The economics of why English clubs twice broke the transfer record for goalkeepers#LFC #CFC https://t.co/BVV2Cz9f6F pic.twitter.com/BjkWsG1b1G— The Conversation (@ConversationUK) August 21, 2018
イングランドのクラブはこの夏の移籍期間でゴールキーパーの移籍金の記録を2回破ることになった
The Conversation
Simon Chadwick & Chris Brady
August 20, 2018
先週、マンチェスター・シティに所属するベルギー代表のスター選手、ケヴィン・デ・ブルイネが負傷して戦線から離脱したことは、これ以上ないくらい悪いタイミングで起こったことだった。欧州フットボールのシーズンはちょうど始まったところで、シティはその瞬間に最高の選手の1人を失うことになってしまった。既に評論家たちからは、デ・ブルイネの離脱はシティにとって戦力的な綻(ほころ)びになりかねないという見方も出ている。
普通に考えれば、デ・ブルイネを失ったシティは適切な代わりの選手を探して連れてくることになる。しかし、マンチェスター・シティにとって問題なのは、イングランドのこの夏の移籍期間が8月9日に終了してしまっていることだ。監督のペップ・グアルディオラが外から選手を補強することができるようになるには、少なくとも1月まで待たなければならない。
これが去年の同時期の話なら、8月の終わりまで移籍市場が開いていたのでシティは新しい選手を獲得することができた。2017年の9月にイングランド・プレミアリーグのクラブは、半狂乱になる移籍市場の最後の瞬間がシーズンを不安定化させることを懸念して、移籍期間を前倒しすることを投票で決定したのだった。
欧州フットボールで選手の移籍が可能な期間について最初に制限が導入されたのは2002-2003シーズンが始まるときで、FIFA(国際サッカー連盟)や欧州委員会も巻き込んだ協議の末のことだった。皮肉な話を付け加えるなら、当初、移籍による不安定化の懸念を引き合いに出しただけでなく、日和見主義の代理人たちがクラブを利用していることを危惧して規制の導入を主導したのは英国人たちであった。
移籍期間が導入されても、英国ではこれが機能するかどうか半信半疑に捉えられていた。こうした疑念が、今になってイングランドのクラブが独自に夏の移籍期間を大幅に切り詰める決断をした理由を説明している。
一見したところ、移籍期間が短くなったことは大きな影響を与えたように見える。全体として見ると、イングランドのクラブは移籍市場に大金を費やすことはなく、移籍市場が閉じる瞬間が近づいても熱狂するような動きを見せなかった。更に、一部のクラブは選手補強に一過性の方法を採用せず、抑制的で先見性を持ったやり方を示したようだった。
短くなった移籍期間への適応
結果を見ると、いくつかのクラブは意思決定と才能のある選手の獲得について新しい移籍期間に適応できたことを示している。活動上の重要な局面を最後の瞬間に残すのではなく前もって考えるようになり、パニック・バイと呼ばれる無思慮な選手獲得をすることがなくなった。
リバプールFCはその1つの例だろう。同クラブは明確にロリス・カリウスに代わる最高レベルのゴールキーパーを必要としていた。そして、昨シーズンイタリアのASローマで素晴らしいシーズンを過ごしたブラジル代表のゴールキーパー、アリソンの獲得に動いたのだった。
しかし、ゴールキーパーの移籍時に支払われる金額として世界記録となる6500万ポンドについては懸念もあった。リバプールはまさしくこの選手を必要としていたため、アリソンについては「個別価値」の取引であるとして知られるようになった。「個別価値」とは特定の買い手の明確な必要性によって付けられる特別な価値を意味している。
移籍市場の時間的制約によってこの個別価値が引き上げられることになった。オークションで一般的に誰もが価値について同意する「共通価値」とは異なり、買い手側が熱望することで単純に売り手側の交渉の立場が強くなったことで、アリソンとリバプールのケースでは結果的に大きな金額が動くことになった。このアリソンのケースは数少ない優秀なゴールキーパーの「共通価値」の高騰を引き起こし、チェルシーFCはそのわずか数週間後にスペインからケパ・アリサバラガを7200万ポンドを支払って契約し、ゴールキーパーの移籍に於ける最高額を更新したのだった。
ここで「勝者の呪い」と呼ばれるまた別な経済理論が発動することになる。典型的には、共通価値で決まるオークションに於いて、その資産について完全な情報が入手できない場合に、往々にして過剰な金額で入札して落札して(勝者になって)しまうことを「勝者の呪い」と呼ぶ。オークションで、価値が確定不能な資産に対して他の多くの人と競り合う中で入札する場合、この展開に没頭してしまい、高額で入札してしまうのはよくあることである。実際、リバプールとチェルシーはそれぞれ新しいゴールキーパーに法外な金額を支払ったことで、勝者ではなく敗者になる可能性もある。
競争力への不利益
移籍期間を前倒ししたことは、イングランドのクラブは自分の顔に腹を立てて自分の鼻を切り落としたようなものだとも言われる。例えばFCバルセロナのようなチームはまだ市場が開いており、選手補強をすることができる(スペインの移籍市場は8月31日まで開いている)。イングランドのチームは新しく選手補強をすることができない。しかもイングランドのクラブはまだ選手を国外のクラブに手放すことは出来るため、マンチェスター・ユナイテッドやトッテナム・ホットスパーのようなチームは、この8月をポール・ポグバやクリスチャン・エリクセン等についての国外からの接触を跳ね除けながら過ごさなければならなくなっていると伝えられている。
長期的に見て、このことはイングランドのクラブが適応するか悩まされ続けるかが避けられないものになる。自分たちで決めた市場の制約に再度向き合って、この規定についての意思決定を進化させない限り、毎年夏に最高のタレントを失うリスクを負うことになってしまう。この危険性は個々のクラブだけが負うものではなく、最終的にリーグ自体の競争力を削ぐ可能性がある。
イングランド・プレミアリーグは欧州各国のライバルリーグに対して、全体で移籍市場とその期間について統一されたアプローチを設定することが最善の策であることを説得しなければならないかもしれない。おそらく移籍期間自体の必要性まで再検討されるだろう。もしかすると更に革新的な解決策が必要なのかもしれない。今年については、マンチェスター・シティを始めとするイングランドの各クラブは、次の移籍市場が開く1月まで平穏無事に無傷で過ごせることを祈り続けることになる。
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