2013年3月29日金曜日

「チムニーズ館の秘密」

気に入っているアガサ・クリスティの小説に「The Secret of Chimneys(邦題:チムニーズ館の秘密)」というのがある。


この話は当然殺人事件の話ではあるものの、ある種少女漫画的な夢のある話でもあり、明るい印象が残る話である。余談だがこの話の続編にあたるのが「The Seven Dials Mystery」で、同じ舞台と世界観で4年後の話が書かれている。


個人的に特にこの「チムニーズ館の秘密」が気に入っているのは登場する主人公の1人であるヴァージニア・レベル夫人が凄い美人だから。アガサ・クリスティの小説は殆どの場合美女が登場するのだが、このレベル夫人の紹介の描写がいつにもまして凄い。

以下、手元にあった訳本から引用…

ヴァージニア・レベルはちょうど27歳。高くすらりと伸びた優美な体は素晴らしく均整がとれていて−その美しい曲線だけでも一遍の詩になりそうだった。髪は金色に淡い緑を溶かしたほんもののブロンズ。きりっとひきしまった小さなあご。きれいな鼻、半ば閉じられた瞼の間からヤグルマギクの花の光がきらめく、やや目尻のあがった青い目。一方の端がほんの少し傾いて、いわゆる”ヴィーナス・サイン”の形をしている、たとえようもなく優美な口。それはすばらしく表情に富んだ顔で、常に人の目を惹く放射性の活力のようなものを発散していた。…

もはや想像するのも難しいくらいの描写で、言葉の意味はわからないがとにかく凄い美人だ、ということは伝わってくる。この人は話の中で賢く、優しく、勇敢で、ついでに俊足であるという描写まで出てくる。





最近この「チムニーズ館の秘密」が2010年にドラマ化されていることを知った。NHKBSでも放送されたらしい。当然個人的に興味があるのはこのレベル夫人をどんな人が演じているかということ。



左から2番めがレベル夫人…


素晴らしい。

このドラマでヴァージニア・レベル夫人を演じているのはシャーロット・ソルト( Charlotte Salt )さんというイギリスの女優さん。



上で引用した小説の描写から、漠然と想像したイギリスの知的な美女を形にしたらこんな感じかもしれないと個人的には大変納得した。

しかし、このドラマは「ミス・マープル」シリーズの1つとしての映像化で、原作ではミス・マープルは登場しないので原作と題名は同じだが内容的には大きく(全く)異なった話になっている。このレベル夫人自体の役どころも名前はそのままだがかなり原作とは違っている。ただ、おそらく私と同じように原作のヴァージニア・レベル夫人のファンは少なからずいると思われるため、同じ名前である以上はかなり気を使った配役だったはず。

これだけ嵌った女優さんがいたならば、もう少し原作に忠実に映像化してくれればよかったと少々残念に思うのだが、それはそれでまた違った感想を持つことになったに違いない。

因みに「The Seven Dials Mystery」の方は1981年にドラマ化されている。こちらはかなり原作に忠実な作りで楽しいが、むしろこれを見ると原作を読んだ時の印象が上書きされてしまうくらいで、小説の映像化の原作への忠実性には良し悪しがあるものだとも思う。

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