2018年12月18日火曜日

ストーカーの心理学


ストーカーは簡単に見分けられると信じることは落ち着きを与えてくれる。しかし、ストーカー行為に手を染める人は考えられているよりもずっと幅広く多様化している。


Christine Ro
Dec 14 2018

ストーカーは簡単に見分けられると信じることは落ち着きを与えてくれる。彼らはいかがわしく、常軌を逸した不気味な感じの人で、トレンチコートを着込んで女性を自宅までつけて行って個人的な情報を探ろうとする、そんな感じだろう。

実際のところ、ストーキングに関連するような執拗な行為(人をつけ回す、プレゼントやメッセージを送りつける、職場や自宅に近づく)を見せる人は比喩的に描写されるタイプよりもずっと幅広く多様化している。

間違った固定観念のせいでギャリー・ウォーカー(仮名)は彼の元ガールフレンドが彼に対してその言葉を使うまで、彼自身がストーカーであることに気づいていなかった。25歳のウォーカーが認識していたのは、彼と元ガールフレンドの間で彼がしてきた行為や他の人を巻き込んでしてきた行為(明らかに都合の悪いときに繰り返し電話をかけて彼女の家族に接触した等)は偏執的だったということだった。

「こうした偏執的な行動はパニック障害と同等のものです。存在の危機を感じているのです」とウォーカーは相手に一方的に執着した時間について話す。「誰か愛する人が死んだ瞬間のような感覚です」

臨床医でニューヨーク市立大学で心理学の教授を務めるミシェル・ガリエッタはストーカーのような行為をする人々の治療に注力している。ガリエッタは「典型的なストーカーなどというものは存在しないのです」と言う。ガリエッタの下で治療に励む人々には、境界性パーソナリティ障害を患った裁判官から被害者の女性を2年間静かに付け回した末に殺した人までいる。

ストーキングというのはそれ自体が病気なわけではなく、様々な不全の症状の傘下にある行動のことだ。2012年に専門誌に発表された研究によると「ストーキングの動機には、ロマンティックな運命を妄想的に信じてしまうことや、以前の関係を取り戻したいという欲求、被害者に苦痛を与えたいというサディスティックな衝動、精神病的に被害者を過剰に同一視して取って代わりたいという衝動、こうしたものが含まれます」とされている。そしてストーカーは様々な病気の診断を受けるケースが多く、精神障害、ナルシズム性の人格障害、自分が相手に愛されていると信じてしまうエロトマニアと呼ばれる妄想障害などがある。(ウォーカーは診断を受けてはいないが自分をADHDを伴った境界性パーソナリティ障害だと信じている。また彼は自身をナルシスト的であると考えている)

ガリエッタの研究によると薬物依存などの物質使用障害を持つ人もストーキングをするケースが多いとされる。ガリエッタも参加しているある研究では、ニューヨークでストーキング行為によって保護観察処分を受けている137人を対象にして調査したところ、そのうち半数が物質使用障害で、同様に半数が人格障害を抱えていた。しかし、その中の4分の1以上の人は、いかなる人格障害も薬物依存も精神疾患も持っていなかった。

こうした議論が存在するにも関わらず、ストーカーについてはある種の特徴が繰り返し取り上げられる。例えば2014年に発表された研究ではストーカー被害にあった人の80%がなんらかの形でストーカー犯を知っていたとしている。必ずというわけではないが、ストーカーは30代の男性が多く、標的にされるのは10代後半から20代前半の女性であることが多いことも裏付けられている。他の研究ではストーカー犯たちには幼少期に起因する衝動性、怒り、不安が共通していることも明らかにされている。

ガリエッタは彼女が観察してきたストーカーたちは一般的に「興味の範囲が極めて狭く、レジャーを楽しむようなことは殆どせず、社会的な人間関係も一定しない。それゆえにストーカー行為に至った関係が主要な人間関係になっていた」と話している。

これはウォーカーにも当てはまっている。ウォーカー自身は「私は自分の人生でしてきたことについて何も思い浮かびません」と話している。「社会的にも知性的にも不適格で、人生経験は無く、母親以外に指導してくれる人もありません。私には何も残っていませんでした、友人もいません。偏執的になる以外に何が残されていたのでしょう?」

しかし、こうした特徴を全て備えている人でもストーキングとは全く関係ない人もいる。むしろストーキング行為は、例えば別離、解雇、逮捕、拒絶といったような人生に於ける受け入れることが難しい出来事がきっかけで起こるものだ。

「破局について思い出すのは辛いことですが、その時は彼女の部屋のドアをノックし続けていました、少なくとも、いや、物凄く長い時間です」ウォーカーは元ガールフレンドのことを思い出して語る。「同時に身の毛もよだつような感覚に襲われました」


元パートナーにストーキングされる場合と未知の人物にストーキングされる場合の違いとは?


ポップカルチャーにおける不健全な人間関係の表現がロマンティックな関係と脅迫的な偏執との違いをぼやかしてしまうことがある。テレビや映画のロマンティック・コメディでは、女性を追跡するために私立探偵を雇うことが男性に望まれていたり(メリーに首ったけ)、人の家の窓の外で深夜に音楽を響かせたり(セイ・エニシング)、デートに応じてくれるまで女性に付き纏ったり(Saawariya他のインド映画)している。作家キャロライン・ケプネスのベストセラー作品で中心になっているストーカーは次のように自身を正当化しょうとしている。「僕のようにロマンティックな男はいつも苦境に陥ることはロマンティック・コメディで十分学んでいるんだ」

だが現実ではストーキングというのは虐待の一形態である。そして、現在の又は過去の親密なパートナーはどちらも最もストーカーになりやすい存在であり、最も危険と言える。2014年にアメリカ疾病予防管理センター(CDC)が実施した調査では回答した女性のうち60.8%がストーカーと現在又は過去に恋愛関係にあったと答えている。さらに調査では、虐待的な関係の中にある人の80%がその関係の中でストーキングをされていることが示されている。

元パートナーによるストーキングはより執拗に続くものになる傾向がある。多くのストーキングは2〜4週間で収まるものだが、元パートナーによるものはそれよりも長く続く。イギリスのストーキング対策センターを主導している警察の警部であるリー・バーナードは今年の初めにBoradlyが話を聞いた時に、元パートナーのストーカーが「可能性として最も危険」であると話してくれた。あるストーキングに関する研究では元パートナーのストーカーを「自我が傷つきやすく、人間関係の限界を超えやすく、怒りと嫉妬が燻り、容赦ない執拗さ」を持っていると表現している。そして彼らはたいてい被害者の生活について詳しい知識を持っている。

ウォーカーがストーカー行為を働いたのはパートナーと元パートナーに対してだけである。脅迫的なテキストメッセージから始まる彼の衝動は、2人の関係が続いている間、あるいは破局した直後の不安と嫉妬に結びついている。彼はまた、女性は本質的に信頼できない嘘つきであるという彼自身がミソジニー的だと認める信念と苦闘していて、元パートナーが彼に対して惑わすようなメッセージを送っていたと信じている。例えば、彼の元パートナーの1人が彼に対して自分のヌードの写真を消すように頼んでこなかったことを、彼は、彼女が彼との接触を避けているのではなく、彼女は彼のことを危険だと考えていないサインだと受け取った。「彼女は私をストーカーと呼びましたが、そのようには扱いませんでした」

しかし、オーストラリアのスウィンバーン工科大学の臨床と法廷の心理学者であるトロイ・マクイーワンは元パートナーのストーカーが蔓延していることを考える場合には注意が必要であることを強調している。彼は「元パートナーのストーカーはストーキングで多くの暴力を用い、ストーカーの分類としては単独で最大の勢力を形成していますが、彼らはストーカー全体の中では多数派ではありませんし、見知らぬ人やちょっとした知り合いによるストーキングも物理的な暴力行為がなかったとしても、元パートナーによるものと同様に継続して損害を与えるものになる可能性があります」とBroadlyに話してくれた。

マクイーワンが話の中で挙げた中には精神病的ストーカーが含まれている。コメディアンのデイヴィッド・レターマンのストーカーだったマーガレット・メリー・レイは自分がレターマンの妻であり子供の母親なのだと人に話していた。

精神病的ストーカーは現実から遊離していて、特定の有名人、未知の人、同僚、知り合い等との関係を妄想で説明することがある。ガリエッタは彼女が扱った例として、コーヒーショップで女性と出会って少し言葉を交わした男性を挙げている。「妄想的な考えでは『彼女は態度では表さなかったとしても、僕と話したがっていたのだ』ということになります」とガリエッタは説明する。「『彼女が車を道路の右側でなく左側に駐車したのは、僕に特別なメッセージを送っているのだ』」

ガリエッタは、妄想に取り憑かれたストーカーはしばしば自分がしていることが間違っていると認識できなくなり、他の人が自分を理解できていないのだと考えるようになると説明する。彼らの行動は強力なトラウマになり得るが他のタイプのストーカーよりも物理的な暴力に繋がる可能性は低い。1つには精神病的ストーカーは現実からかけ離れていて異常な行動を見せるために、より狡猾なタイプのストーカーよりも簡単に見分けることができることがある。


ストーカーに対する治療とはどんなものか?


多くのストーカーは限定された興味しか持たないため、治療方法の1つとして「趣味的な何か他のものへ繋がりをつけて弾力性を身につけること」があるとガリエッタは言う。「精神病的な信念のせいか誰かが恋しいと思う気持ちのためかに関わらず、誰かに連絡をしたがるという衝動が存在するのを私たちは数多く見ています。一度連絡を取ればその気持は一時的に緩和されるので、後に更に衝動が強まるというメカニズムになります。私たちはこれを打破したいと考えています。その衝動がどんなものであっても自分で認識できるように教えたいと考えています。そして何か他のことに挑戦させることに取り組んでいます」

何か違うことに挑戦するということはストーカーの前科者にとっては非常に難しいものである可能性がある。マクイーワンが関わっている人々は、ストーカー的行為をする時にそれがポジティブなものでもネガティブなものでも強力に感情的な状態になる傾向があった。だが、彼らがストーキングで得た安らぎや高揚感は直ぐに消えてしまう。「私たちは、ストーカー行為をする人々が何故前に進まずに同じ感情の状態に戻ってしまうのかについて研究を始めています」とマクイーワンは説明する。「これはつまり感情の状態を管理し続ける必要があるということで、そのために彼らは被害者宅に侵入するような、社会的に不適切で犯罪になる可能性もある行為を選択し続けているのです」

ストーカーに対する処置は狙いを絞ったものであれば効果的なものになり得るが、一般的な治療法としてはストーキング行為の多様化を考慮すると成果をあげるのは難しいだろうとガリエッタは言う。そして、ストーカーに対する治療を具体化する方法に関する理解は心理学者の間でも限定的なものだと彼女は言う。「ストーカーを治療の対象として考えるセラピスト自体が殆どいないのです。『何が起こっているのですか?あなたたちの関係はどうなっているのでしょう?』と尋ねなければなりません。『その人に電話したくなる衝動がありますか?』『衝動がある時はどうしますか?』『どんなスキルを使いますか?』こういうことを聞くのではありません」。彼女の見解では、ストーキングの行為や衝動の詳細について知ることは、支援治療としてよりもリハビリにの方に役立つという。

この治療は場所的にも金銭的にも利用しやすいものである必要がある。ウォーカーは彼自身で連絡を取りたいという衝動に苦しんでいることに気づいたという。彼は専門家の助けを借りずに自分自身で人格障害やその他の障害と向き合っている。「私にはだれもいないのです。私は本当に誰の助けも得ていません。金銭的に余裕がないということもありますし、代わりを見つけるだけでは自分の人生がどんなに入り組んだものかを感じてフラストレーションを溜めることになります。私がする必要があること、例えばエクササイズを始めて積極的に態度を改善させるようなことを全てするために私にはまだ支援が必要です」

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