2019年7月16日火曜日

アラン・チューリングが英50ポンド札の「顔」になる


これで英国の全ての紙幣が紙から重合体(ポリマー)製のものに置き換えられる。


The Verge
Jon Porter
Jul 15, 2019

現代のコンピューターの発明に至る基礎を築いたアラン・チューリングが、2021年の末に新しい英国50ポンド札の「顔」になる。現在の50ポンド札には蒸気機関の先駆者であるマシュー・ボールトンジェームズ・ワットの2人が描かれているが、チューリングは彼らに代わって紙幣に描かれることになり、5ポンド札の元首相ウィンストン・チャーチル、10ポンド札の作家ジェーン・オースチン、20ポンド札の画家ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナーに加わることになる。

チューリングと英国政府との関係には複雑なものがある。第二次世界大戦の時に彼は暗号解読チームを率いてナチスドイツの暗号であるエニグマを解読することに成功し、初のプログラム内蔵方式コンピューターである「ACE」を設計した。しかしながら戦後の1952年、彼は他の男性との「不当な行為」にあたる関係を持っていたことで有罪となり、薬物による化学的な去勢を受ける判決を下される。このことで不能になり、乳房の増大に直面した彼は1954年に自殺してしまう。2013年になって、エリザベス女王から彼に対する恩赦が発布された。

「戦中に国家に対して栄誉ある献身を見せた人物が、戦後に同性愛者であることによって迫害されたことは悲劇という以外ありません。それ故にこそ、長い時間は過ぎてしまいましたが、彼が受けるはずだった栄誉を象徴するものとして、紙幣に描かれるというのは素晴らしいことです」というコメントをイギリスのAI研究者であるデミス・ハサビスは発表している。「私たちが日々利用し、それなしでは生活ができないような技術、そうした技術はチューリングの業績抜きには存在し得ないものです」

イギリスの中央銀行であるイングランド銀行は、一般公募で推薦された989人の科学者から、227,299件の意見を参照してチューリングの採用を決定した。条件は、故人で英国の科学分野に貢献した人ということになっている。イングランド銀行の諮問委員会は候補者を12人に絞った。その中には物理学者のスティーヴン・ホーキングやコンピューター科学の先駆者であるエイダ・ラブレスチャールズ・バベッジも含まれていた。最終的な決定は、イングランド銀行の総裁であるマーク・カーニーによって下された。

この新紙幣が発行されると、英国の銀行券は紙ではない重合体(ポリマー)でできたものへの移行が完了することになる。新紙幣は耐久性が高く、偽造防止も考慮されて設計されている。また、この新紙幣の導入は、製造に動物由来の獣脂が使われていることで物議を醸している。


0 件のコメント:

コメントを投稿