2018年5月10日木曜日

アヘド・タミミはパレスチナの戦う若い世代の象徴


アムネスティ・インターナショナルは16歳で逮捕されたアヘドを「パレスチナのローザ・パークス」と呼んだ。しかし、イスラエル軍による占領への抵抗は犠牲を伴っている。


Sabrina Faramarzi
MAY 9 2018

2017年12月15日、パレスチナの少女が彼女の家の前で2人のイスラエル兵を平手打ちし、蹴りを入れている動画が世界中に広まった。「世界に響いた平手打ち」と称された動画に登場した少女、現在17歳のアヘド・タミミはその後この事件により逮捕され、世界に論争を巻き起こし、イスラエルによるパレスチナの未成年者の扱いに注目を集めさせることになった。

アヘドがイスラエル国防軍(IDF)の兵士を攻撃した様子が撮影される少し前、彼女の15歳の従兄弟、モハメド・タミミがゴムでコーティングされた金属弾で頭を狙撃されていた。(イスラエル当局はモハメドは銃撃される前に暴動に参加していたとイスラエルのタイム紙に報道官を通して反論している)。アヘドは後に裁判で、動画に映っている兵士は従兄弟を銃撃した兵士と同一人物であると証言した。「従兄弟を撃った兵士が今度は私の家の前に立っているのを見ました。私は黙っていられず、あのような反応をしました」と彼女は話している。

アムネスティ・インターナショナルとアル・ジャジーラからは「パレスチナのローザ・パークス」と称された17歳のアヘドは抵抗の象徴となり、反抗するパレスチナの若い世代の新しい顔となった。注目を集めた彼女の逮捕は抗議運動を呼び起こし、48,000の人々が彼女を解放するための請願に署名を行った。他の11の罪と同時に重度の暴行罪に問われた彼女は、3月21日に司法取引を受け入れ、8ヶ月の自由刑と5,000シェケル(1,400ドル)の罰金刑を言い渡された。

アヘドと彼女の支持者たちは東エルサレム、ガザ地区、ヨルダン川西岸地区での違法な領土占領について国際社会からイスラエルに対し圧力をかけさせる方法を模索している。アヘドはヨルダン川西岸地区で育った。2010年のユニセフの報告によれば、アヘドのように占領地域で育つ子供たちは、困窮、人権侵害、暴力、虐待を経験する。彼女は占領下で育ち、その中でソーシャルメディアのようなツールを使って自分たちの苦境を世界に訴え続けているパレスチナの若年世代を代表する存在である。アヘドは裁判で司法取引による判決が言い渡された後に彼女自身の動機を説明している。彼女は「占領に正義はありません」と述べたと伝えられている(ジャーナリストは法廷に入ることを許されなかった)。「そして、この法廷そのものが違法なのです」

アヘドは17歳になったばかりだが、彼女は既に何年も活動を続けている。2012年には彼女の兄弟を逮捕しようとしたイスラエル兵の前に立ちはだかる姿が撮影されている。アヘドは抗議運動でよく知られた一族の出身で、パレスチナ最年少のジャーナリストと呼ばれるジャンナ・ジハードは彼女の従姉妹にあたる。彼女の両親、バッセムとナリマンも有名な草の根運動家で、イスラエルによるヨルダン川西岸地区での居留地建設に対する抗議運動を何度も組織している。タミミ一家は抗議運動が頻繁に行われていることで知られるナビ・サレ村に住んでおり、アヘドは7歳の時からこの運動に参加している。

アヘドは現在、残り4ヶ月分の自由刑を消化するために収監されている(最初の4ヶ月分は裁判前の勾留期間で既に消化している)。アムネスティ・インターナショナルとヒューマン・ライツ・ウォッチを含む人権監視団体は、彼女の判決を例にパレスチナの活動家、特に少年少女たちに対するイスラエルの扱いには重大な人権侵害の疑いがあることを指摘している。イスラエルの非営利人権組織ベツェレムによれば、イスラエルの軍事法廷の有罪率は100%に近く、特に少年少女たちの場合は弁護士への面会がしばしば拒否され、罪を認めて司法取引に応じるよう圧力がかけられるという。2018年2月時点で356人のパレスチナ人の未成年者がイスラエル当局に拘束されている。

「彼女は一例に過ぎません」とアヘドの弁護士ギャビー・ラスキーは語る。「動画が世界に拡散されたことで、イスラエル当局がアヘドを長期間拘束したいと考えたことは明らかです。彼らは彼女を侮辱し、若い世代にアヘドのような行動をすると何が起こるのかを見せつけようとしているのです」。これに対しイスラエル当局側は、判決を下す際にアヘドの年齢も考慮されていると話している。

「不幸なことに、ここ数年多くの未成年者、時にはかなり若い子供たちまでが、テロ行為等の攻撃的な暴動に巻き込まれています」とイスラエル軍の広報担当者はアヘドの判決後にNBCにコメントしている。「法律が未成年者に適用される場合は年齢が考慮されます」

しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチのビル・ファン・エスフェルトはアヘドのケースは国際法に抵触していると断じている。「国際法の基本的な理念として子供に対する扱いは『子供の最大限の利益になるように』とされています」とファン・エスフェルトは本誌Broadlyに話してくれた。「アヘドや他のパレスチナの子供たちは、この基本的な理念に全くそぐわない形で扱われています」

アヘドの裁判に先立ち、父親のバッセムは彼女に無罪判決が下される見込みについては悲観的だった。「(私は)楽観的な期待はしていません。軍事法廷はイスラエルによる占領軍の一部なのですから」という彼のコメントがガーディアンによって伝えられていた。

他のパレスチナの活動家の場合と比べて、アヘドの裁判は前例の無い注目を集めた。「私が過去に担当した何人かの人たちはアヘドのケースよりもずっと酷い状況で起訴されていました。それでも今回と同じような注目を集めることはありませんでした」とラスキーは言う。「イスラエル当局からも国際社会からもです」

ある面では、アヘドの年齢と性別のお陰で注目が集まったと言える。よく話題に上がるパレスチナの人権活動家の典型は成人男性であり、彼女がそれに嵌っていなかったからだ。しかし、アヘドが求めるものは特別なものではなく、占領地の多くの人々に共通したものである。「私はすべての人にデモに参加して欲しいと願っています、それだけが目的を達するための手段なのですから」とアヘドは母親のナリマンを通じてコメントした。「私たちの強さは不滅のものです。そして私は世界がパレスチナの自由のために結束して欲しいと願っています」

収監されていてもアヘドの活動はパレスチナのイスラエルによる占領地では注目を集めている。「アヘドのケースで重要なことの1つは、占領の問題をイスラエルの人たちのお茶の間の会話にまで押し戻すことができたことです」とラスキーは指摘する。彼女はアヘドのケースがイスラエルによる占領地での人権侵害行為に注目を集める助けになると信じている。ユダヤ系アメリカ人のコメディアン、サラ・シルバーマンが2月にアヘドを支持するツイートをした際の反応に見られるように、状況は二極に分断されている。「ユダヤ/イスラエルの政府による間違いに対しては、ユダヤ人であっても、ユダヤ人だからこそ、立ち上がらなければならない」というシルバーマンのツイートに対して、糾弾と賞賛のコメントがほぼ半々に付けられている。


現在アヘドは収監されているが、パレスチナの人々は彼女が解放された後に起きることに大きな期待を寄せている。「アヘドはイスラエル人の支配に対する抵抗運動をこれから何年も率いることになる多くの若い女性のうちの1人です」と彼女の父、バッセムは彼女の裁判の間に記している。「彼女は今、逮捕されたことによって脚光を浴びていることよりも、本当の意味で変化を起こすことに興味を持っています。今の状況で私と私の世代の者たちの重要な務めは、彼女を支え、道を切り拓くことです」

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