2019年3月13日水曜日

英保守党が抱えるイスラム嫌悪問題


もし政治家たちがこれを否定し続けるなら、その結果は保守党にとっても英国にとっても悲惨なものになりかねない。


Al Jazeera
Maya Goodfellow
Mar 11 2019

イギリスで初のイスラム教徒の女性の閣僚であるバロネス・サイーダ・ワルシは何度同じことを話して聞かせなければならないのだろう?過去2年の間に、彼女は同僚たちとメディアに対してイスラモフォビア(イスラム嫌悪)は英保守党内の深刻な問題であることをわからせようとしてきた。そして、残念ながら彼女は繰り返し無視されて続けている。

先週彼女は再度この問題を取り上げている。テリーザ・メイ首相をイスラモフォビアに関して「砂に頭を埋めている(知らん振りをしている)」と非難し、トーリー党(保守党)は「制度的なイスラム嫌悪に陥っている」ことを指摘した。彼女の指摘は一度は多少の注意を引いたようだった。彼女のコメントから程なくして、14人の保守党の党員がイスラモフォビア的なFacebookへの投稿によってサスペンドされたことがメディアに報じられた。しかし、このサスペンドは問題の核心を捉えたものではなく、根本は沈んだまま残されている。

バロネス・ワルシのコメントについて尋ねられた保守党議員のヘンリー・スミスは、英国の政治エリートたちが如何にレイシズム、特にイスラモフォビアについて理解できていないのかを身をもって示すことになった。彼は「彼自身が遭遇していない」のだから、イスラモフォビアは保守党にとって深刻な問題ではないと発言したのだった。

残念ながらこの論理は党としてのレイシズムに対する取り組みを非難された時に、多くの保守党の政治家たちが主張するものだ。彼らが見たり経験したりしたことがない以上はそこには何の問題もない、と考えているようだ。もちろん、彼ら自身は制度的なイスラモフォビアやその他の人種や宗教による差別の標的にされることはないという事実は踏まえていない。

イスラモフォビアが保守党内で深刻な問題であるかどうかの尺度にスミスの手法を用いるとしても、それでも彼が達した結論については疑問に思わざるを得ない。最近イスラモフォビアで非難を浴びて話題になった保守党員たちを見れば明らかだ。

2016年の夏、それまでは環境保護政策で知られていた保守党のザック・ゴールドスミスはロンドン市長選挙で労働党の候補者サディク・カーンと争うことになった。有名な戦略担当者であるリントン・クロスビーが背後から支える保守党はその時ゴールドスミスの選挙キャンペーンに人種差別でテコ入れすることを選択した。

彼らは誘導尋問的な言葉を用いて、パキスタン系イギリス人でイスラム教徒であるカーンを「急進的で対立的」な人物であると表現し、隠れ「過激主義者」であると示唆することすらした。また、ロンドンのインド系やタミル系の人々が多く住む場所でカーンは信頼できないという警告の書かれたリーフレットをばらまいた。保守党内のイスラム教徒はこの活動に憤慨したが、当時の国防大臣マイケル・ファロンは政治の「粗雑で混乱した」一部に過ぎないと述べ、当時の首相デイヴィッド・キャメロンは沈黙を選択した。

「無能な政治家」の役割を何年も完璧にこなしていた前外務大臣のボリス・ジョンソンは気軽に人種差別的な言説を残している。2018年にはデイリー・テレグラフのエッセーでブルカを纏ったイスラム教徒の女性を「郵便箱」や「銀行強盗」に例えた。公衆から相当量の怒りを買ったが、彼は謝罪を拒否した。


イスラム嫌悪の言辞は保守党支持層に効果的に響く


保守党がイスラモフォビア問題を認めようとしたがらない理由の1つは、英国民の特定の一部にイスラム嫌悪が蔓延していることであるように見える。そして、その層は保守党に投票する可能性が高いのだ。

英国に於ける反イスラム教徒の思想は広範囲に渡っていて1つの政党や政治指向に限定されたものではない。しかし、反ファシスト団体 HOPE not hate の最近の報告では、保守党に投票する人たちは反イスラム的見解を持っている傾向があることを明らかにしている。例えば、前回の総選挙の時にテリーザ・メイの保守党に投票した人の半数弱がイスラム教を英国の生活様式に対する「脅威」だと感じているという。

保守党はこうした支持層を引き止めて政権に留まることを熱望するあまり、結果について考えることなくこうした考えに盲目的に従い、時には強調するようなこともしているように見える。

無視していればこうした考えはますます主流になり極右勢力の上昇に力を与えることになる。ジョンソンやゴールドスミスのような政治家はイスラム教徒を「危険」「異質」あるいは「敵」だとすら暗示して遠ざけようとし、スミスのような彼らの仲間は、英国でイスラモフォビアの主流化に貢献しているという証拠が山とあるにも関わらず問題の存在を否定しようとしている。

今月の始め、労働党議員のナズ・シャーが庶民院院内総務のアンドレア・レッドサムにイスラモフォビアについての討議を求めた時、彼女はそれについては外務省に言うようにと告げられた。それはあたかもレッドサムがイスラム教徒が英国人であることはあり得ないと考えているかのようだった。

レッドサムのシャーに対する衝撃的な反応は、イスラム教徒は英国や西側諸国の「文化」とは親和性のない、異なる「文化」と異なる「価値観」を持っているという極右の考えを反映したものだ。こうした差別的な考えこそが極右の言説を私たちの日常生活に入り込ませ、安全を求めてヨーロッパに渡ろうとする移民たちに対するモラル・パニックが引き起こされた背後にあるものだ。こうした考えは制限的で暴力的な国内外に対する政策を正当化することに貢献している。

したがって、保守党に於けるイスラモフォビアの重大な問題は不快な言辞そのものではない。本当に問題なのは、その攻撃的な言葉の背後にある思考や信念である。イスラム教徒は英国民ではなく英国に対する脅威であるという考えは、英国のイスラム教徒たちが自国でどのように扱われ、見られるのか、そして、助けを求めて国外からやってくるイスラム教徒に対する英国民の態度に還元される。

保守党は事実としてイスラモフォビア問題を抱えている。この問題は政争に用いたり、個人の活動として扱うべきものではない。保守党内のイスラモフォビアは制度的なものであり、それ自体が問題として扱われるべきものだ。もし、政治家たちがこの問題を無視し続けるのであれば、その結果は保守党にとっても英国全体にとっても悲惨なものになりかねない。

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