2019年9月18日水曜日

迷信いろいろ


なぜ人は信じられないものを信じてしまうのか。


The Conversation
Neil Dagnall
Ken Drinkwater
July 2, 2018

数字の13、黒猫、鏡を壊すこと、梯子の下を潜ること、こうしたものをなんとなく避けようとしていないだろうか。調査によるとアメリカ人の25%が、自分がこうした迷信(superstition)を信じていると考えているという。

自分が取り立てて迷信を信じるタイプの人間ではないと考えていたとしても、誰かがくしゃみをした時には悪魔に魂が抜き取られないように「bless you」と声を掛けることはあるだろう。私たちの祖先はくしゃみをする時にはそういうことが起こると考えたのだ。

迷信は建築物にも影響を与えていて、多くのビルに13階が存在しない理由になっている。そのかわりにエレベーターの表示には「14」「14A」「12B」「M(アルファベットの13番目)」が用いられたりする。これは迷信を気にする入居者たちに気を使ったものだ。実際、調査によれば13%の人がホテルで13階に滞在することに問題を感じていて、9%の人が別の部屋に変更を願い出るという。

更に、エール・フランスとルフトハンザ航空などには座席に13列目が存在しない。ルフトハンザでは17列目も存在しない。これは、イタリアやブラジルのような国では13ではなく17の方が不運をもたらす数字だと考えられているためだ。


迷信(superstition)とは何か?


「迷信」について一つの定まった定義は存在しないが、一般的には超自然的な力を信じることを意味している。例えば「運命」のように、予測不可能な要因に影響を与えたいという願望や、不確実性を解決する必要性に基づいている。この意味で、個々の信念と経験が迷信を喚起している。それ故に迷信を信じる人は一般的に非合理的であり、現代の科学的な知恵を無視することも多い。

迷信が果たす役割を研究している心理学者たちは、無関係なイベント同士が結びついているという仮定から迷信が引き出されていることを明らかにしている。例えば、「お守り」が幸運を引き寄せる、または不運から守ってくれるというようなことだ。

多くの人にとって迷信に従った行動をとることは、統制された感覚を生み、不安を軽減させる。これがストレスや不安を感じた時に迷信が多く語られる要因である。この傾向は特に経済危機や社会不安が広がった時に顕著に見られ、戦争や紛争のときにも当てはまる。研究者たちは実際に1918年から1940年のドイツに於いて、経済危機の段階が迷信の使われ方の段階にどう関係しているかを直接観察したのだった。


タッチ・ウッド(Touch wood)


迷信を信じることは精神的にポジティブになることを助ける効果がある。ただ、健全な意思決定というよりも幸運や運命を信じるような、非合理な決断を引き起こすこともある。

お守りを持ち歩こと、特定の衣類を着用すること、幸運に関係する場所を訪れること、特定の色を好むこと、特別な数字を用いること、こうしたもの全てが迷信の要素になっている。こうした行動は些細なものに見えるかもしれないが、一部の人にとってはしばしば現実の世界での選択に影響を与えている。

同様に、迷信は物や場所が呪われているという考えを引き起こすこともある。映画「アナベル死霊博物館」に登場する人形アナベルには死んだ少女の魂が宿っていると言われている。もっと古典的な例はファラオの呪いと呼ばれるものだ。古代エジプトの人々のミイラ、特にファラオのものを侵す人は呪いがかけられると言われる。

数字それ自体も呪いと関係することがある。例えば666のナンバープレートは多くの場合不運な逸話に登場する。最も有名な例は「AEK 666Y」というナンバープレートで、このナンバーの車は乗る人に謎の車両火災と「悪い雰囲気」をもたらすとされる。


スポーツにおける「迷信」


迷信はスポーツ界でも広く行われていて、特別に高い競技レベルの世界でも同様だ。プロアスリートの5人中4人が競技に先立って、少なくとも1つの迷信的な行動を取っているという調査結果がある。スポーツ界に於いては、迷信は緊張を鎮めて予測不可能な偶然の要因を制御できる感覚を提供するものとして使われていることが示されている。

スポーツ界での迷信は競技によって異なる傾向があるが、共通したものもある。例えば、フットボール、体操競技、陸上競技の選手たちは、競技の前に成功を祈って鏡の前に立って姿を確認し、身だしなみを確認することで良い感覚の準備ができる人が多いと報告されている。選手たちはかなり個人的なものや行動に拘ることもある。幸運の衣服、道具、お守りなどである。

有名選手たちにも迷信的な行動を見せる人は多い。バスケットボールのレジェンド、マイケル・ジョーダンは彼にとって幸運の品だったノースカロライナ大学のショーツをシカゴ・ブルズのユニフォームの下に隠していた。同様にテニスのレジェンド、ビヨルン・ボルグもウインブルドンの準備の時には同じブランドのシャツを着ていたと言われる。

同じくテニスのラファエル・ナダルには試合の度に行う一連の儀式がある。この中には、水のボトルを起く方法、冷たいシャワーを浴びる方法というようなものも含まれている。ナダルはこの一連の儀式が彼の集中力を助け、良い試合ができると信じている。


梯子の下を歩く


これらのことからわかることは、迷信に従った行動は安心感を与え不安を軽減するのに役立つことがあるということだ。しかし、これは事実だとしても、こうした迷信に基づいた行動は自己強化になることがあり、行動が習慣に発展して決まった儀式が実行できないと結果としてむしろ不安に陥る場合があることが研究により示されている

出来事や状況の結果が、未知の超自然的な力ではなく既知の要因に依存している場合も同様だ。このことは、よく使われる格言と一致している「一生懸命努力すればするほど、運は味方する」というものだ。

結局は、鏡を壊してしまった、黒猫を見た、13番を引いた、等が起きてしまった時に「不運」について必要以上に気にすることはないだろう。こうしたものは殆どが心理的なまやかしに過ぎないのだ。

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