2019年5月2日木曜日

プロテインサプリの過剰摂取は害になりうる


マウスを使った実験によってプロテイン・サプリメントは摂り過ぎるべきでないことが示されている。


BUSINESS INSIDER
RACHEL HOSIE
2 MAY 2019

フィットネスの流行によってプロテインサプリ業界が急成長している。棒状のものやシェイカーを使う(BCAA:分岐鎖アミノ酸)から、チョコレートまで、市場にはトレーニング後にプロテインを摂取するための製品が数限りなく存在している。

しかし、マウスを使った新しい実験の結果によるとプロテインの過剰な摂取は最終的に良いものではなく害になり得ることを示唆している。シドニー大学の研究者たちは、プロテインは筋肉を形成するのに有効だが、多くを摂取しすぎると寿命を縮め、気分を悪化させ、体重の増加も引き起こす可能性があることを明らかにしている。

この研究は人間に対して行われたものではないが、結論としてこうしたプロテイン製品が必ずしも体に悪いということではなく、プロテインは筋肉を補修するための基本要素であるが、多様なものから摂取する必要があり、1種類のものからの摂取に頼りすぎるべきではないとしている。

「高タンパク質で低炭水化物というのが特に生殖機能のために有益であることが示されていますが、中高年期の健康には有害な影響があり、寿命の短縮を引き起こす可能性があります」と、この研究の主筆者であるサマンサ・ソロン=ビエットが述べている。「この研究ではアミノ酸のバランスが重要であることが示されています。アミノ酸のバランスを良い状態にするためには、多様なソースからプロテインを摂取することが最も良い方法です」


BCCA(分岐鎖アミノ酸)とは何か?


人体で使われるアミノ酸は20種類あり、そのうちの9種類が必要不可欠な必須アミノ酸である。仮に食生活の中にその9種類が十分に含まれていなければ、他の11種類で体が作られることになる。

BCCAはタンパク質を含んだ食べ物、赤身の肉、鶏肉、魚肉、卵、豆類、ナッツなどの中に含まれる必須アミノ酸のことだ。BCCAは、9種類の必須アミノ酸のうちロイシン、イソロイシン、バリンの3種類で形成されている。これらのアミノ酸は筋肉の中で分解されるが、他の必須アミノ酸は基本的に肝臓で分解される。

乳清プロテインパウダーは通常BCAAを多く含んでいるが、ジムでトレーニングする人はBCAAの粉を水に加える形で別に摂取することも多い。トレーニング中の人が飲んでいる半透明の液体がおそらくこれである。プロテインパウダーとは違い、BCAAは炭水化物や脂肪を含んでいない。しかし、実際のカロリーは大きくなる傾向にある。

1日中BCAAを摂取すれば筋肉を成長させて、ワークアウトの効果を上げ、回復を早められると考えたくなるが、フィットネス業界ではその必要はないと考えられている。フィットネス関連会社の中にはBCAAに含まれる3種類だけではなく、必須アミノ酸9種類を全てを含んだ製品EAA(essential amino acid)を製品化している会社もある。

「BCAAとEAAの最大の違いは、BCAAは4:1:1の比率で3種類の必須アミノ酸が含まれていますが、EAAは人間の体で作ることができない9種類全ての必須アミノ酸の優れたブレンドになっているということです」とマイプロテイン社の新製品開発担当者であるダウィド・リズチェクが話している。


今回の研究でわかったことは?


研究者たちは実験で、BCAAとトリプトファンのような他の必須アミノ酸がマウスの健康状態や体組成に与える影響を調査した。一部には通常の生活に必要なBCAAの2倍の量を与え、他の一部には通常量、他には半量、他には5分の1の量を与えるという形で実験を行った。

BCAAを最も多く与えられたマウスは、食事の摂取量が置くなって肥満になり寿命が短くなった。さらに、BCAAを多く摂るとトリプトファンが脳に送られるのが遮断されることが明らかにされた。トリプトファンには気分を高める効果がある。

「BCAAをサプリとして補充すればBCAAの血中濃度が上がり、それがトリプトファンを脳に送る働きを妨げるのです」と今回の研究論文の著者の1人であるスティーブン・シンプソンは説明している。「トリプトファンは神経伝達物質であるセロトニンの唯一の前駆物質です。セロトニンは気分を良くして、睡眠を促進することから『幸せの化学物質』と呼ばれるものです。しかしセロトニンにはそれ以上の役割があり、更に問題があります」と彼は言う。

「脳内のセロトニンの量が足りなくなると、強力に食欲を増進する信号が出ます。BCAAの過剰摂取によってセロトニンの不足が引き起こされたマウスには強烈な過剰反応によって極度の肥満に陥り寿命も短くなったのです」


このことが私たちに意味することは?


「The Low-Fad Diet(拘り過ぎないダイエット)」という本の著者で、登録栄養士のジョー・トラヴァースは、マウスを使って行われたこの研究をそのまま人間に当てはめることはできないことをまず最初に指摘している。

「ですが、それぞれの栄養素の役割の重要性とそのバランスが重要であることが明らかにされています」と彼女は話してくれた。トラヴァースはバランスの良い食生活を最優先にしてするべきだと強調している。「プロテインだけではなく、広い範囲の種類の食べ物を摂取することが重要です」

「例えば、炭水化物と同意にプロテインを摂取すると他のアミノ酸の筋肉への吸収を刺激してトリプトファンが滞りなく脳に届き、より多くのセロトニンを生産することができるようになります。こうしたことは多様な食べ物を摂取する食生活と適切なバランスがとれていることで起きるのだと思います。1食の半分は野菜、4分の1は炭水化物、4分の1はタンパク質、これで必要とするすべてのものが摂れて、多く必要としないものは多すぎない、だいたいその可能性が高いのです」

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