2019年7月18日木曜日

反中絶派が目指す「胎児保護区」の創設


複数の地方都市で中絶禁止条例が制定された、だがそれに強制力はない。


VICE
Marie Solis
Jul 17 2019

今週、テキサス北部の小さな市が中絶を禁じる条例を制定し、テキサス州でこうした条例を制定した2番目の自治体となった。もっとも、この町に病院はないのだが。その市、ミネラル・ウェルズの市長は、6月に同様の条例を全員が男性の議会によって制定した近隣の市ワスコムに触発されたと話している。ワスコムの議員たちはこの条例によってワスコムを「胎児のための保護区(サンクチュアリ)」にするのだと言い、正式に認可されていない居住者を連邦移民局から保護するために使われた言い回しをなぞって見せたのだった。

ワスコムの条例では、他の人が中絶をすることを手助けすることや緊急避妊薬の販売も禁じているが、強姦、近親相姦、妊婦の命に危険が及ぶ場合は除外されている。ミネラル・ウェルズの市長クリストファー・ペリコンは地元の放送局ABCに対して、ワスコムの条例を踏襲したいが、例外部分を取り除きたいと考えていることを表明した。

ペリコンはワスコムの条例について知った時の友人との会話を参照して「私は『信じられないくらい素晴らしいことだ』と思いました」と放送局のインタビューで話している(ペリコンの事務所はVICEからのコメント要請には応えてくれなかった)。中絶の禁止とそれを提供する医療の犯罪化を提案した条例は、火曜日(16日)の夜にミネラル・ウェルズの議会で採決が行われ5対2で可決されている。

ロー対ウェイド事件の判決は今だに効力があり、ワスコムの条例のようなものは強制力を持ち得ない。しかし、3月以来、ニューメキシコ、ノースカロライナ、ユタのような保守派が優勢な州では州レベルでの中絶禁止法が長い法廷闘争に縛られているのを尻目に、より簡単に「勝利」を得られる方法として市区町村レベルで条例を制定する動きが広まっている。こうした条例は法的に無力なものかもしれないが、中絶の権利を訴えるプロチョイス活動家は少なくとも「中絶医療にアクセスできるかどうかを人々に誤解させる」という意味では効果があると言う。

「どの法律が有効なのか考える人は多くありませんから、こうした条例は混乱を引き起こしますし、威嚇にもなります」と活動団体 NARAL Pro-Choice Texas を主導するエイミー・アランバイドは話している。「それが彼らの狙いなのです」

テキサス州で中絶禁止を推し進める反中絶団体はこの主張を否定していない。反中絶団体 Texas Right to Life の法律顧問であるレベッカ・パーマは、同団体が州内の市議会に対し市民が中絶処置を求めることを諦めさせる手段として、反中絶条例を推進するように奨励している。

Texas Right to Life は1つの反中絶関連法案しか議決されていない最近のテキサス州議会の動静に落胆しているとパーマは話している。彼女は、テキサス州議会は2年に一度しか定例議会が開かれないため、今後1年半は市区町村レベルで反中絶を推進する機会と捉えているという。

「こうした条例は連邦法が変わるまで強制力をもたせることができないとしても、抑止力としては機能するでしょう」とパーマは言う。「今は中絶ができるけど、将来的には訴えられるようになるかもしれない、と言われるようになるわけです」

NARAL Pro-Choice Texas、Texas Equal Access Fund、Lilith Fund といった中絶の権利を主張する団体は、こうしたメッセージが広まらないように抗戦を余儀なくされている。6月にワスコムの中絶禁止条例が議会を通過した後、これらの団体は高速道路の広告掲示板を2箇所買い取って両方に「Abortion is Freedom(中絶は選択の自由)」という宣言を掲げている。この看板はワスコムの住民を needabortion.org に誘導し、そこではテキサス州とその周辺で中絶が可能な病院や、財政的な援助を行う中絶基金の紹介を行っている。

こうした団体は、保守派の新しい戦略がテキサス州全体に広がることにも備えている。プロチョイスの指導者たちは中絶禁止条例が、田舎の小都市に広がることを予想している。こうした小都市はもともと中絶可能な病院がなく、中絶したくてもアクセスが困難な地域である。(パーマは、反中絶団体 Texas Right to Life はいくつかの市区町村と中絶禁止条例を議決するよう話し合っていると述べていたが、それがどの自治体かは教えてくれなかった)

「各自治体はお互いの法令を参考にし合うものです、特に南部ではその傾向があります」と Lilith Fund を主導するアマンダ・ウィリアムスが述べている。「彼らは地域レベルでより大きな全体像と同じ戦略を取ろうとしています」

ウィリアムスは Lilith Fund と提携団体は保守派の新しい攻撃に触発されてより多くの情熱と資産を Repro Power Texas に注ぐようになっていると話している。Repro Power Texas は各都市ごとにプロチョイスの機運を構築することに特化した組織で、2017年テキサス州の都市オースティンが中絶の権利を確認する条例を議決したことに貢献している。そして、Texas Equal Access Fund の指導者カミオン・コナーは、ワスコムやミネラル・ウェルズと似たような条例を制定しそうな自治体に議員を送り込むことや、各地方で「自身の権利を知る」ためのセミナーを提供することを計画していると話している。

テキサス州外の自治体でも反中絶条例が最初に制定されていて、特に保守派が優勢な州では極端な法律を成立させようとする議員もいるため、こうした条例は他の州にも根付いていく可能性がある。ウィリアムスは、この傾向はプロチョイス団体にとって、州レベルや連邦レベルでの戦いと同様に地方自治体での活動を怠らないようにしなければならない理由になっていると言う。

「この戦略は私たちの炎に油を注ぎました」とウィリアムスは最近の条例について言う。「今の私たちには勢いがあります、これを逃さずに走り続けなければいけません」

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