2018年12月4日火曜日

CNNの「事実第一主義」はイスラエルには当て嵌まらない


CNNが同局でコメンテーターを努めていたマーク・ラモント・ヒルを解雇したことで主要メディアが偏見を持ち客観性を欠いていることを露呈してしまった。


Al Jazeera
Mariam Barghouti
3 Dec 2018

先週アメリカの主要メディアはまたしてもパレスチナに問題を抱えていることを証明してしまった。CNNが同局でコメンテーターを努めていたテンプル大学の教授マーク・ラモント・ヒルとの契約を打ち切ったのは、彼が国連での演説でイスラエルの占領行為とパレスチナ人の権利が蹂躙されていることを批判した後のことだった。

ヒルの演説は全くの事実に基づいている。パレスチナ人を差別するイスラエルの法律、イスラエルの治安当局による恣意的な暴力行為、パレスチナ人の逮捕者に対する拷問、イスラエルの裁判所ではパレスチナ人に対しては適正な手続きが取られていないこと、占領地での移動の制限、こうしたものを彼は挙げていた。これらは全て国連や幾多の人権団体によって文書化され非難されてきた違反行為である。

CNNは昨年から新しいスローガン「ファクト・ファースト(事実第一主義)」を掲げているが、イスラエルについてのこうした事実には同意しなかったようだ。名誉毀損防止同盟(ADL)のような親イスラエルの団体から演説について非難を受けたこのテレビ局は即座にヒルとの繋がりを切った。

CNNはこの判断の理由については何も発表はしていないが、親イスラエルの団体からの圧力に屈したことは誰の目にも明らかなことだ。ヒルは「川から海まで自由なパレスチナ」という言葉を使ったことで反ユダヤ主義者だと非難された。この一節は「ハマスのスローガン」で、イスラエルの破壊を呼びかけるものであるとされた。しかしこれはそのどちらでもない。

イスラエルを批判しパレスチナ人の自決の権利を支持する人たちを「反ユダヤ主義者」だと槍玉に挙げることはシオニストの圧力団体の常套手段になっている。しかし、パレスチナ人の自由を呼びかけ権利を認めるように求めることは反ユダヤ主義ではない、親パレスチナであるだけだ。

親パレスチナ主義の立場からのイスラエルに対する批判を恣意的に反ユダヤ主義と同一視することは、ヘイトスピーチや憎悪犯罪に晒されることがあるユダヤ人たちにとって危険なことになり得る。

パレスチナではイスラエル当局はこの戦術を最大限まで利用し、既に言論の自由を束縛する法律をいくつも成立させている。これはつまりイスラエルの政策を批判することやイスラエルの占領に対する抵抗を呼びかけることは、それが詩の体裁をとっていたとしても逮捕収監されるリスクがあることを意味する。

アメリカでは、イスラエルを批判する人は解雇されるリスクに直面する。このことはヒル教授やそれ以前にイスラエルを批判してきた人たちの例を見れば明らかで、そしておそらくそれは今後も続く。CNNの今回の対応はメディア企業が批判者を沈黙させるイスラエルによる運動に如何に屈しているかという問題を議論する機会を私達に提供することになった。

長い間、CNNのような西側の主要メディアはパレスチナ人たちの苦闘のような問題については、客観性という薄い壁の背後に隠れてきた。

こうしたメディア企業は客観的に、つまり適切な手続きと高い基準で検証され保証されバランスの取れた報道をしているのだという。その客観性の壮大な宣言によって、彼らは何が起きているのか真実の画を提示するのだと主張している。しかし殆どそれはできていない。

西側の主要メディアネットワークがパレスチナについて報道する時に使われる言葉はしばしば不正確で客観的な現実を歪めて伝えている。CNNを始めとするメディアはパレスチナ人とイスラエル人との間の「紛争」を、後者が法律的にも客観的にも占領者であることを飛ばして話を伝える。彼らは「争いになっている土地」では、パレスチナ人たちを彼らの土地から追い出す不法入植が存在しないかのように伝える。彼らはしばしば平和的な抗議者に対するイスラエル軍の暴力を「衝突」と(あたかも両側が対等であるかのように)伝え、パレスチナ人が殺害されたことについては(あたかもイスラエルの兵士がパレスチナ人を銃撃したのではないかのように)受動的な言い回しを使う。

客観性を主張しながら、明らかに故意に難解な言葉を使って意図的に特定の事実を飛ばして伝えることはメディア業界を毀損するだけでなく誤った情報を広めていることになる。この不誠実さ、政治的偏向、そしておそらく西側の主要メディアすらもイスラエルの圧力に怯えていることがヒル教授の解雇によって露呈されることになった。

この件は、「事実第一主義」を貫き「権力に媚び」ず、言論の自由のために戦うと主張しているメディアにすら重要なことを黙らせることができる例を示している。今回の件で特に憂慮すべきなのは、CNNはイスラエルの政治的圧力と言論弾圧政策に屈するだけでなく、例え間接的であってもそれを恒久化してしまっていることだ。

CNNはパレスチナ問題の「議論の余地がある」主題を取り上げて「事実第一主義」で伝える準備が明らかにできていない。その代りに政治的な「安全側」に留まることを選んだ。お定まりの談話を用いて抑圧する者と抑圧される者との本当の動勢を不明瞭にし、偏向された特定の出来事だけを伝えることを選んだ。

残念なことにこの「安全側」の論理はメディア機関だけでなく、西側の学術機関、政治機関、そして政府にすらも採用されている。ガザで行われた大規模な抗議運動「帰還大行進」では非武装で平和的に抗議運動を行っていたパレスチナ人50人以上をイスラエルの狙撃兵が射殺し、数百人が負傷して地元の病院が対応しきれなくなった。その時の西側の政治指導者たちによる偽りの非難を思い出して欲しい。彼らは皆イスラエルに「自制」を呼びかけ、その大行進の時にはイスラエル人を殺すことなどしていないハマスについて言及し「バランス」をとって「客観性」を持たせようとしていた。

「安全側」に立とうとしていないマーク・ラモント・ヒルのような人々は、事実と批判的思考に基づいてパレスチナについて明確な立場をとっている。彼らは歴史の中で抑圧された人々の権利のために立ち上がった人々と同じように中傷され攻撃を受けている。それでも彼らは忍耐強く権力に媚びずに真実を客観的に事実に基づいて伝え続けるだろう。

一方で西側の(学術、メディア他の)機構は最終的には猛省しなければならない。彼らは政治的圧力に日常的に屈して誤った情報を伝えているだけでなく、圧力で黙らせるイスラエルの戦略に共謀しているのだ。

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