2019年7月1日月曜日

アメリカは人種差別主義者と利己主義者で溢れている


数百万の Google 検索のデータを分析して国家的な心理を明らかにする。


Vox
Sean Illing
Updated Apr 12, 2018

誰もが嘘をついている」の著者であるセス・スティーブンス=ダヴィドウィッツは「 Google はデジタル自白剤」なのだと話している。「人々は、誰にも話せないこと、家族にも友人にも医者にも匿名の調査でも話せないようなことを Google には話しているのです」と彼は言う。

スティーブンス=ダヴィドウィッツは Google Trends に夢中になり、ハーバード大学で経済学の博士号を取得している。Google Trends は特定の期間における特定の地域での検索の頻度を追跡するためのツールである。

このデータの分析に5年を費やした彼は Google Trends のデータはアンケートやその他の調査方法よりも人々の考えていることについての情報をリアルタイムで得ることができると考えていた。

そして彼は正しかったことが明らかになった。

アメリカの国家意識の指標として、Google のデータは最大限に正確かつ未来を見通すことができるものだ。2016年、共和党の予備選挙が始まった頃に、専門家の見解でも世論調査でもトランプの勝利を信じる理由になるようなものはほとんどなかった。彼は退役軍人、女性、少数民族、その他無数の有権者たちを侮辱していたからだ。

だが、スティーブンス=ダヴィドウィッツは Google を調査する中で、多くの人が考えるよりも遥かにトランプについて真剣に考えるべきだという手がかりを掴んでいた。トランプが選挙運動を行っている間、人種差別的な発言やジョークを含む検索がアメリカ全土で急増していた。それは南部でだけではなく、ニューヨーク州北部、ペンシルベニア州西部、オハイオ州東部、イリノイ州の農村部、ウエストバージニア州、ミシガン州の工業地帯などでも見られた現象だった。

スティーブンス=ダヴィドウィッツは Google Trends のデータの中に人種的に偏った考えを持つ有権者の存在を見ていて、彼らはトランプの民族主義的な修辞に呼応すると考えていた。

これには更に以前に兆候が見られていた。2008年にオバマが当選した大統領選挙の時、スティーブンス=ダヴィドウィッツは、「オバマ」という文字を含む検索100件あたり1件には「KKK」か黒人を中傷する単語が含まれていたことを発見している。「 Stormfront 」のような人種差別を標榜したウェブサイトに関する検索も急増していた。

「既成の情報収集方法では触れることのできなかった暗黒と憎悪が存在しているのです」とスティーブンス=ダヴィドウィッツは話している。「こうした検索は人種差別が些細な問題である社会には調和しないものです」

人種についての話はスティーブンス=ダヴィドウィッツの研究による多くの興味深い発見の1つでしかない。彼は、ソーシャルメディア上の生活と実生活の分断についてや、公に向かって話す場合と個人的に考えることの差異についても探求している。

彼に話を聞き、彼が、Google Trends が「人類の心理について得られる最も重要なデータセット」であると考えている理由を聞いた。そして、今回の中で最も驚愕の発見だった、アメリカでは妊娠中絶ができる診療所がない地域で自己妊娠中絶の危機が起きている可能性についても話を聞いた。

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ショーン・イリング:あなたは Google はデジタル自白剤であると仰っています。それは私たちについて何を語ってくれるのでしょう?

セス・スティーブンス=ダヴィドウィッツ:人々は、誰にも話せないこと、家族にも友人にも医者にも匿名の調査でも話せないようなことを Google には話しているのです。Google に何かを告白することを快く感じているようです。一般的に言って、Google は人々が彼ら自身の見えている存在とは異なるものであることを教えてくれています。それはつまり、多くの人はそこにいる存在よりも悪意がある卑劣な存在であるということを言わなければならないでしょう。

例えば私は人種差別について多くの調査を行いましたが、人々が人種差別的な検索、特にアフリカ系アメリカ人を嘲笑するジョークについての検索をどれだけ頻繁にしているかを確認して衝撃を受けました。この隠された醜悪さは特に政治の分野で多くの人の行動を予測するのに役立ちます。


政治について話しますと、あなたは2016年の初めの時点でトランプが有力な候補者であると考えていたことを振り返っています。Google 検索で人種差別的、女性差別的な検索が急増したのを見て、何らかの兆候であると考えたということでしょうか?

そうです。私はかなり初期の段階でトランプが勝つと考えていましたが、それが純粋にデータに基づいた考えなのか、単に私が悲観的な人間だからそう考えるのか確信が持てませんでした。私はこうしたことについては常に悲観的に考えてしまうのです。


それは私も同じです。

私はデータの有無に関わらず、常に悪いことが起こることを予想しています。ですが、当時多くの人が考えていたよりもトランプが有力な候補者であると考えられるべき理由のヒントがインターネットに確実に存在していたと思います。


具体的には何を見たのでしょう?

アメリカ国内の人種差別のレベルが私が認識していたよりも極めて高かったことが最初でした。トランプが人種差別的に問題のある修辞を話し始めた時点ですぐに候補者としてお終いになると多くの人が考えていると私は考えていたのです。ですが、インターネットのデータを見るとこうした種類のものに需要があることがわかると思います。

私はかなり前から「 Stormfront 」のような白人至上主義者のサイトを研究してきました。こうしたものが広く知られる様になるずっと前からです。そして、今だに私はこの手のサイトが世間に如何に広まってしまったかということについてショックを受けています。


時代遅れのアンケート調査ではなく、こうしたものに注意を払うべきなのですね。

アンケート調査では例えば投票率を予想することはできません。みんな自分は投票に行くと言いますし、投票に行く気がないということを認める人は誰もいないからです。ですが、Google 検索のデータに基づけば予測が可能です。選挙の数週間前に投票の方法、投票する候補者、投票所の場所などが検索されていれば投票率は高くなると予想できます。

2016年の大統領選挙ではこうしたデータが極めて明確に現れていました。例えばアフリカ系アメリカ人が多く住む地域ではこうした選挙に関する検索が大幅に縮小していました。ですから、Google 検索のデータから2016年の選挙では黒人の投票率が下がることが明らかで、そのことがクリントンが事前のアンケート調査よりも振るわなかった理由の1つになっていたと思います。


このデータの政治についての有効性は明らかですが、私たちが自分たちのことを知る上でこのデータは無限に利用できそうです。あなたは本の中でこれを「人類の心理について得られる最も重要なデータセット」だと述べています。

これに本当の意味で対抗できるものは Facebook だけだと思いますが、私は Facebook のデータが Google 検索のデータよりも興味深いものとは思いません。人は Facebook ではより正直ではなくなるからです。人は本当の意味で Google には正直です。Google には他の誰にも言えないようなことを言います。誰にも尋ねられない疑問を検索して答えを求めようとしているのです。私がこの数年の間にわかったことは、どんな分野でも Google 検索のデータを見れば自分が知らなかった新しい興味深い驚くべきものを見つけることができるということです。それが、ヘイト、妊娠中絶、幼児虐待、政治的見解、妊娠検査、不安症、うつ病などどんな分野でもです。私が Google のデータに接する度に興味深いものが見つかります。


アンケート調査は依然として有用ではあるのでしょうが、検索履歴の方が人々が意見の分かれた問題や個人的な問題について考えていることの感覚を掴むにはより優れているということのように思います。

その通りですね。極めて興味深いものです。


間違いなくそうですね。

興味深いだけでなく重要なものでもあります。私がこの本に書いた研究の1つにイスラモフォビアについてのものがあります。これは実際にはイスラム恐怖症ではありません、イスラム憎悪とでも呼ぶべきようなものです。これは本質的にイスラム教徒のアメリカ人に対して恐ろしいほど暴力的な考えを持つ人々です。こうした人々は「イスラム教徒を殺せ」とか「イスラム教徒が憎い」とか「イスラム教徒は邪悪」といった言葉を検索します。こうした人々は狂気じみていて、分刻みでこうした検索語が上がったり下がったりしているのが見られます。

興味深い所は今私たちが話しているのは狂気じみた人が集まった比較的小さなグループについてであるということです。平均的なアメリカ人は「イスラム教徒を殺せ」とか「イスラム教徒が憎い」とかいう言葉を検索したりはしません。彼らは小さなグループなのですが、多くの問題を引き起こす可能性があるため重要な存在です。ヘイトクライムを犯したり、イスラム教徒を殺害しようとさえする傾向がある人たちです。

本当に重要な論題について洞察を得る事ができるという意味で重要なのです。


少し視野を広げて、Google によって明らかにされたアメリカ人の心理について広い意味で考えてみましょう。アメリカ人は何を最も恐れているでしょうか、あるいは何を最も心配しているのでしょうか?

自分の体について、というのが大きなものの1つです。Google AdWords で身体的不安についてのデータを見ると多くの人が体重を減らす方法や体を改善する方法を探し求めています。これは女性とほとんど同じくらい男性にも人気のあるトピックで、このことは通常あまり話題になることはありません。胸の外形を変えたいと考えて検索する人の20%は男性によるもので、男性の乳房を取り除く方法を求めてのものです。男性は身体的不安について普段あまり話題にすることはありませんが、極めて広く共有されているものだと考えられます。


それは興味深いですね。

私たちの文化的な先入観から考えると意外なことですよね。


人は実際に気になっていることについて基本的に不正直であるということでしょうか?ソーシャルメディアの時代では、すべての人は正義の戦士になっています。1つか2つ記事を投稿して憤慨していることや支持していることを示して、自分が「関わっている」人間であることを吹聴します。しかし、これは本当の積極的行動主義ではなく、実際の約束は何も必要とされていないのです。

良い質問ですね。私はそれについてトランプ関連の研究でいくつか調査を行いました。私は多くの人がトランプについて心配している程度を誇張していると考えています。それはある種のゲームをプレイしているのだと思います。実際に夜中に人を眠らせない要素を見てみると、冷たい汗をかいて午前3時に目を覚ますことがある理由になっているのは、経済的な懸念、健康上の疑心暗鬼、法的な恐れ、つまり基本的に自分のことで利己的な懸念である傾向があります。この事実には少し喜ばしくないところがあるように思います。

自分自身の経済や健康の状態、法的な問題などよりも、トランプが世界に対してどんなことをするのかといった世界的な懸念について心配しているというような人がいます。私はこれは誇張しているのだと思います。私たちは実際に何を気にしているのか、実際に何によって動かされているのか、実際に何によって悲しみを感じるのか、実際に何に不安を感じているのか、こうしたことについては多くの嘘が含まれていると思います。


あなたの研究における発見で最も衝撃的なものは何でしょうか?

検索の問い合わせ数の規模から考えて、今現在アメリカは自己妊娠中絶の危機の中にある可能性を非常に心配しています。自分で妊娠中絶を行う方法が頻繁に検索されていることに驚きました。こうした検索は特に病院での中絶が難しい地域に集中していて、病院で中絶することが困難な場所になればなるほど多くなります。計算してみましたが、妊娠自体認識されておらず、州の中絶数や出生率にも現れることはありません。

これは大変厄介な問題で、このことについて充分に話し合われていないと思います。しかし、データに基づけば起こっていることは明らかです。


真実だとすると恐ろしいことです。何か良いことはないでしょうか。何か嬉しくなるような発見はありませんでしたか?

私たちが不安感や自信の無さ、欲望などについて自分だけのことではないことを知るのは勇気づけられることだと思います。アルコホーリクス・アノニマスには、自分の内面を他人の外面と比べてはいけない、という標語があります。これは難しいことです、私たちは他人の内面を見ることはできないわけですから。ですが、検索データを使ってついに他人の内面を見ているのだと思います。そして、そこから示されているのは、私たちは自分自身に対してもっと寛容になるべきだということです。


私たちはもう少しオンラインで過ごす時間を減らすべきだと思いますか?

そうですね。私はみんなにもっとオンラインで時間を使って欲しいですね。そうなれば私は良いデータが得られて更に研究が進みます。


その答えをそのまま受け取りましょう。では、少なくとも Facebook のフィードから感情を動かされるようなものを受け取らないように、真剣になり過ぎないようにと言うつもりはありますか?

もちろんです。ソーシャルメディアというのはそれを現実の生活であると考えると危険なものになり得ます。そうではないですし、そのことを忘れるべきではありません。ですが、みんな私の本を買うことができます、嫉妬心を感じたらいつでもそれを読むことができて、誰でも混乱しているのだということを思い出すことができます。


手元に置いておくべきですね。

その通りです。


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