2019年5月22日水曜日

ガーディアンが環境問題を伝える言葉を変える理由


ガーディアンの内部スタイルガイドでは「気候危機」や「地球高温化」という言葉が推奨されるようになる。


The Guardian
Damian Carrington
Fri 17 May 2019

英ガーディアンは同紙における言葉遣いの指針となるスタイルガイドを更新し、世界が直面している環境問題についてより正確に表現できる単語を紹介している。

「気候変動(climate change)」の代わりに「気候緊急事態(climate emergency)」「気候危機(climate crisis)」「気候崩壊(climate breakdown)」という言葉が優先される。また、「地球温暖化(global warming)」の代わりに「地球高温化(global heating)」が推奨される。元の言葉が禁止されるわけではない。

「私たちは科学的に正確で、かつ、読者の皆さんに重要な問題を明確に伝えることを目指しています」と主任編集員のキャサリン・ヴァイナーが話している。「例えば『気候変動』という言葉は、科学者たちがそれによる人類の破滅を警戒している状況であるにも関わらず、受け身で穏やかなものに聞こえます」

「国連から英国気象庁に至るまで気候に関連する団体や科学者たちは徐々に用語を変えていて、私たちが今いる状況を表現するためにより強い言葉を使うようになっています」と彼女は話す。

国連事務総長アントニオ・グテーレスは昨年9月に「気候危機」という言葉を使い「私たちは実在の脅威に直面している」と述べている。過去にアンジェラ・メルケル、EU、ローマ法王のアドバイザーを務めた経験のある気候科学者ハンス・ヨアヒム・シェルンフーバーも同様に「気候危機」という言葉を使っている。

英国気象庁で気候調査を主導するリチャード・ベッツは、世界の気候に起こっていることを表すには「地球温暖化」よりも「地球高温化」の方がより正確だと話している。政治の世界では最近、英国議会は労働党が提出した「気候緊急事態」の宣言を支持している。

気候と野生生物の危機の大きさは、世界の科学者たちによる2つの歴史的な報告書によって明らかにされている。昨年10月には、干ばつ、洪水、極度の気温上昇、そしてそれにより何億もの人が困窮に陥る危険性を回避するために2030年までに炭素排出量を半分にしなければならないことが報告された。そして5月には、世界中の科学者たちが、野生生物の絶滅と地球上の全ての生命を支える生態系の破壊が加速しており、それにより人間社会も危機に瀕していることが報告された。

他に更新された言葉には、「生物多様性(biodiversity)」ではなく「野生生物(wildlife)」を用いる、「漁業資源(fish stocks)」の代わりに「魚類個体群(fish populations)」を用いる、「気候変動懐疑論者(climate sceptic)」ではなく「気候科学否定論者(climate science denier)」を用いるといったものが含まれている。BBCは昨年9月に、気候変動に関する報道について「あまりにも間違いが多い」という批判を受け入れ、職員に対し「議論のバランスを取るための『否定論者』は不要である」ことを通達している。

5月の初め、スウェーデンの16才、グレタ・トゥーンベリは世界を取り巻く気候の状況に関して学校をストライキすることを訴えかけた。「2019年になって、私たちはこの状況をなんと呼ぶことができるのでしょう?気候崩壊、気候危機、気候緊急事態、生態系崩壊、生態系危機、生態系緊急事態、どれでしょうか?」

ガーディアンは今回のスタイルガイドの更新に先立って、世界の炭素排出量を毎日の天気予報のページに記載するようにしている。「大気中の二酸化炭素濃度が劇的に上昇しています。その計測値を天気予報のページに掲載することは、人間の活動が気候に与えている影響を象徴するものです」とヴァイナーが4月に述べている。「気候危機はもはや未来の問題ではないことを認識する必要があります。私たちは今、毎日の問題としてこれに取り組まなければならないのです」

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