Legal experts and advocates say evidence from an at-home rape kit wouldn't be admissible in court.https://t.co/12uTGBfxu0— VICE Health (@dailytonic) September 5, 2019
法律の専門家や弁護士は、自宅用のレイプ検査キットの検査結果は法廷で証拠として採用されないだろうと語る。
VICE
Marie Solis
Sep 6 2019
新しい「DIYレイプ検査キット」について法律の専門家たちは、この新製品によって性的暴行の被害者たちが法廷で認められない証拠を収集することが奨励されてしまうことを懸念している。
有名な運動にちなんで「MeToo Kit」と名付けられたこの製品は性的暴行の被害者たちが、これまでのように病院や診療所ではなく「自分の選んだ場所とタイミングで証拠を収集する」ことによって彼らの経験についての「統制権を取り戻す」ものであると宣伝されている。ニューヨークのスタートアップ企業によって開発されたこのキットの正式な発売日は明らかにされていないが、現在の所このキットの標準的なものには綿棒、唾液サンプルの容器、及び採取したものを保管するための密封可能なビニール袋が含まれているという。またこのキットには被害者にこのプロセスについてガイドするためのアプリケーションへのアクセスが可能になるサービスも付属している。価格は明らかにされていない。
外箱には「Swab. Spit. Seal. (綿棒、唾液、密封)」と書かれているのが確認できる。
だが、専門家はレイプの検査というのは「Swab. Spit. Seal.」でできるような簡単なものではないと指摘している。性的暴行を受けた人が病院でレイプ検査を受診する場合、この検査についての特別な訓練を積んだ免許を持つ医療専門家によって行われる。この検査を行う専門家は受診者が望まない限りは検査資料を安全な場所に保管しておく必要があり、受診者が許可した時点で当局は証拠として記録し、規則に従って保管する。
被害者の中にはこの検査をトラウマをぶり返させるものと感じる人がいて、そのことが「MeToo Kit」の開発者が自宅でできるものを作ろうと思った理由の1つになっている。だが、病院で被害者がレイプ検査を受けた場合に起こる複雑なプロセス(「管理の鎖」として知られる)にどの時点でも瑕疵があると、被害者がその検査結果を法廷で証拠として利用する妨げになってしまう可能性がある。この事実が「自宅用のレイプ検査キット」というアイディアの問題になっている。
「証拠に接触する機会それぞれは、その証拠が採用されるかどうかについて重要なことです」と、元検察官で構成される非営利組織AEquitasの顧問弁護士であるパトリシア・パワーズが話している。パワーズは検察官としてワシントン州で27年間、主に性的暴行事件を担当してきた。彼女は性的暴行の被害者が、自分でレイプ検査キットを管理しようとすれば、刑事事件としての裁判を難しくするだけでなく、健康にも悪影響を与える可能性があると述べている。
レイプ検査というのは、体液の収集だけのことではない。文字通り「頭から爪先まで」広範囲に検査することも含まれる。痣や傷を撮影したり、性感染症の検査や、緊急避妊薬の投与、及び被害者が事件の処理に必要になる機関への連絡等も含まれている。
「被害者の方がこうした専門家の支援や指導なしに検査を行おうとすれば、証拠としての採用可能性に影響を与えるという問題が起こるだけでなく、被害者が自身の健康について必要な支援を受けられなくなるということでもあるのです」とパワーズは言う。
このキットについて法律的に懸念を抱いているのはパワーズだけではない。ミシガン州の司法長官ダナ・ネッセルは、このキットの開発者である起業家のマディソン・キャンベルに対して公に注意喚起を行っている。
この文書の中でネッセルはキャンベルのMeToo Kitビジネスを「非合法」なものであるとして、巡回裁判所に召喚状の発行を依頼して、同社を調査することを求めている。
「この会社は、自分で行う性的暴行検査キットが法廷で役立つと誤解させている」とネッセルは同時に出されたプレスリリースで述べている。「真実から離れることがあってはならないのです。検察官はこの方法で採取された証拠は、証拠として不可欠な管理の鎖から外れていることをわかっています」
そして、ニューヨークのマンハッタン地方検事局の主任検事であるカレン・フリードマン・アグニフィロはニューヨーク・ポストによるインタビューで「この製品で採取された資料は法廷では証拠として採用されない」ことを確認している。
開発者であるキャンベル自身も性的暴行の被害者である。彼女は、この製品はまだ開発途中の段階であり、改善の余地はあると述べている。彼女は「できる限り良いものを作り出すために」アメリカ全土の司法長官に連絡をとって(ミシガン州とニューヨーク州からということになるだろう)、この製品で採取した資料を法廷で証拠として受け入れられるものにする方法を見つけだそうとしている。(キャンベルは金曜日にネッセルに対する返信の文書を公開し、その中で「深く落胆している」と述べ、「性的暴行の被害者に対するミシガン州の貧弱な保護支援の記録を鑑みれば、ミシガン州司法長官はこの危機に対応するための革新的な方法に対してよりオープンであって欲しいと思います」と付け加えている)
「自宅での法医学的検査というのは前例がないものですし、私たちは確実に証拠として認められるものを作るために着実な手順を踏みたいと考えています」とキャンベルはVICEに話してくれた。「開発で重要な点は、キットのハードウェアとソフトウェアが法的な基準を満たしていることを確認することです。私たちは発売前にそれを確認したいと考えています」
この製品に対する批判は法律的に疑わしいということに留まらない。性的暴行の被害者を支援する人たちは、キャンベルが大学と提携して入学した全ての学生にMeToo Kitを提供する計画を持っていることについても懸念している。これまでのところ、5つの学校がこの製品をテストすることに同意しているという。
「新入生のオリエンテーションの時にこのキットが配られれば、仮に被害者になった場合に自宅で証拠を採取できるプライバシーと気楽さを得ることができるだけでなく、大学構内に心理的に抑止力が働くと考えています」とキャンベルは説明している。「おそらく、誰もがこのキットを持っていることを全員が知っていれば、大学内のパーティーでの野蛮な習慣に変化があるでしょう」
学校での性暴力の問題に取り組む団体Know Your IXを主催するセージ・カーソンはそうは考えていない。「レイプ検査キットが誰かの暴力を思いとどまらせることに繋がるという研究結果は何処にもありません」と彼女は言う。「被害者は病院に行けばレイプ検査ができるわけですが、そのことが強姦犯の犯罪抑止にはなっていません」
カーソンもまた性的暴行の被害者である、彼女は、キャンベルの製品は名前にも問題があると考えていて、性的暴行の被害者や #MeToo 運動を金銭的利益のために利用しようとしていると非難している。
ミシガン州司法長官ネッセルは、キャンベルは「厚かましくもMeToo運動を利用しようとしている」と述べている。カーソンはこの商品名を「狡猾」であるとして、キャンベルが性的暴行の被害者たちに力を与える運動の名前を取って「利益を得る方に導こうとしている」ことは残念だと述べている。(キャンベルはVICEに対して、製品の名前を変更することは吝かでないと話している)
カーソンはMeToo Kitを他のベンチャー企業が開発した性的暴行を防ぐ、または被害者を救済するために設計された製品に準えている。複数の企業がパニックボタンやアラームを内蔵して、警察や緊急連絡先に危険を知らせることができる「スマートジュエリー」を開発している。2014年、ノースカロライナ州立大学の学生は、飲み物に仕込まれたレイプ・ドラッグを検出できるマニキュアを開発し、この製品の試作品が2018年に34.99ドルで発売されている。
カーソンは、性的暴行の被害者たちはこうした仕掛けを求めているのではないと主張している。彼女たちが求めている正義は、性的暴行を容認する社会制度や風習などの完全な見直しであり、単一の製品で成し遂げられるものではないと言う。
彼女は、病院に対し性的暴行の被害者に寄り添って刑事民事の司法プロセスを手助けしてくれるような支援者を紹介することを義務付けるよう州に働きかけることのような、より実質的な変化を求めることに集中することを提案している。
「私たちは被害者の人たちが本当に必要としていて求めている変化を見極めなければなりません」とカーソンは言う。「私は被害者の方たちと6年間働いてきましたが、彼女たちから自宅用のレイプ検査キットが欲しいという要望を聞いたことはありません」
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