2019年5月8日水曜日

白人のアスリートたちはなぜトランプの誤りを理解しないのか?


招待を受けてホワイトハウスを訪問するレッドソックスの選手たちは、有色人種のチームメイトに招待を受ける理由を説明する必要がある。


The Atlantic
Jemele Hill
MAY 7, 2019

ストン・レッドソックスの選手たちがドナルド・トランプ大統領のホワイトハウスを訪問することについて、これまでのところ話題の中心になっているのは有色人種の選手やスタッフたちがこのイベントを回避しようとしていることだ。プエルトリコ出身のアレックス・コーラ監督は、2017年ハリケーン・マリアの被害を受けたプエルトリコに対するトランプ政権の許しがたい扱いを批判し、彼の故郷は依然として困難な状況にあることを理由にこの訪問を取りやめると話している。

「不幸なことに私たちはいまだに困難な中にあり戦いを続けています」とコーラは声明で述べている。「ハリケーン・マリアに襲われてから約1年半になりますが、基本的な生活必需品が行き渡っていない人もいますし、停電が続き多くの家や学校は酷い状態のままです。わたしは機会のある毎にこの話をしています。プエルトリコの人々を忘れてはいませんし、そして私がホワイトハウス訪問を欠席する理由も同じです。このような状況でホワイトハウスでの祝勝会を心地よく感じることはできません」

レッドソックスのヒスパニック系及びアフリカ系の選手たちの大半が今回の訪問を取りやめようとしている。その中には投手のデビッド・プライスや2018年のアメリカンリーグでMVPに輝いたムーキー・ベッツも含まれている。この全員が欠席する理由を説明しているわけではないが、メキシコ生まれのリリーフ投手エクトル・ベラスケスは率直に話している。「よくご存知の通り大統領はメキシコについて多くの発言をしています、それが私が欠席する理由です」と彼はMassLiveに話している。「メキシコには私を応援してくれる人がたくさんいます。そして私はメキシコから来たのです。その場所の人たちの気分を害するようなことはしたくありません」

黒人とヒスパニック系の選手とスタッフたちはトランプのホワイトハウスへ行かない理由の説明を求められている。しかし、本当の疑問は別にある。なぜ多くのレッドソックスの白人の選手たちは、彼らの有色人種のチームメイトを支持しない選択をするのだろう?


年6月に同僚のヨニ・アッペルバウムがスポーツチームがホワイトハウスを訪問することの歴史について記事を書いている。1865年に北軍の兵士たちがホワイトハウスの庭園で野球をプレーしたのが始まりだった。彼らが愛するゲームに敬意を表するのと、南北戦争で分裂した国家に統一されたメッセージを送るためだった。

しかし、アンドリュー・ジョンソン大統領は実際にはこの一体感に賛同してはいなかった。その当時のタブロイド紙はジョンソンがミズーリ州知事に対して「ここは白人のための国だ。神にかけて私が大統領である限り政府は白人のためにある」と話したことを伝えている。

この154年前の対立的な声明が自己実現する予言であったことが明らかになっている。ジョンソンは特定の人々が排除されたと感じるような政府を望んでいた。そしてトランプの下でジョンソンの願いは叶ったのだった。

トランプはジョンソンほど公に自身の見解を話してはいないが、現在の大統領としての行動、政策、主流から外れた市民に対する扱いが、彼の根本的な信条について多くを表している。トランプはチャンピオンチームがホワイトハウスを訪問する伝統を、有色人種の選手たちにとっては心地よくない経験に変えてしまった。彼らは白人のチームメイト、オーナー、スタッフ、ファンのために自身のアイデンティティを押し殺さなければならないことがしばしばある。

コメンテーターたちはホワイトハウス訪問は政治には無関係であり劇的なものにするべきではないと述べている。しかし、トランプ政権下では単純にそうすることは難しい。

最近、トランプはNCAAのチャンピオンになったベイラー大学の女子バスケットチームであるベアーズをホワイトハウスに迎えた。ベアーズはトランプが大統領になってから初めて個人的に祝勝会に招待した女子チームだった。ベアーズのコーチで白人であるキム・マルキーが公にホワイトハウスが招待してくれるように働きかけていたことが実現の助けになった。トランプは彼の招待が受け入れられない場合には不機嫌になる可能性を既に示している。2017年には選手の中に自分に批判的な人がいることを理由に、トランプはTwitterでNBAを制したゴールデンステート・ウォリアーズへの招待を取り消している。選手の多くはホワイトハウスの招待に興味を持っていないことが明らかにされていた。

ベアーズがホワイトハウスを訪れた時の写真がソーシャルメディア上に出回った時、選手たちが楽しそうに見えないということがインターネット上では揶揄されていた。有色人種だけでなく女性に対して、特に女性のアスリートを侮辱したことがある人物の前に立たされる選手たちの気持ちをマルキーが考えていたかどうかは現時点では外からではわからない。

NCAA女子バスケットボールを2017年に制したサウスカロライナ大学のゲームコックスには数ヶ月間招待が届かなかった。この遅延は「多くを語るもの」だと有色人種のコーチであるドーン・ステーリーは話している。最終的には招待が届いたが、チームは断っている。トランプはベアーズのコーチであるマルキーの申し出を無視しただろうか?マルキーは、トランプが連邦準備制度の理事にしようと支持したスティーブン・ムーアが女性のスポーツへの参加を嘲笑したことを考慮していただろうか?

マルキーはベイラー大学のスポーツ情報学部を通して、チームのホワイトハウス訪問に関するコメントは控えると発表している。しかし、彼女は先月のAssociated Pressでホワイトハウスに行ったことは「私にとっては政治的な問題ではありません」と述べている。

だが、彼女のチームの選手たちの個人的な問題としてはどうだというのだろう?マルキーがホワイトハウス訪問について少なくとも選手たちと真摯に対話をしたというのでなければ、彼女は認識力の欠如と特権をひけらかしたことに責任がある。


い州(共和党支持の強い州)のスポーツチームの全てのコーチが、自分の選手たちをトランプと面会させて苦笑いさせようとするわけではない。サウスカロライナ州にあるクレムゾン大学のフットボールチーム、タイガースを率いるダボ・スウィーニーは選手たちにホワイトハウス訪問を強制したことは一度もないという。タイガースは1月にこの3年間で2度目の全米王者のタイトルを獲得しているが、45人のチームのメンバーはホワイトハウス訪問はしないことを選択した。

バラク・オバマが大統領のときも多くのアスリートがホワイトハウスを訪問しない選択をしているが、少し印象が異なる。当時の選択は大統領のキャラクターに関するものというよりは、アスリート個人の信念に根ざしたものに見える。2012年にNHLボストン・ブルーインズのゴールキーパー、ティム・トーマスがホワイトハウス訪問を取りやめているが、これについて彼は声明で「連邦政府が制御不能に巨大化し、人々の権利、自由、財産を脅かしている」ことが理由だと述べている。2013年にはNFLボルチモア・レイブンズのオフェンスライン、マット・バークがホワイトハウス訪問をしない選択をしている。彼は敬虔なカトリックであり、オバマが人工妊娠中絶を支持する組織であるプランド・ペアレントフッドで演説したことが理由になっていた。

文脈を考えればトランプのヘイト的な修辞と政策はそれほど簡単には忘れることができないということだ。チャンピオンになるようなアスリートを含め、自身の行動がどれほど人々を傷つけるものであり得たかを、実際に傷ついた人に無視するように強いることは礼を失している。

アレックス・コーラは、(アメリカ領である)プエルトリコではハリケーン・マリアの被害で3,000人の人々が苦しんでいることを知っているために、大統領と笑顔で握手することは出来ない。これは単に政府の被害への対応が不十分だったというだけのことではない。トランプはプエルトリコの死者数について嘘を述べ、Twitterではプエルトリコの指導者たちを「あまりにも無能」だと言い放ち、彼らは「アメリカから金を引き出したがっている」だけだと言い、プエルトリコを自分の国の一部だとは考えていない可能性も示唆した。そして、ある政府高官はワシントン・ポストに対し大統領は「これ以上1ドルもプエルトリコには出したくないと考えている」と語った。これは政策と呼べるものではなく卑しさの現れだ。プエルトリコの人々を見下し軽蔑する態度を示している。

トランプの移民や「メキシコ諸国」とそこに住む市民たちに対する偏屈で失礼な発言はよく知られている。エクトル・ベラスケスがホワイトハウスでトランプと一緒に笑顔で記念写真に収まることは彼にとっては屈辱なはずで、わざわざそうしなくても良いだろう。

チームスポーツでは、個人よりもチームを最優先に考えることを嫌というほど説かれる。団結することが最重要事項だと考えられているが、この状況で団結することは難しい。有色人種の選手たちは、白人のチームメイトが自分たちのことをどう考えているのか疑問に思うことがあるはずだ。その考えが月曜日にデビッド・プライスの頭をよぎったのかもしれない。



@デビッド・プライス
このツイートは38,000人より多くの人が読むべきだと思うよ…
@スティーブ・バックリー
アレックス・コーラ監督は大統領に面会しには行かないことを認めました。なので、出かけるのは基本的に「ホワイト」ソックスということになります。

The Boston Globeでプライスはこのツイートに関して「もっと多くの人が見る必要があると思った無神経なツイート」を拡散させただけだと語った。しかし、この「無神経」なツイートは実際の結果を言い当てている。

コーラや他のレッドソックスの選手たちがホワイトハウスに行かない理由に焦点を合わせるのはやめにして、彼らのチームメイトたちに、仲間が属するコミュニティを疎外して傷つける大統領と居合わせることに満足する理由を尋ねるべきだろう。

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