2018年12月13日木曜日

男女格差を是正することは女性のためだけではない


より平等な社会は男性にとっても利益がある


The Conversation
Kyle Murray
December 13, 2018

イギリスは今男女の収入格差について話し合いの渦中にある。そしてそれは当然そうあるべきだ。個々人の印象はともかく、同じ職場の男女の給与に平均9.7%の差があることは女性に対する構造的な不利が示唆されている。

しかし、給与格差についての議論はあまり頻繁には語られない別な問題も浮かび上がらせている。現代社会のこうした構造は男性に対しても良くない影響を与えているとうものだ。

最近報道されているのは新しく発見された「通勤の男女差」というもので、女性の職場への移動時間は男性のそれよりも圧倒的に短いという。多くの女性の場合は15分程度で男性は1時間を超える。

この件に関する報道ではもっぱら女性についての不利益であることだけが紹介されていた。育児義務に関する性別の不公平な期待感が女性をより自宅から近い職場に制限しているという。独立系シンクタンクの財政問題研究会(Institute for Fiscal Studies)はまだ関連性を確認していないとしているが、この通勤時間の差は給与格差の一因になっている可能性がある。

しかし、この男女の通勤時間の差が男性に及ぼす影響についての議論は殆ど存在していなかった。イギリス国家統計局の2014年の報告によると、通勤時間が1分増える毎にその人の精神衛生は悪化していくとされている。この精神衛生の状態の差は通勤時間が約1時間の人と15分以下の人との間で最も差が顕著になった。これは男性と女性の通勤時間の差とほぼ重なっている。これに加えて通勤時間は家族との責任を果たすことに専念するための自由な時間を削ることにもなり、より長い通勤時間は男性に明らかな悪影響を与えている。


父親の育児休暇の利点


こうしたことによって、私たちは社会の中で平等についてどのように話し合っていけば良いのかというより広範な問題が強調されることになる。「女性と平等委員会」の議員たちは今年初めに発表した報告書の中で、男性で育児休暇を利用したのは利用が可能だった人のうちわずか1%だけだったという統計を元にして父親の育児休暇制度の見直しを求めている。一方で、育児休暇をより積極的に利用したいという声は多い。

この不一致は様々な要因によるものだ。父親が休暇を取る余裕がない場合や、固定観念や職場の雰囲気で男性が育児休暇を申請できないかするのが気まずい場合もある。父親たちは親としての他の活動、例えば学校や保育園、医療サービス機関に行くことなどにも同様の疎外感や卑下を感じることがあると報告されている。この点を証明するかのように、先程挙げた委員会による報告書それ自体が父親を「第二の親(second parents)」と表現している。

これはつまり現状では男性が参加不能になっているということだ。研究によると父親が育児についてより大きな責任を負うことの利点は広範囲に及び、子供の成長における利点に留まらず父親自身の精神衛生を改善し満足感を充たす効果もある。更に連鎖的に父親の身体的な健康にも影響を与え、偶発的な死や突然死、入院、薬物乱用の可能性が下がる。

父親が子育てに積極的に関わることは父親と子供の健康を改善するのだが、父親の育児休暇の利用率の低さを見ればこの重要な研究結果はほとんど無視されていることになる。そうではなく男女の給与格差を解決するために父親の育児休暇関連の問題に取り組まなければならないという主張が主流になっている。これが委員会に報告書が要請された理由でもある。

確かに、育児休暇の問題に取り組むことが給与格差を解決することに役立つなら行動するべきだ。だが、それは私たちが父親の育児休暇の利用率の低さを問題にするべき唯一の理由ではないし、最大の理由でもない。

私自身がこれまでも主張してきたように、父親が育児休暇を取れるようにすることそれ自体を目標とするのではなく、それを男女の給与格差均等化への単なる道筋として扱うことは有害である。それは父親が直面する不都合を軽んじることになるだけでなく、育児休暇の問題を解決するためにどんな方法が採られたとしても、その効果を限定してしまう危険性がある。これでは誰の助けにもならない。


平等について話し合う方法


今日、男性や男の子たちが直面する課題は数多く存在する。それは過度に高い男性の自殺率から、深刻に報告率が低く不名誉を着せられる男性の性的虐待の被害者の問題や精神障害についてまで様々である。しかしこうした課題に取り組むことに注意を集中してしまうと、女性の権利を拡大することだけになってしまう場合が多い。

「男性の場合はどうなのだろう?」という疑問の視点が不可欠で、それは「女性と女の子を守るため」に必要だからである。男性が精神衛生上問題を抱えている場合に女性に大きな負担がかかるように、男性が問題に直面することは様々な形で女性にも影響を与える。これは単なるレトリックの問題ではなく、社会に特に男性にとって本質的な重要なことである。

女性や社会全体が男性が直面している問題に取り組むことで利益を得ることは建設的なことである。しかし男性も男性が抱えるこれらの問題、そして職場や家庭での男性の役割りについての時代遅れの態度や固定観念について解決に取り組む必要がある。それは男性自身の健康や幸福に害を及ぼすからである。これを追求すること自体価値がある。こうした組み立てをしなければ、社会の中で話し合い男女平等のために活動する上で有害な差を残してしまうことになる。

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