2013年4月4日木曜日

競馬:ブライアンズタイムに感謝

ブライアンズタイムが亡くなった。28歳というのは馬の平均寿命からすると相当に高齢で死去した。当日まで種付けしていたというので悔いるようなものではないだろう。個人的に競馬を見てきた上で最も大事な存在の馬だったが、そろそろこういう日が来るだろうと覚悟はしていた。今日まで生きていた事のほうが凄いことなのだ。

ブライアンズタイム



個人的に競馬に興味をもつようになったのはナリタブライアンの活躍による。ブライアンズタイムはそのナリタブライアンの父。ナリタブライアンの活躍の最大のハイライト(だと個人的には思う)あの阪神大賞典で名勝負を演じたマヤノトップガンもブライアンズタイムの仔。あのレース自体がブライアンズタイムによって演出されたもので、ブライアンズタイムの種牡馬としての絶頂期を象徴するものだったと思う。

このレースの実況は確認できるかぎり3種類あるのだが、この実況が一番気に入っている。マヤノトップガンが上がっていって、ナリタブライアンも連れて上がって行く時のどよめきが素晴らしい。

ブライアンズタイムは既に20年以上種牡馬として共用されているわけで、何頭かそれなりの成績を残している後継種牡馬がいる。ナリタブライアンは早逝したが、マヤノトップガン、タニノギムレット、タイムパラドックス等、そして、今年からフリオーソも種牡馬になった。

競馬を長く見ているとレースで走るのを見ていた馬がいつか引退して種牡馬となり、繁殖牝馬となり、その子供が出てきてまたそのレースを見ることができる。それが競馬の楽しみ方であり、レースでの活躍を目の当たりにしたという意味ではブライアンズタイムそのものよりもマヤノトップガンやタニノギムレットの子供に思い入れがあっても良さそうなものだが、個人的に僕はどういうわけかそういうこともなく、ブライアンズタイムの直仔に今に至っても期待を続けている。



ブライアンズタイムの日本での種牡馬としての馬生はスタート直後のナリタブライアンの活躍こそ鮮烈だったものの、産駒は活躍馬でもどこか不器用だったり不細工だったりする馬が多い種牡馬だった。

1年遅れて種牡馬としてデビューしたサンデーサイレンスの大攻勢が始まり、90年代でもブライアンズタイムはそのライバルという地位を確保するのにやっと。そして種牡馬としてのブライアンズタイムを支えていた早田牧場の倒産、関係者の業務上横領による逮捕、実刑判決。それもサンデーサイレンスを擁する社台グループに置いていかれないためにと設備投資を焦ったことが原因と言われる。

後ろ盾を失ったブライアンズタイムはそれでも種牡馬としてそれなりの成績は残していたものの、更に高速化する日本の競馬場の芝についていけず、サンデーサイレンスと多くのその後継種牡馬達を抱える社台グループに対向する種牡馬ではなくなっていった。

近年はダートに活躍馬の多い種牡馬として何頭かの活躍馬を定期的に出し、時々何故か芝の重賞を勝つ馬を出すという種牡馬になっていた。

上にも書いた通りブライアンズタイムにも後継種牡馬はいることはいるがブライアンズタイムよりも活躍はできていない。またブルードメアサイアー(母の父)としても期待ほどの活躍はできていない。個人的には日本の競馬界で大きな勢力であるサンデーサイレンスとの血統的な相性の悪さに原因があると思うのだが、ブライアンズタイムが死亡したことによって、この血を残していくには後継馬達に期待せざるをえない状況になった。




ブライアンズタイムが勝った1988年のフロリダダービー。先に抜けだしたフォーティナイナーを直線で捉える。ほぼ最後方からというレース振りは意外だったが、3角から長く良い脚を使って勝ち切るのは産駒のそれとよく似ていると思う。

ブライアンズタイムはサンシャインフォーエヴァーという馬の「代わりに輸入された」という有名な逸話がある。ブライアンズタイムはサンシャインフォーエヴァーとほぼ同じ血統で、芝に実績があったのがサンシャインフォーエヴァーの方だったが、結果的にサンシャインフォーエヴァーは種牡馬として成功しなかった。

この2頭と同期(1985生、つくづくこの年はRoberto産駒の当たり年だったのだろう)に更にもう一頭血統的によく似ているアメリカの大種牡馬にダイナフォーマーというのがいる。ダイナフォーマーは昨年種牡馬として引退した直後4月29日に死亡するまでアメリカのトップサイヤーであった。このダイナフォーマーも直仔の活躍には恵まれているものの、最大の期待馬 Barbaro の不慮の死もあって「後継種牡馬」という意味では恵まれていない。

最近になってやっとアメリカの芝で活躍を続ける Point Of Entry という馬が登場し、ようやく後継種牡馬候補が死去してから出てきたという状況である。

ブライアンズタイムは手元で確認できるかぎり、今年2歳の産駒が62頭、来年、再来年も同程度と推測して、その次の年、今年種付けした産駒が何頭生まれるかわからないが、4年間でまだ100頭以上デビューできるのではないか。

種牡馬が亡くなって活躍馬が出るのは競馬界の常でもある。「最後の大物」の登場を期待しつつ、多くの楽しみを僕に与えてくれたブライアンズタイムに最大限に感謝をしたい。

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