2018年8月28日火曜日

インターネットの発展に貢献してきた水槽のライブ中継


ネットスケープを主導するエンジニアだったルー・モントゥリが24年前に始めたフィッシュカムは今も続いている


Motherboard
Samantha Cole
Aug 28 2018

現在のインターネットはライブストリームで溢れている。誰かが国中を旅行している姿や数億マイル離れた彗星の軌道をあなたが見たいと思うかどうかは別として、少し探せば数えきれないほどのウェブカメラが存在しているのがわかる。1990年代初めの頃はこうした状況ではなかったが、古代のライブ中継がいくつか存在していた。そのうちの1つが The Amazing Fishcam で、カリフォルニアのマウンテンビューにある水槽で泳いでいる魚の画像を数秒毎に更新して見せるものだ。

この The Fishcam は今でも遺跡として存在している。24年間フレームを動かし続けてきた。ウェブサイトそのものは基本的に1994年当時、ネットスケープの設立エンジニアだったルー・モントゥリが初期インターネットを構築する上での実験としてネットスケープのオフィスにカメラを設置した時と変わっていないように見える。

Fishcam を見る人の殆どは単に可愛い魚を見て楽しむために見ていたに違いない。しかしネットスケープの内部では重大な仕事上のテストになっていることもあった。「私たちはデジタル上の交流活動を拡大しウェブをもっと実用的で便利なものにするためにたくさんのテクノロジーを設計していました。Fishcam のように私がやっていた多くのことはそのテストになったのです」とモントゥリは電話でインタビューに答えて語ってくれた。

40ガロンサイズの水槽は、その後10年以上ワールド・ワイド・ウェブを形作るネットスケープの多くの機能やツールのテストプラットフォームになっていたのだった。繰り返されるアニメーションGIF、インターネットに写真をアップロードする方法、現代のRSSやソーシャルネットワークフィードのような様々なプロトコル、動的HTML、こうしたものは全て、世界中から魚の映像を見た人たちからのフィードバックの影響を受けている。

モントゥリと彼の友人たちがマウンテンビューに引っ越した時、オフィスの近所に今は閉店してしまった「シースケープス(Seascapes)」という名前の観賞魚店があった(モントゥリはこの店舗の名前が「ネットスケープ」という名前に影響を与えた可能性を示唆している)。彼らはほぼ毎日その店に通っていたのだという。「それで最終的に私が『もう良いや、水槽を1つ買うからオフィスにまで運んでくれ』と言ったのです」

海底からでも鷲の巣からも放送ができる現在のライブ中継と比べると Fishcam は初歩的なものである。Fishcam は今もカリフォルニアのサニーヴェールにあるクラウドストレージ会社 Zetta (モントゥリは同社の共同設立者の1人)のオフィスからストリーミングを続けているが、現在のものは最初のものよりも少し高速に改良されている。14.4kモデムが主流だった90年代は3秒毎か4秒毎に更新されていたが、今では毎秒画像が更新されている。だがこのウェブサイトは1999年に使えなかった技術は何も使われていない。モントゥリは「レトロな感じに留めておこうとしています」と言う。

モントゥリは、1991年にイギリスのケンブリッジ大学のコンピューター科学者たちが始めた残ったコーヒーの量を中継する Trojan Room Coffee pot のストリーミングにインスパイアされたのだった。当初の Fishcam は当時としてはパワフルな SGI indy ワークステーションに SGI indycam が付属したものが使われていた。1994年このワークステーションは 640 x 480 ピクセルの画像を作成し、読み込んでテキストを重ねてウェブに投稿するのに20秒近くかかっていた。

モントゥリによれば、1994年から1996年までのピーク時にはこのカメラには1日に約100,000の来訪者数があったという。インターネットにアクセスできる家庭は世界に数百万程度しかなかった時代のことだ。

「人々がインターネットを介したライブビデオというものを見る機会はない時代でした」。訪問者が新しい機能を提案できるように当初のページにはフィードバックセクションが設けられていて、直接モントゥリとコンタクトを取ることができた。更に人気になったためモントゥリはブラウザに Fisham へのショートカットキーを設定した。当時 Netscape Navigator で CTRL + ALT + F を押せば Fishcam へ移動することができた。

水槽それ自体は普通の水槽だが何度か変更されている。1995年 Netscape Navigator が公開された頃、彼は水槽を350ガロンのものに拡大している。ネットスケープを設立したエンジニア、ルー・モントゥリがオフィスの真ん中で水着になって、インターネットを通じたライブフィードの実験に使っていた350ガロンサイズの水槽の前でスキューバダイビングの準備をしている。このシーンほど1996年にシリコンバレーに訪れたドットコム・ブームを象徴しているものはないだろう。

2009年には更に大きなアップグレードが行われ、モントゥリは Zetta の本社に600ガロンの水槽を設置した。これが今私たちが見ることができるものである。

モントゥリが今これを動かしているのは殆どはノスタルジーのためだという。「そして私が水槽を持っていることは、インターネットの発展に関わった名声を享受することかもしれませんね」

0 件のコメント:

コメントを投稿