2019年2月7日木曜日

AIは文字通りでないものも学ぶようになっている


話や文章の中の暗に示された言外の意味を汲み取ることができる機械があれば、人間をよりよく理解できるようになるかもしれない。


Science News
MARIA TEMMING
FEBRUARY 5, 2019

AI(人工知能)は行間を読むことを学び始めている。

AIシステムは大抵の場合、「Siri、天気を教えて」「Alexa、『Despacito』を再生して」というような直接的な言葉に良い反応を見せる。しかし、機械はまだ人間のやり方で話をすることはできていないとシアトルのワシントン大学で自然言語処理を研究するイェジン・チェは語る。口調や慣用句のような会話のニュアンスについては、AIはまだ人間の意図を理解するのに苦労している。

機械がもっと人間らしい会話に参加できるように、研究者たちはAIに辞書的な定義の限定を超えた単語の意味を理解することを教えている。最近行われたAAAIカンファレンスでは、あるグループは人間が話す時に実際に意味していることを推測するシステムを公開し、また別なグループは文書内の言葉で文字通りの意味と比喩的な意味を判別するAIを提示した。

会話をする上でに重要な技術の1つは暗に示された言外の意味を汲み取ることである。顔の表情やイントネーションはその人が発した言葉の意味を大きく変える可能性があるとピッツバーグのカーネギーメロン大学でAIを研究するルイ=フィリップ・モレンシーが話している。ある映画について誰かにしかめっ面で「sick」だと表現することは、眉を上げて興奮した調子で「sick」だと言うのとは全く異なることを伝えることになる。

モレンシーと同僚たちは、YouTubeの動画を見て、顔の表情や話す速さなどの言葉によらない合図が、話している言葉の意味に影響を与えられることを学ぶ人工知能システムを設計した。

このAIシステムはビデオの主題がどの程度ネガティブかポジティブな感情を表現したものだったかを78%の確率で正確に評価することができたことをモレンシーのチームは1月31日に発表している。しかし、このシステムはいくつかの感情について他のものよりも正確に認識できた。例えば「幸せ(happiness)」と「悲しみ(sadness)」はそれぞれ87.3%と83.4%の正確さだったが、中間的な表現については69.7%しか正確に読み取ることができなかった。モレンシーは今後この種のAIシステムが、人間が顔の表現や口調で言葉の意味に皮肉を加えている場合を認識できるかどうかをテストしたいと考えている。

読み書きによる通信に於いても、単語の文字通りの意味をつなぎ合わせるだけで単純に誰かの意図を理解できることは滅多にない。慣用句は文脈によって文字通りにか又は比喩的に解釈することがあるため注意が必要だ。例えば、次のように同じ言葉を記事の見出しに使うことができる。文字通りに「Kids playing with fire: Experts warn parents to look out for danger signs(火で遊ぶ子どもたち:専門家は親たちに危険な兆候を警戒するように注意を与えている)」、あるいは比喩的に「Playing with fire in Afghanistan.(アフガニスタンで火で遊ぶ)」。

この種の曖昧さが、オンラインで感情表現を分析したり文書を異なる言語に翻訳したりするAIシステムを躓かせて足止めしている。この問題を回避するために、ピッツバーグ大学のコンピューター科学者であるチャンシェン・リュウとレベッカ・ファはその言い回しが文字通りなのか比喩なのかを周辺の単語を元に判断するシステムを設計した。先程の「playing with fire」の見出しの例で言うと、このシステムは「kids」と「playing」という単語を合わせて見ることで、最初の見出しは文字通りの意味である可能性が高いと予想するが、「Afghanistan」と「playing」という無関係な単語を見れば、2つ目の見出しは比喩的なものだと判断する。

このAIシステムは異なる単語をどう結びつけるかをWikipediaの記事にある文章を読むことで学んでいる。実験では、このプログラムは73〜75%の正確さで、文章に含まれる言い回しが文字通りか比喩表現かを判断することができたとファとリュウが1月29日に報告している。

コンピューターが文字通りでない言葉を解する能力は、AIが私たちの生活面により直接関わるようになるにつれて重要性を増していると、上の2つの研究には無関係で、インディアナ州ウェストラファイエットにあるパデュー大学で自然言語処理を研究するジュリア・レイズが話している。「暗喩」や「皮肉」に関わる似たような問題を追跡している研究者たちもいる。

「AIが少なくとも単純な会話については良くできるようになり、更に人間の会話に近づいています。私たちは今ちょうど『不気味の谷』に入りかけたところです」と、上の研究には関わっていないスイス連邦工科大学ローザンヌ校のコンピューター科学者ロバート・ウェストが語っている。しかし、言語上の微妙なニュアンスを理解することは重大なことだ。もしAIがそれを理解できないままなら、「私たちは、どんな会話が交わされる中でも生き残ることができる知的な機械を永遠に持つことはできないでしょう」

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