2019年4月14日日曜日

多汗症:多量の汗が生活を破壊する


およそ3%の人がこの問題を抱えていてほぼ常に汗をかき、社会的不安感、頻繁な着替え、タイピング不能のような問題が報告されている。


The Conversation
Louise Dunford
April 12, 2019

エクササイズをしたり気温が高かったりすればみんな汗をかく。しかし、それだけでは済まない人もいる。多汗症(過度に汗をかきやすいこと)は人生の質(クオリティ・オブ・ライフ)に多大な影響を与え、日常生活を妨げるものにすらなり得る。人間関係に支障をきたしたり、汗をかくことを恥じて家から出られなくなる人もいる。

汗をかくことは通常の身体活動の1つであり、体を適切な温度に保つのに役立っている。高温の場所にいたり、エクササイズをした場合には汗が皮膚から蒸発することで温度を下げる。また、不安を感じていたり緊張する状況にあるときにも汗をかくことがある。しかし、およそ3%の人々は多汗症と呼ばれる状態にあり、ほぼ常時汗をかき続けている。

多汗症によって影響を受ける最も一般的な体の部位は、手、足、脇の下、顔、頭だが、それ以外の部分も影響を受ける可能性はある。体の一部ではなく全身に汗をかく人もいる。それ以外の人が汗をかかない状況でも、例えば気温が低くても汗をかいている。

多汗症の原因ははっきりしていないが、汗を司る神経が過度に活動的になっていると考えられている。幼児期や青年期から発症し始めることが多いが、人生のどのタイミングからでも現れる可能性がある。手に過度の発汗が起こる人は家族にも同じ症状を見せる人が多いため、おそらく遺伝的要素も関係している。


いくつかの返答


多汗症の原因について明確な理解がない状態では効果的な対処法を探し求めるのは困難なことである。私たちは理解を進めるために研究を続けている。多汗症を患っている人とその治療にあたっている専門家に、解決して欲しい現状の問題について質問をして、268人から約600に登る研究上の問題について返答を受けた。

そこから、多汗症の深刻さには幅があることがわかった。軽いものの影響は軽微であり、些細な不都合や少々恥ずかしい思いをしたりすることだった。しかし、症状の深刻さが増せば人生の質への影響も遥かに大きくなる。キャリア選択に支障をきたし、社会的孤立を招くこともある。例えば、手に過度の汗をかく人はペンを持ったりキーボードを使うことすら困難になる。

多汗症を患う人は、面接やミーティングなどで握手を求められる職場環境で不安を抱えていることが多い。汗をかくことを恥ずかしく思うことは社会生活にも影響し、これを理由に他人と親密な関係を築くことを諦めている人もいる。頻繁に着替えが必要になるということもある。

多汗症を患っている人の殆どは医療的支援を求めようとしていない。おそらく、そもそもこれが医学的な問題であることが知られていない。深刻な問題として受け止めてもらうこと、専門家へのアクセスができないこと、治療の優先度は低いと考えられてしまうこと、こうしたことが困難な問題として報告されている。


可能な治療


発症している体の部位によるが、多汗症について利用できる治療法はいくつか存在している。

  • 塩化アルミニウムを含有する強力な制汗剤
  • 問題の箇所を水に浸して低電流を流すイオン導入(イオンフォレシス)
  • ボトックス注射によって神経終末で化学物質を遮断することにより、汗腺が活動できないようにする。
  • 抗コリン薬と呼ばれる薬を経口することにより、全身の神経終末を遮断して汗腺を停止する。

これらの治療法はすべて一時的なものの上、すべての人に有効なものではない。制汗剤は皮膚に炎症を起こす場合があり、経口薬は全身の神経終末を遮断するため、口内乾燥や尿器官障害のような副作用が起こる場合がある。ボトックスとイオン導入に関しては定期的に繰り返し行う必要があり、高価な場合もある。

他に、恒久的な効果がある治療法もある。特定の部位(脇の下など)から汗腺を除去または破壊することや、発汗に関わる神経を切断する胸腔鏡下交感神経遮断術(ETS)のような手術を行う患者もいる。ETSは特定の部位の発汗を抑えるのに効果的な方法だが、神経やその他の器官に傷をつけるような深刻な副作用を伴うことがある。この手術を受けた殆どの人は他の部位で発汗を起こす(代償性発汗)ようになり、これは元の問題よりも深刻になる場合もあるため、ETSは通常最後の手段として用いられる。より新しい恒久的な治療法としては電磁エネルギーによって汗腺を破壊する方法がある。

多汗症はよくあることであるにもかかわらず、あまり広く知られていない上に研究の予算も極めて貧相である。悩んでいる人が治療や支援を求めることに苦痛を感じさせないようにするためには、多くの人に知ってもらうことが重要になる。

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