2018年12月10日月曜日

リーマンショックから10年、私たちは金融業界に地球を委ねることができるだろうか


COP24(24. Conference of the Parties to the United Nations Framework Convention on Climate Change:気候変動枠組み条約第24回締約国会議)がポーランドのカトヴィツェで開催されている


The Conversation
Tomaso Ferrando
December 3, 2018

2008年9月15日にリーマン・ブラザーズは倒産した。この投資銀行の崩壊は世界に溢れた金融のバケツをひっくり返すことになり、抵当権執行、緊急救済措置、緊縮財政の10年の始まりになったのだった。世界の経済と公的機関がこの余波に襲われた結果、財政状態が悪化し住宅や食料品を含む経済のあらゆる側面から大規模な資金を引き出そうとすることになり、緊急の代替案が必要になった。

それから10年が経ち、ポーランドのカトヴィツェで開催されるCOP24と2015年のパリ協定の完全な実施について、民間金融機関と大手投資家が中心的な役割を果たそうとしている。年金基金、保険基金、資産運用会社、大手銀行の代表者がこの会議に出席し、インフラ、発電、農業、そして低炭素経済への移行への投資を支持するように各国政府、都市、そして他の銀行に対してロビー活動を行っている。


金融業界は過去の行いを精算したのか?


貧困国が気候変動の影響を十分に緩和するためには開発援助について2.5兆ドルのギャップを埋める必要がある。富裕国がこの支払に熱意を示さない以上、民間金融機関が役割りを得ることは避けられない。政策立案者たちは1.5℃を超える破壊的な温暖化を避けるための投資を確保するには金融資本の投入が最善の策だと信じている。

これは今始まったことではない。最初の発表は2014年の国連の気候サミットで行われた。当時の国連のウェブサイトのリリースでは、投資業界と金融機関は「低炭素経済と気候変動への対応のために数千億ドルの資金を確保する」ことになるとしている。

地球を救うための民間金融機関の役割りを強調する関連組織は増え続けている。その中には2018年12月9-10日にカトヴィツェでCOP内で開かれる持続可能なイノベーションフォーラムでの気候変動財政会議も含まれている。

民間金融機関への強い依存は地球の未来を世界経済を崩壊寸前に追い込んだ個人や機関に手渡すことになることを無視することはできない。中には化石燃料から脱却してより良い計画に資金を投入している機関もあるので真実も含まれているかもしれない。しかし、気候変動を解決するための財政的な希望を彼らに委ねる前に私たち自身がもう一度考える必要がある。


COP24の交渉における疑問


公的資金のみでは化石燃料からの移行資金は調達しきれないという認識は歴史的にどのように形成されてきたのだろう?これは明確な因果関係も責任関係を持たない客観的な状態を表しているのか、あるいは他の何かなのだろうか?

貧困国が2015年に約束された気候変動に対応し緩和するための資金提供を待っている一方で、2017年に世界で使われた軍事費が1.7兆ドルだったという事実はどう受け止めれた良いのだろう?

イギリスだけで8500億ドルとされる金融機関への救済措置の費用についてはどうだろう?金融ジャーナリストのマイケル・ルイスがブーメラン理論で指摘するように、公的資金で禁輸機関を援助してきた国は今では同じ金融機関に入り込んで本来国がすべき仕事をさせるようになっている。このことは次の考慮すべき事柄に繋がる。

気候変動は歴史的、政治的、社会的な複雑性を伴ったものだ。継続的な資金だけで解決策となるわけではなく、その役割りを分析すれば一連の戦略的な短絡化が見えてくる。

気候変動対応への金融業界の参入は気候変動への対応から政治色を取り除いて過度に単純化して継続的な成長と拡大を続けることで、金融業界が生き残るために不可欠な要素である持続可能性を達成できるという考えを正当化するものになっている。

このことは私たちが地球について考える道筋を金融用語と投資資金の回収に執着したものに変換してしまう。現在と過去の不公平とそれを補う再分配や一般の人たちが草の根から組織してきたプロジェクトに基づく気候変動に対する主張を全て隅に追いやってしまうことになる。更に、持続可能性と成果を人々と地球の権利、利益、必要性に沿ったものかどうかで定義する財政上の手法を受け入れることになる。

金融業界は気候変動と戦うためのパートナーになるのかもしれないが、これは利他的な動機に基づいた関係でないのは明らかでエネルギー政策の移行からもたらされる利益が動機になっている。発電、鉄道、水道管理等の気候変動緩和事業が財政的に持続可能だと見做されて優先的に扱われるのは当然のことである。


ウォールストリートの基準で気候変動と戦うこと


ウォールストリートはより「グリーン」なインフラに投資することで大きな利益を得る機会を持つことになる。そこにはそれほどグリーンでない中国の「グリーンベルト」や、元々炭素排出権が適用された持続可能な投資対象とされているブラジルのベロ・モンテの道路やダムなどへの投資が含まれている。グリーンボンドとして環境プロジェクトのために発行される債権は都市が環境への影響を軽減したり気候変動に対応することを助けることができる。

しかし、お金が動機になっている以上、サービスや借金の支払いに苦しむ都市や人々を助けたり、気候変動から弱い立場の人々を守るというような十分な利益を生み出すことが期待できないプロジェクトに民間の投資家が興味を持つことはない。気候変動との戦いがウォールストリートのルールに従って進められることになるなら、人々もプロジェクトもお金を生み出すかどうかによってだけ支持を得られるかどうかが決められることになる。

10年前、世界は金融業界がこの世界経済のあらゆる部分に浸透していたことを目の当たりにした。当時、金融によってより良い世界を築くことができていなかったことは明らかだった。10年が経った今、COP24は持続可能性と収益性が矛盾する可能性がある改革の中で大手金融投資家の道理を正当化するべきではない。

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