われてきた。カリフォルニア州森林保護防火局(Cal Fire)によれば、7月には1週間以上燃え続けた野火が1000以上発火した。これは過去数十年の3倍以上の数になる。それだけでなく、今年を去年と比較すると70,000エーカー(約283平方キロメートル)も多くの土地が野火の被害にあっているという。

専門家は、これらの最近の野火はこれまでカリフォルニア州で起こってきたものとは素性が異なるのだと指摘する。伝統的にサンタ・アナ・ウィンドと呼ばれる乾いた風や「ディアブロ・ウィンド」と呼ばれる10月から3月の間に南カリフォルニアで吹く風がある。これが一般には「山火事のシーズン」として知られている。この土地の植物はこの乾燥した季節にタバコの残り火や雷など、なんらかの火災のきっかけにより風によって簡単に火が燃え広がる。しかし、以前は火事の「シーズン」と呼んでいたものだったが、今では1年を通してのリスクになっている。これは地球温暖化の影響で悪化する一方だろうとディフェンバウは話している。

「火にはいくつかの要素が同時に必要なものです。点火する要素なしに山火事が発生することはないわけですが、燃料がどの程度存在して、それがどの程度乾燥して燃えやすくなっているか、こうしたことも火事のリスクを考える上で問題になります」と彼は付け加える。

最近はその燃料が増えている。2017年を振り返ると、湿った冬で土着の野草や侵入してきた雑草が「スーパーブルーム」と呼ばれる現象によって繁茂することになった。季節が変わってカリフォルニアが記録的な暑さの夏になった時に、繁茂していた植物は火の点きやすい燃料に変わった。この年、十数回の野火が北カリフォルニアを襲い、少なくとも40人が亡くなった。しかし、今年の冬は季節外れに乾燥していた。そのせいでスーパーブルームは起きなかったが、植物が枯れ木や枯れ草となって地面に倒れているのを見ることになった。これらは爆発的に燃え広がる理想的な燃料となった。そして暖かく乾燥した環境の春の到来が早まっていることで、更により広範囲に渡って燃える火の燃料が作られたのだった。

こうした環境で火の状況が悪化してより多くの民家が燃え、より多くの怪我人が出ることを予想するのは難しいことではない。しかし、更に悪いことに、現在も野火の被害の危険性がある場所に家を建てることが止められていない。

「現在は10年前よりも多くの人たちが危険な状態にあるのは確かです。10年前はその10年前よりも多くなっていました。ですから、私たちは常に多くの人たちを危険な場所に移動させているわけです」とUCLAの環境科学者ダニエル・スウェインは語る。「状況は変わってきているかもしれませんが、都市部と郊外との境界あたりには大きな火災の危険に晒されている場所がまだ多く存在します」

気候変動は火災だけを悪化させているわけではなく、水害の危険性も高めている。冬期の気温が上昇してカリフォルニアの冬は雪よりも雨が降るようになったことで、州で貯水、発電、水害対策に使われている1000以上のダムが早期に満水になるようになった。こうしたダムの殆どは40年以上前に建設されたもので、冬の時期の洪水に備えるようにできてはいない。2017年2月にオーロビルダムで起きたようなことが頻繁に起きるようになる可能性があると専門家は指摘する。

矛盾しているようだが、洪水のリスクが上昇することは同時に水不足の危険も高まることになる。ディフェンバウによれば、今年、貯水湖の監視当局は水害のリスクを避けるために早めに放水するようにしているという。つまり、ダムが水害の可能性を避けようとすると、都市部で夏の間に使える水の貯えが少なくなることを意味する。

私たちが今から排ガスの扱いをどのように変えようとも、カリフォルニアではこれからすぐに多くの変化が起きることになるとスウェインは指摘する。その理由は最大の温室効果ガスである二酸化炭素は数十年かそれ以上の期間大気中に留まっているからだという。それ故に私たちが排出する二酸化炭素の量を今から急激に減らしたとしても、気候システムに与える多くの変化は今後何年にも渡って確実に起こることになる。そして、アメリカがパリ協定から離脱したことによって、世界が将来に悪影響を与える温室効果ガスの排出を急いで削減しようとしているという兆候は殆ど見られなくなっている。実際、昨年の炭素の排出量はメタンや他の温室効果ガスと同様に過去最高を記録している。

「私たちが炭素の排出をゼロにしたとしても、地球上の炭素の動きに突然具体的な変化を起こすことはできないのです」とスウェインは言う。「数年のうちに変化が起こることはないと思います」

私たちが今決定づけようとしているものは今後数十年の気候ではないのだと彼は言う。その時期は気温が上がることがもうすでにわかっている。しかし、私たちは今世紀後半の気候がどのようなものになるか、変化させるための力は持っているのだとスウェインは言う。この変化は私たちがこれから炭素を燃やし続ける量によって、急激なものにできるかもしれないし、ささやかなものになるのかもしれない。気温上昇の程度は私たち次第である。

「温暖化は確実に進行していますが、『温暖化』の結果には幅があります」と彼は言う。「気温が1度上昇した場合と4度上昇した場合とでは全く異なる世界が存在することになるのです」

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