2019年2月9日土曜日

シオニストは「ユダヤ人至上主義者」ではない


シオニズムを「白人至上主義」ではなく「ユダヤ人至上主義」だというのは危険な主張だ


Al Jazeera
Yoav Litvin
10 Jan 2019

ピューリッツァー賞を獲得したアリス・ウォーカーがニューヨークタイムズのインタビューでデイビッド・アイクの著書「And the Truth Shall Set You Free(そして真実があなたを自由にする)」を推薦し、この本は「好奇心旺盛な人の夢を叶えるもの」だと主張したことで物議を醸した。

ウォーカーが広く「反ユダヤ主義」の本と考えられているものを推奨したことにはすぐさま多くの反応があり、彼女はアイクによる人種差別主義の陰謀論を受け入れているのだと非難された。一部にはパレスチナ系アメリカ人の作家スーザン・アブルハワのように、ウォーカーの考えは反シオニストであって反ユダヤではないとして擁護した人もいた。アブルハワは彼女の著述の中でアリス・ウォーカーを擁護して、「イスラエルによるユダヤ人至上主義の考えによってパレスチナの人々は目に見える形でも見えない形でも殺され、辱められ、破壊されている」と書いている。

この公の議論に欠けているのは、シオニズムの基本的な性質と見做されているものとそれが不正義と戦う上で与える影響との重要な相違である。

シオニズムとは現代の運動であり、19世紀後半に欧州での反ユダヤ主義や民族的ロマン主義の高まりを受けて少数の世俗主義的なユダヤ人たちだけの間で高まった気運だった。

初期のシオニストたちは多くの側面で欧州のファシズム、白人至上主義、植民地主義、救世主福音主義と共通性を持っており、宗教的排他主義者と領土拡張主義者としての目標達成を推進するために、反ユダヤ主義者、帝国主義者、ファシストたちと協力していたという長く忌まわしい歴史を持っている。

実際、過去約100年間を見ると反ユダヤ主義者とシオニストたちはユダヤ人をイスラエルに集中させるという相互の利益に向かって努力してきた。前者にとっては存在を歓迎しない人々を追放し、後者にとってはパレスチナに先住する人々との「人口統計学的」な戦いという意味があった。更に、反ユダヤ主義者もシオニストたちもユダヤ人を生物学的な民族と見做し、世界的な人種隔離政策の理想の一部として隔離される必要があるものだと考えていた。

シオニズムは人種差別主義と植民地主義の運動であり、パレスチナ固有の人々に対する人種隔離政策や大量虐殺といった犯罪行為を正当化するために日和見主義的にユダヤ教の外見を取り入れている。白人至上主義はイスラエル社会の中で支配的になっている。肌の白いアシュケナジム系ユダヤ人は特権を持ち、濃い色の肌を持つアフリカ系ユダヤ人、セファルディム系、ミズラヒム系ユダヤ人はアフリカからの難民と共に不利を受けている。アフリカ系/黒人のユダヤ人コミュニティはイスラエル当局から承認を拒否されて強制的に国外退去させられることすらしばしばある。

シオニズムは明らかに宗教から外れた考え方を基礎にしていて、侵略と拡大をトラウマに対する反応として受け入れ、苦難を罪に対する神による罰と見做す伝統的なユダヤ人の平和主義者の考え方を非難する。イスラエルの政権は、植民地化されたパレスチナの人々を犠牲にして特権的支配階級を推進するために、恐怖心を煽ることと資源獲得の利益によって強化された暴力と不平等を原動力として利用している。シオニストのストラテジストたちは、ユダヤの人々が耐えてきた過去のトラウマを操作して、パレスチナ人たちを追い込む攻撃的な政策を支持するように仕向けてきた。

イスラエル政府と、ブラジル、アメリカ、フィリピン、ハンガリーを含む世界中の反動的な白人至上主義勢力との目に見えて成長している明らかな繋がりは、更にシオニズムと白人至上主義との調和を示している。ネオナチはイスラエルの政策に触発されていて、「ホワイトシオニズム」という用語は新興の「オルタナ右翼」のネオ・ファシスト運動を表すために使用されている。イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は自らの政治的必要性を満たすためにホロコーストについて修正主義を採り、イスラエルの司法大臣のアイェレット・シャクドはパレスチナの人々を「小さなヘビ」と呼び、彼らに対する虐殺と人間性を奪う行為の脅威を公然と示した。

他のファシズム的反ユダヤ主義政権と同じ手法によって、イスラエルは歴史を通してシオニストを批判してきた人々を標的にし、反対の声を上げることを許さない。実際、反シオニストの人々はイスラエルが国として設立される前から標的にされてきた。今日、ボイコット、投資撤収、制裁(BDS)運動を支持する、親パレスチナの活動家たちは抑留され、処罰され、強制的に国外退去すらさせられる。


誤謬(ごびゅう)


この虐待的で白人至上主義的な原動力を維持するために、シオニストの扇動家たちはイスラエルがユダヤ教及び全ユダヤ人を代表するユダヤ人の国家であるという反ユダヤ主義的な誤謬を喧伝した。この根本的な虚報はシオニストのプロパガンダ(「ハスバラ」として知られる)の根底であり、イスラエルの植民地主義への支持を促進し、反植民地主義の抵抗勢力を攻撃するために用いられている。

この誤謬の論理的な結果として、シオニズム/イスラエルに対する批判は確実に反ユダヤ主義であるという誤った判断を招くことになる。イスラエル政府は彼らの罪深い政策に対する批判を封殺するための話法としてこれを採用した。反ユダヤ主義者の偏見と抑圧という極めて現実的な歴史を取り巻く罪を彼らは冷笑的に操作して、この戦術を強化してきた。更に、イスラエルはこの誤った反ユダヤ主義的なアパルトヘイトの枠組みを促進するために、一貫して(国民国家法のような法律を制定することによって)ユダヤ教と想定されるものとの関係を強化してきた。

最近の黒人たちとパレスチナ人との協力関係がシオニストたちの懸念事項になりつつある。彼らは、反ユダヤ主義であると主張して黒人の親パレスチナ人の活動家を標的にしてきた。その中にはマーク・ラモント・ヒルやウィメンズ・マーチの主催者も含まれている。ほんの数日前、アメリカのバーミンガム公民権研究所では、公民権のアイコンであるアンジェラ・デイヴィスを称えるイベントの開催を中止した。これはおそらく、彼女の親パレスチナの態度とBDS運動支持が原因である可能性が高い。黒人活動家を狙って標的にしていることは、シオニズムの白人至上主義的な性質を更に実証している。

この誤謬が招く2つ目のより曖昧な結果が親パレスチナの人々に打撃を与えている。仮にシオニストたちが言うように、イスラエルが実際にユダヤ教と全ユダヤ人を代表し「ユダヤ人至上主義」を表しているということを受け入れるならば、親パレスチナである人々はユダヤ人であることもユダヤ教も拒否しなければならないことになる。

この考え方を採用することによって人工的に2つの党派に分断を作り出している、前者にシオニストとユダヤ人、後者にパレスチナ人と反ユダヤ主義者ということになる。アブルハワの記事に表されている「ユダヤ人至上主義」によってシオニズムは動かされているという概念は、資本主義者、白人至上主義者による家父長制、そして、イスラエルとパレスチナの「紛争」は歴史的な先例がある植民地主義の事例ではないため政治的な解決策がある、だがこれはユダヤ人とその同盟国に異議を唱える人々に対する聖戦である、などと主張する反動的な政治家たちによって抑圧されている全ての人々の自然な協調関係を破壊するものである。

この誤謬は「紛争」を暴力以外では解決できないものにすることによってパレスチナの人々に究極的な犠牲を出させ続けることになる。これはパレスチナの犠牲者よりも不釣り合いに強力な軍事力を持つシオニスト入植植民地主義者とその扇動者たちに直接的な利益をもたらすことになる。

それとは反対に、シオニズムを、日和見主義的にユダヤ教を都合よく利用して入植植民地主義や大量虐殺行為の違法性を曖昧にして促進させる白人至上主義運動である、と理解することはより有効な分析的理論体系を提示することになる。

この理解によって、資本主義者と白人至上主義の家父長制によって抑圧された全ての人々(黒人、褐色人種、イスラム教徒、ユダヤ人、移民、先住民、女性、LGBTQI、等)を反人種差別主義、反植民地主義という1つの党派に集め、シオニスト(ユダヤ人も非ユダヤ人も)やデイビッド・アイクのような反ユダヤ主義に加担する人々に対峙させる。特に、白人至上主義者は構造的に白さに関係した概念であり、その犠牲者すらも利用して前進することができるものである。

道徳的信念を持ったパレスチナ人たちによるBDS運動は、一貫してこの運動から反ユダヤ主義を含むあらゆる形態の人種差別や偏見の排除を求めてきた。

このようにシオニズムの枠組みを「ユダヤ人」ではなく「白人」至上主義として捉えることは、特にシオニストの入植植民地主義者、一般的な白人至上主義者に反対する全ての人々の連携を可能にし、「反ユダヤ主義」だと冷笑的に圧力をかけて封殺しようとするシオニストたちの邪魔をすることができる。親パレスチナの人々は、人々に対する信条を支持することで賢明さを示し、その中で反ユダヤ主義的、反動的、陰謀論的な資料を宣伝してしまわないように注意が必要である。こうしたものは正当な擁護の余地を与え結果的にパレスチナの人々に害を与えることになる。

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